表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創造神の遊戯  作者: 面白味
創造神初めての冒険
30/54

28話 鋼の翼


 空とエドガーが群がる石喰らいたちを切り伏せる中、カイルは一際巨大な“主”と相対していた。

 岩盤をも砕くような振動が地を這い、洞窟の壁がきしむ。

 主は体長十メートルを優に超え、全身を覆う岩の装甲が鈍く光る。眼は紅く輝き、口の奥からはドロリとした酸が滴っていた。


「……やれやれ、まさかお前のような奴がいたとはな。その姿、ドラゴンみたいじゃねぇか。」


 カイルは剣を深く握り、大きく息を吸い込む。

 その瞬間、全身から鋼色の魔力が立ち上がった。

 魔力が肉体と一体化し、背中にはまるで翼のような光の残滓――"戦気解放《鋼の翼》"が形を成す。

 それは実体ではなく、純粋な魔力の形。

 しかし、その圧は“生き物”のように鼓動していた。剣を握る腕の筋肉が盛り上がり、鋼のような光沢が走る。周囲の空気が重くなり、石喰らいの主が警戒の咆哮を上げた。



「ようやく俺も本気を出せそうな相手を見つけられたぜ!お前は子分たちとは違ってくれよ。」


 地を蹴る。


 カイルの姿が空気を裂き、視界から一瞬で消える。

 次の瞬間、主の左側面が大きく抉れた。だが主は咆哮を上げ、尻尾を振り抜く。

 その一撃は空気を圧縮し、重い衝撃波として襲い掛かる。


「ぬぅッ——!」


 カイルは剣で受け流しながら滑るように後退する。

 尻尾の重さが腕に伝わり、骨が軋んだ。だが、その目は燃えるように鋭く輝いていた。


「面白ぇ……! 久々に血が沸いてきたぜ!」


 主は口を開き、ねっとりとした酸を吐き出す。

 岩肌を焼き、煙が上がる。

 カイルは跳び退き、剣を大きく振り抜くと、そこから"鋼の魔力"が波となってくうを裂く。

 鋼の刃が飛び、酸の弾幕とぶつかり合い、爆ぜた。

 金属と液体がぶつかり合う異様な音が、洞窟に反響する。


「くそっ、飛ばした斬撃が溶けるとはな……酸の濃度が尋常じゃねぇ!」


 カイルは歯を食いしばり、さらに魔力を高めた。

 鋼色の光が全身に纏わりつき、足元の岩を砕く。

 主もまた、地面を叩きつけ、咆哮と共に突進を開始する。


 轟音。


 光と闇が交錯するような瞬間、剣と装甲がぶつかり、火花が散った。

 衝撃で洞窟の天井から石が降り注ぐ。

 カイルはその中で、主の一撃を紙一重で避け、鋭いカウンターを叩き込んだ。

 鋼の剣が主の腹部をかすめ、岩片が飛び散る。


「どうした! もっと来いよ!」


 主の尻尾がうなりを上げる。

 カイルはそれを見切り、地を滑るように横へと転がる。

 次の瞬間、主が前傾姿勢で突進してきた。


「上等ッ!」


 カイルが叫び、剣にさらなる魔力を注ぐ。

 刃先が白熱し、周囲の石壁が震えるほどの衝撃が生まれる。

 鋼の光が爆ぜ、主の突撃と正面衝突。

 金属音が雷鳴のように響き、鉱山全体が軋んだ。


 衝撃でカイルは数歩後退したが、その力が落ちることはなかった。

 主の尾が再び襲いかかる。

 カイルは地面を蹴って宙に跳び上がる。

 背の翼が広がり、上昇。

 空中から見下ろし、両手で剣を構えた。


「——崩岩裂斬!」


 鋼の翼が広がり、魔力の奔流が剣先へと集中する。

 一閃。

 光の帯が走り、主の装甲が一部ごと砕け散った。

 主は苦悶の咆哮を上げ、酸を再び吐き出すが、カイルは剣を回転させてそれを弾き飛ばす。


 だが主も負けていない。

 全身の装甲を震わせ、鋭い岩の棘を無数に生やした。

 それを射出するように振り払うと、岩の矢が雨のようにカイルに襲い掛かる。


「チッ、遠距離まで使えるとはな。さすが主といったところか!」


 カイルは跳躍して避けるが、いくつかの岩が鎧を掠め、金属音が鳴り響く。

 落下と同時に再び戦気を放ち、剣を水平に構える。


「お前の装甲、もう限界だ。終わりにしてやる!」


 鋼の翼が煌めく。

 地を蹴る一瞬、風が爆ぜ、カイルの姿が閃光のように主の懐へと入り込む。

 連撃。

 斬撃が重なり、閃光が幾筋も走る。

 主の咆哮が響き、岩が割れ、地面が震えた。


 ——その壮絶な戦いを、少し離れた場所で見ていたラグンは、息を呑んでいた。


「す……すごい……これが……Aランク冒険者……」


 彼の声は震えていた。

 自分とは次元が違う――心の底からそう思った。

 だが、胸の奥に渦巻くのは恐怖でも憧れでもない。

 罪悪感だった。


 ――家族を……守るため。


(俺は……違う。俺は、“任務”を果たさなきゃいけないんだ……)


 ラグンはそっと懐に手を入れる。

 そこには、一枚の黒い札と小さな刃物。

 札には《赤犬》の紋章が刻まれていた。


(あの人に言われたんだ……“鉱山の最奥にあるもの”を起こせ、と。

 そして邪魔をする者がいたら——殺せって。)


 震える指先がナイフを握りしめる。

 刃が微かに光を反射した。

 額には冷や汗がにじみ、呼吸が荒くなる。


「くそっ……俺だって……こんなこと……!」


 カイルの咆哮が響く。

「立ってろよ、まだ終わっちゃいねぇ!」

 主がそれに応じ、再び尾を振り上げた。

 岩盤が震え、空気が爆発するような振動。

 その中で、ラグンの決意が静かに固まっていく。


 ラグンはその光景の中で、ゆっくりと決意の表情を浮かべた。


「……今しか、ない……!」


 心の中で誰かに謝りながら、ラグンはナイフを強く握りしめる。

 その視線の先には、魔法で周囲の石喰らいを牽制しながら、自分を守るように立っている――エドガーの背中があった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ