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創造神の遊戯  作者: 面白味
創造神初めての冒険
3/54

2話 圧倒的

森は静かだった。

だが、その静けさは安らぎではなく、重苦しい恐怖に満ちている。


「……ここが、この世界で最も古き森か」


空は歩を進めながら、ふと微笑んだ。

木々は天を覆うほどにそびえ立ち、根は地を割り、大気は濃厚な魔力に満ちている。

鳥のさえずりはなく、虫の羽音すらしない。

ただ重苦しい沈黙だけが、彼を包んでいた。


この森は「最古の樹海」と呼ばれている。

人々は決して近づかない。

いや、近づけないのだ。

そこに棲む存在は、どれも街を滅ぼしうる脅威。

人の軍勢をもってしても太刀打ちできない怪物たちが、ここには息づいている。


──だからこそ、空はここを選んだ。


「やはり……心地良い」


退屈を破るにふさわしい場所。

世界が忌避する恐怖の森。

そのただ中を、彼は悠然と歩いていた。


* * *


やがて、森の空気が揺らいだ。


「……来るな」


空は足を止めた。

森を切り裂くような重い気配が、彼の前に立ち塞がる。

木々をなぎ倒し、土を踏み砕き、姿を現したのは──巨大な熊だった。


体高は数十メートルを超える。

その毛並みは黒曜石のように硬質で、目は血のように赤く輝いていた。

口を開けば牙が閃き、吐息だけで大気が震える。

存在そのものが「災厄」だ。


普通の人間であれば、視認した瞬間に心臓が止まっていただろう。


だが──空は、楽しげに微笑んだ。


「ほう……俺に牙を剥くか。これは久方ぶりだ」


彼はゆっくりと右手を掲げる。

その掌に淡い光が灯り、視線が熊を貫いた。


──鑑定。


目の前に、空の視界にだけ数値が浮かび上がる。



---


《鑑定結果》


名 称:魔獣グラディア・ベア

種 族:古代魔獣(熊型)

危険度:S級(単独で大都市を壊滅可能)


体力:85,000

魔力:72,300

攻撃力:110,000

防御力:99,000

敏捷:35,000


特殊能力:


《咆哮》:周囲数キロの生命に恐怖を与える。


《剛撃》:一撃で山を砕く腕力。


《魔獣の皮膚》:通常の武器では傷を負わせること不可能。



備考:最古の樹海にて数千年を生き抜いた魔獣の王。



---


空は愉快そうに頷いた。


「……なるほど。この世界の『強者』か。確かに、一都市を滅ぼすには十分だな」


熊は咆哮をあげた。

その声は森を震わせ、周囲の木々を倒し、鳥も虫もいないはずの森をさらに沈黙させる。


だが、空は涼しい顔で受け止めた。

恐怖は存在しない。

むしろ、心の奥に久方ぶりの昂揚が芽生えていた。


「いいだろう。少し……遊んでやる」


彼は一歩、前に出た。

熊が腕を振り下ろす。

その一撃は大地を砕き、衝撃波が森を吹き飛ばす。

普通の人間なら跡形もなく消える威力。


だが──空の身体は微動だにしなかった。

彼の目の前で、巨大な爪が寸前で止まっていた。


「……遅い」


彼は指先で軽く熊の爪に触れた。

その瞬間、爪は「存在」ごと消え失せた。

斬り落とされたのではない。

焼き切られたのでもない。

ただ、「なかったこと」にされた。


熊は咆哮を上げ、痛みに身をよじる。


空は笑う。


「面白い。まだやるか?」


熊は怒りに狂い、さらに襲いかかる。

だが空にとって、それは退屈を紛らわせるための舞踏に過ぎなかった。




やがて、空は足を止める。

「さて……そろそろいいか」


彼は手を軽く振った。

ただ、それだけ。


次の瞬間──熊は、消えていた。


跡形もなく、影も残さず。

まるで初めから存在しなかったかのように。


森に再び静寂が戻る。

だが、そこには「世界が震えている」気配が確かにあった。


空は深く息を吐き、笑みを浮かべた。


「……悪くない。この世界、存分に楽しませてくれそうだ」


彼の足音だけが、森に響いていた。

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