27話 第三層の姿
投稿スピード遅れてすいません
最近新しいゲームを買っちゃってそっちにハマってしまいました。
乾いた地響きが、地下深くに反響していた。
第二層に足を踏み入れてから、すでに一時間が経とうとしている。
坑道の空気はさらに冷え、岩壁にこびりついた鉄粉が鈍く光る。
そのたびに、空の金の瞳がわずかに揺らめいた。
「……また来ます!」
ラグンの叫びと同時に、通路の奥から土煙が巻き上がった。
地面がわずかに隆起し、次の瞬間には三体の《石喰らい》が飛び出してくる。
「任せろ!」
カイルが先頭に出る。剣を抜いた瞬間、全身から鋼色の魔力が立ち昇る。
「破岩斬」
彼の体を覆うように、銀色の光が纏い、鎧のように硬質化していく。
「はあぁぁぁぁぁ!」
一振り。
鋼の魔力をまとう刃が唸り、前方の《石喰らい》を頭から胴まで斬り裂いた。
しかし、すぐに二体目、三体目が地中から飛び出し、鋭い牙で襲いかかる。
「雷禅」
エドガーの剣杖から、稲妻が放たれる。
弾丸のような雷光が走り、一匹の石喰らいが頭部から貫かれ爆ぜた。
焼け焦げた匂いが坑道に広がり、ラグンが思わず息を呑む。
「すごい……!」
「……攻撃の方もすごいんだな、エドガー!」
ラグンは驚き、カイルが笑いながら次の敵を斬る。
一方、空はというと――すでに数匹の石喰らいを仕留めていた。
低く構えた瞬間、刃が閃く。
一撃、二撃――調整された力で剣を振るうたび正確無比な斬撃が岩をも切り裂き、土煙ごと敵を消し飛ばしていく。
その所作はまるで舞うようで、無駄が一つもない。
「……数が増えてるな。」
「ええ、先に進むほど多くなります。」
ラグンが答えながらも、声にわずかな震えが混じる。
その様子を横目に、空は微かに眉をひそめた。
(怯えている……だけじゃないな。何か、隠している?)
だが今は問う時ではない。
いざとなれば心の中を読めばいい。
道を塞ぐように、さらに五体の石喰らいが群がってくる。
戦闘が続く。
カイルと空、そして援護するエドガーの連携は見事だった。
ラグンは背後を守られながら、懸命に松明を掲げて進路を照らす。
やがて、通路の奥に微かな風の流れを感じた。
土の匂いの中に、冷たい鉄と魔力の混じる独特の気配――。
「……もうすぐ、第三層です。」
ラグンが振り返り、汗を拭いながら告げた。
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やがて、重い金属音が前方から響く。
一行の足が止まった。
「ここが、第三層の扉です。」
ラグンが息を整えながら言う。
分厚い鉄扉には無数の爪痕が刻まれていた。
岩粉が舞い、金属の焦げた匂いが立ち込めている。
「この先が……《魔鉄鋼》が採れる採掘場です。」
その声はわずかに震えていた。
「なるほどな。」
カイルが剣を軽く振り、汚れを払う。
「気を引き締めろ。ここからが本番だ。」
空とエドガーが静かに頷く。
カイルが扉を押すと、
軋む音と共に、冷たい風が流れ込んできた。
広大な空間。
天井の高さは三十メートル以上。
地面には砕けた鉱石の輝きが散りばめられ、
壁面には鉱脈が縦横に走り、青白く光っている。
「ここが……」
カイルが感嘆の声を漏らす。
「はい。この先が魔鉄鋼の採掘場です。ですが――」
ラグンが言葉を詰まらせた。
彼の視線の先。
そこに、それはいた。
「……でかいな。」
カイルの声が低くなる。
広場の中央に鎮座する、巨大な影。
岩の殻に覆われた胴体は建物ほどの大きさで、赤黒い光が体の隙間から漏れていた。
通常の《石喰らい》よりも明らかに異質な存在――《石喰らいの主》。
その周囲には、無数の石喰らいが蠢き、主の咆哮とともに地面を震わせている。
「……これは、少し予想外だな。」
カイルが目を細める。
「まさかここまで繁殖してるとは。」
空は一歩前へ出て、静かに剣を構えた。
「ま、倒せばわかる。」
エドガーは無言で剣杖を構え、ラグンの前に立つ。
彼の魔力が剣杖を通して淡く光り、陣が展開される。
主が彼らを視認した瞬間、耳を裂くような咆哮が響いた。
地面が裂け、無数の石喰らいが一斉に飛び出す。
「全員、構えろ!」
カイルが叫び、鋼気を再び全開にする。
「――あのデカいのは、俺がやる!」
カイルが踏み込み、鋼の魔力を爆ぜさせながら突進する。
「――戦気解放 鋼刃!」
金属光のような輝きが走り、地面が砕ける。
そのまま巨体の顎を受け止め、斬撃で押し返した。
空も瞬時に動く。
「了解。じゃあ小さいのは俺が片づける。エドガー、ラグンを守りながら援護を頼む。」
その言葉と同時に、空の姿が霧のように掻き消える。
次に見えた時には、すでに三体の石喰らいが斬り伏せられていた。
その動きは音すら残さない。
カイルの剣が主の巨体とぶつかり、火花が散る。
鋼の魔力と岩の殻が激しくぶつかり合い、金属の悲鳴が坑道に響く。
ラグンはその光景を呆然と見つめながら、唇を噛んだ。
――自分が、彼らに本当のことを言えなかったことが、胸に刺さる。
(……ごめんなさい、皆さん……。俺は……)
彼の服装の下、隠された肌にはには、
《赤犬》の刻印が薄く刻まれていた。
誰にも気づかれぬよう、拳を強く握りしめる。
その胸の奥で、彼の罪悪感がゆっくりと膨れ上がっていく。
だが、それを口にする暇もなく、戦いはさらに激化していく。
石喰らいの主の咆哮が再び轟き、
地の底が、息を呑むような振動に包まれた――。




