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軽装歩兵アランシリーズ

軽装歩兵アラン外伝 怪人会議

作者: ideafactory

 『ナチュレ』

 1000年前に迫害された獣人族と人魚族は、人類により地下に追いやられ、彼らは地下都市と密林地帯の不法建築バラックに身を潜む生活を余儀なくされた。

 そして、時代は1919年を迎えようとしていた。

 『ナチュレ』貴族の頂点に立つタコの怪人ラムジンとその部下の『ラムジンファミリー』と呼ばれるグループは『ナチュレ』の主要幹部として呼び出される。

 『ナチュレ』貴族主義を長年守り抜いたブルムバッハの子孫であるゴリラの怪人アルスバッハ、『ナチュレ』で最も残忍な暗殺者として、フランスの政府関係者を殺害したクモの怪人ルビー、『ナチュレ』最強の武闘派として知られ、ネコ族から絶大な支持を得るネコの怪人キャル、『ナチュレ』の偉大な人魚族であったシトレの黄金の意思を受け継ぐ人魚の怪人プリア、『ナチュレ』で最も謎の多い少女とも言われたハチの怪人サンドラが園遊会『怪人会議』に出席していた。

 下部組織『リトルメイデン』からはオオカミの怪人ババ、キツネの怪人メイが出席する。

 ババは赤ずきんをかぶったオオカミの怪人で中年の女性だが、高い機械人形マシンドールの戦闘センスを誇る。

 メイはキツネの怪人で赤毛の若い少女、荒々しい男勝りな性格でババとペアを組んで人類への報復を行う。

 ラムジンは初頭の演説で上機嫌であった。

 「よく怪人会議に来てくれたな!俺たちはバカのフランスのことから機械人形を奪い返し、各地で破壊活動に成功している。このまま軍のバカどもを殲滅し、やつらの首都をもぬけの殻にしてしまえば、このバカの国を手にしたのと同然である!長きに渡り人類のバカどもは青き母なる大地を盗んできた。俺たちは星を奪い返す!人類なんてカスも同然だ!」

 ラムジンは上機嫌であった。

 フランス軍が摂取した機械人形を手に入れ、フランス軍への具体的な軍事活動を実施でき、もはや『ナチュレ』の勝利を確信していた。

 アルスバッハも上機嫌であった。

 「人類はもうじき我ら貴族の前に屈するゴリ!その暁には男爵が世界を統べることになるゴリ!恐怖、フランスの国民どもに恐怖を植え付けるゴリ!」

 一方、ルビーは退屈そうであった。

 「私は人類を早く惨殺したいですね・・・・・・。あいつらをマスタードガスで苦しめて、最期は機関銃で蜂の巣にされて泣き叫ぶところが見てみたいです!」

 サディスティックなルビーに犬猿の中のキャルは「私の取り分も残しておいてよね!クモおばさん!」とからかう。

 「いいわよ。子猫ちゃんの分も残してあげるわ・・・・・・」

 「へえ、珍しいじゃない。おばさんにしては!」

 皮肉交じりににらみ合う。

 キャルの目線はどこか元気なさそうなプリアに向けられた。

 「人魚さん、あなた死んだ魚の目をしているわよ?」

 「その・・・・・・あまり人類の皆さんをひどくいじめるの、よくないと思うんですけど・・・・・・」

 プリアは人類に興味がある純粋な少女であった。

 「何言ってるのよ!あんなやつらに同情したところで、なんともないわよ!」

 キャルは軽く非難したが、プリアは乗り気じゃなかった。

 「それにしても男爵、今後の計画が気になりますね?」

 『リトルメイデン』から派遣されたババが質問を投げかける。

 ラムジンは「まあ、各々適当に動けばいい」と返す。

 「それなら、アタシたちは楽だな!」

 男勝りな口調でメイは賛同する。

 「そういえばエドモンドってどうしたんだっけ?」

 怪人たちは静まり返った。

 エドモンドは人魚族グループのメンバーでプリアの父でもある。

 人魚族の集落『グリーンオーシャン』の長であり、ラムジンとは協力関係でありながら、消極的な協力を維持する。

 「そういえば彼がいないな?あの男は頑固だからなあ?」

 ラムジンは彼を嫌っている。

 人魚族のプライドを重んじるエドモンドとは反りが合わないようだ。

 「人魚のお嬢さん?お父さんを誘わなかったの?」

 ルビーの質問に愛娘のプリアは「お父様は・・・・・・」と回答に詰まる。

 「エドモンドは、ここには来ないでしょう」

 無言を貫いていたサンドラがプリアの代わりに回答する。

 「サンドラ、お前は彼に出会ったんだよな?」

 ラムジンの質問に「はい」と事務的に返答した。



ー『怪人会議』2日前ー


 サンドラはエドモンドの集落『エリア・グリーンオーシャン』、人魚族の集落へ向かった。

 エドモンドは四股を踏んでいる鍛錬の途中であった。

 人魚族の集落の長として威厳を保つ彼、実は隠れて日本の相撲文化が好きな人類文化のファンで日本の文化をものすごく尊敬している。

 サンドラは普段は仮面で素顔を隠しているが、エドモンドの前では仮面を外すようにしている。

 サンドラは顔を見られるのがすごく嫌で普段は仮面で素性を隠している。

 しかし彼の前で仮面を外すのは人魚族への尊敬の念を示す意味もあった。

 エドモンドが振り向く。

 「閣下」

 サンドラが彼を呼ぶと「ああ、そんなに気を使わなくてよいぞ」と気さくに返す。

 「遠からず『怪人会議』が開催されます。閣下はどうされますか?」

 エドモンドは表情をこわばらせ「関わるつもりはないぞ」と返答する。

 「あの保身のことしか考えないタコ貴族め!我が愛娘をスカウトして何をするというのだ!」

 エドモンドは愚痴をこぼした。

 「さあ拙者は相撲の練習に集中するとするかのう!」

 エドモンドが話題を変えると「閣下、お言葉ですが・・・・・・」と珍しく意見具申しようとする。

 「人類への報復か?」

 彼はすでに察していた。

 サンドラは言葉に詰まった。

 「お嬢さん、愛娘のプリアは君を愛している。父親として人魚としても忠告しておくぞ。ラムジンは保身のことしか考えていない。大海原を見ることができない盲目の長のままではいずれ人類に一掃されるだろうな」

 サンドラはエドモンドの忠告に驚いた。

 本来であれば極刑も免れない危険思想でもあった。


 ーそして怪人会議ー


 「けっ!エドモンドの頑固者が!」

 ラムジンは吐き捨てるように批判した。

 エドモンドの忠告にサンドラの口元が少し歪んでいた。

 サンドラの心は疑問でいっぱいであった。

 「大海原を見ることができない盲目の長のままではいずれ人類に一掃されるだろうな」

 彼の言葉の重みをサンドラはどう理解したらいいか苦しんだ。

 「サンドラ、気にするな!それより今日は勝利の美酒を味わおうぜ!」

 「男爵閣下、ボルドーの17年のヴィンテージはいかがでしょう?」

 「おお、いいじゃねえか!」

 ラムジン・アルスバッハら怪人たちが盛り上がる中、サンドラは無言のままうつむく。

 エドモンドの言葉の意味を、彼女は知らぬうちに葛藤した。

 「サンドラ?」

 彼の愛娘のプリアが心配そうに見つめる。

 「あ、いやなんでもない」

 プリアも見抜いていた。

 「お父様からなにか言われたのですか?」

 サンドラは「ああ」と返す。

 「『大海原を見ることができない盲目の長のままではいずれ人類に一掃されるだろうな』とラムジン男爵を・・・・・・」

 プリアはクスッと笑う。

 「何がおかしい?」

 「お父様は昔からそうですから」

 ラムジンとアルスバッハは高笑いしながらワインを嗜む中、サンドラの胸の中では何か違和感を感じていた。


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