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幸あるなつのおもひで  作者: ホタテノホ
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第28話 最後の同棲生活

 


「おはよう!朝ごはんだよ」



「おはよう…ちょっと寝過ぎたかな…」



「そうよ、昨日も2回戦が出来なかったくせに寝過ぎよ!」



「…朝っぱらからなんてことを言うんだよ」



「うふ。さぁ起きて!なつの3番目に好きなやつが出来てるよ」



 部屋に甘い匂いが漂っていた。



 これは…



「フレンチトースト!?」



「正解!早く食べちゃお!」



 幸奈ちゃんは俺が朝は甘いものを摂りがちだということをよく知ってる。



 仕事をしている時によく朝に菓子パンを食べていたからだ。



 フレンチトーストも俺好みに作る。



 1番最初と今では味が違う。



 俺の反応を見ながら、徐々に好きな甘さに変えていって、今にたどり着いた。



 幸奈ちゃんの左手を見た。



「もう、その指輪も歪んできちゃったね」



「そうね、ずっと付けっぱなしだし、仕方ないよ」



「新しいの欲しい?」



「別に要らないよ。私はこれが気に入ってるの。なつのくれた初めてのリングだしね」



「次のクリスマスか誕生日に買うよ?」



「いいの!私のお気に入りだし、それに、そこでお金使うなら、帰ってくるのに使ってくれた方が私は嬉しい」



 ドクン…



 幸奈ちゃんはこれを本気で言ってる。



 やっぱり好きだな。



「分かった!今日はちょっとドライブでもしよ」



「うん、いいけど、どこに?暑いから外は嫌よ」



「ドライブだから車の中だよ」



 俺はカラオケ店に行った。



 そこの駐車場で車を止めて、2人で店の入口まで行ってみた。



「やっぱり閉まってるんだね…」



「うん」



「安井さんや主任は?」



「安井さんは今村くんと結婚して今は今村さんだよ。主任の三浦さんは離婚して北海道に行ったらしいわ」



「じゃあ、三浦さんの旦那さんは大変ね」



「そうだね。店もなくなり、奥さんに捨てられちゃったってことだもんね」



「そうかぁ、幸奈ちゃんの好きだった佐久間さんは?」



「佐久間さんは元気よ。たまに会うと旦那の愚痴をよくこぼしてるけど」



「…ここの駐車場もなくなるのかな?」



「たぶん、もうすぐなくなるね。更地にするんだって」



「ここだけは残して欲しいよなぁ」



「うふ。ここは待ち合わせの思い出がいっぱいだもんね」



 その後、当時の俺の家がどうなったか見たくなり、車を走らせた。




 途中で、ドライブインの横を通り過ぎた。



 幸奈ちゃんから結婚していることを聞かされた場所。



 ここは変わりがなかった。



 そして、家も健在だった。



「なに?なつは脱童貞した場所が気になったの?」



「脱童貞って…」



「うふ。なつはねーさんしか知らない。それでいいの!」



 幸奈ちゃんは同棲してすぐに俺の過去を根掘り葉掘り聞いた。



 そして、聞いてきたくせに嫉妬爆発でキレ散らかして、全部なかったことにされた。



「私も処女だったし良いじゃん!」



 とか言ってたが、あんた子持ちの既婚者だっらでしょ…とはもちろん言えない。



「さぁ帰ろ!晩御飯の買い物しなきゃだし」



「うん」



 幸奈ちゃんは4年前の同棲生活を思い出して楽しむかのようにほぼ毎日家でご飯を作った。



 もちろん、俺の健康を考えて。



 買い物も多い時はついていったが、何を作るかサプライズしたいようで、1人で行くことが多い。



 来年以降でこんなに長く一緒に居れるイメージはない。



 結婚するまでは、これが最後の同棲生活だろう。



 だから出来るだけ一緒にいたい。





 長かった8月も終わりを迎える。



 俺は、ちょっと出掛けてくると言って家を出た。



 いつもなら、どこに行くの?私も行く、と言いそうな幸奈ちゃんも普通に「いってらっしゃい」と見送ってくれた。



 行く場所は決まってる。



 飲み屋街に立つ一つのビル。



 その裏手の誰もいない駐車場に行って座り込んだ。



 もう4年前かぁ…



 30分ほど座って、独り言のような会話をして家に帰った。



「安藤くんと会話できた?」



「うん。独り言だけどね」



 幸奈ちゃんは察していた。




 そして9月に入った。



「ねーさん、映画でも観る?」



「なんかもったいないじゃん。そんなん観るよりエッチした方がいいと思う」



「ムラムラするの?」



「いや、普通になつの赤ちゃんが欲しいだけ。絶対かわいいもん」



「俺ら似てるってよく言われるし、そっくりなのが生まれそうでかわいいかもね」



「見た目とかじゃなくて、絶対私好みの気の弱い小型版のなつになると思うの」



「そうかな…。すっげぇ気の強いねーさんの小型版になりそうな気がするけど」



「それはそれで2人でなつをいじめて遊べそうでいいわ」



「それはやだなぁ」



「嫌なの?」



「嫌じゃなくて怖いなぁって…」



「嫌なの?」



「だから、嫌な訳じゃなくて…」



「嫌なの?」



「いえ、嬉しいです…」



「あはは!やっぱりなつだ!面白い」



 9月の2週目に差し掛かる頃から、幸奈ちゃんはぼんやりしはじめた。



 そして、日を追うごとに、幸奈ちゃんは機嫌が悪くなり、様子がどんどんとおかしくなっていった。




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