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幸あるなつのおもひで  作者: ホタテノホ
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第13話 復学の意思

 



「なつ、レート上げたいと思うけど、どう思う?」



「ピンにするってことですか?絶対止めた方がいいです」



「例えば、6卓ある内の1卓をやってみるとかは?」



「このお店って、そこの大学の学生がメインのお客さんでしょ?」


 大学生でも、ここの点5はウマが大きいので高いと思います。


 これでギリギリでしょう。


 もしピンをすれば、年齢層高めの人が少し多く入るとは思います。


 でも、客質は下がります。


 そうすると大学生が飛びます。


 また、アウトもきっと多くなります。


 ピンを作るよりは点3とか、より低レートにいった方が客は増えると思います。



 このような会話が増えた。



 麻雀屋の経営で客がつき、よりゲーム代を取れる高レートを店長が求め出した。



 それで潰れたお店を俺はいっぱい知っている。



 これを店長にそそのかしたのは主任だ。



 この主任は元お客さん。



 年齢は俺と同じ。



 普段は友達だ。



 しかし、国立大経済学部卒の割に短絡的で、さらにギャンブル依存症気味だ。



 せっかく大手自動車会社のディーラーに就職してたのに麻雀が好きで、辞めてここに来たようなやつだ。



 こんなブラックに進んで。



 基本的にいいやつなのだが、自分が高レートで打ちたいから、お客も望んでると店長に言ったのだ。



 俺がここのバイトを辞めて、次に正社員として入るまでの間に、ここに就職してきたらしい。



 大バカだ。



 俺がいる間は高レートはさせない。



 働く場所がなくなるリスクが上がるからだ。




「なつ、今日は代行も入ってくれないか?」



「いいっすよ」



 俺は幸奈ちゃんに遅くなると連絡した。



 今日の相棒は大学院生の優子さんだった。



「優子さん、お願いがあるんだけど…」



「例のやつですね?任せといて下さい!」



「ありがとう!」



 俺は優子さんに大学院受験の要項と過去問を頼んだ。



 ここの大学に行きたいわけじゃないが、要項は一般の国立大の院試のパターンを知るため、そして、過去問は勉強のために。



「明後日も私は入ってるので、仕事前にお店の方に置いておきます!」



「ありがとう!お礼はきちんとするね!」



 そして、優子さんはわざわざ翌日に持ってきてくれた。



 そう本人から連絡があった。



 仕事のために店に到着して、優子さんが入れてくれたという個人用の引き出しを見たが何もない。



 そこへ店長が通りがかり



「あれ捨てといたから」



 それだけ言って帰って行った。



「えっ?」



 まぁ気持ちは分からなくはない。



 だが、プライベートの引き出しを開けて捨てるのはあり得ない。



 俺はこの時に大学院はともかく辞めることを心の中で決めた。



「ねーさん、話がある」



「何?真面目な話?」



「うん。俺ね、このまま麻雀屋さんで働くのはまずいと思うんだ。それでね…」



「うん…」



「今のままでは、まともにどこも就けないから、近くの大学院に入り直して、ちゃんとしたところに就職したいと思う」



 幸奈ちゃんは俺の目をじっと見つめた。



「やりな!なつが思うようにやりなよ。私は応援する」



「ありがとう」



「私はなつがどんな職業でも構わないの」


 なつがいればそれでいい。


 でも、なつがしたいことがあれば、するべきと思う。


 後悔したなつは見たくない。



「うん、俺、頑張るよ」



 にっこり幸奈ちゃんは笑った。



 そして、少しイタズラっぽい顔になり…



「1つ条件があるわ!」



「…何?」



「週に1回は必ずエッチすること」



「えっ?なにその条件!?」



「だって、なつ、私が何も言わないと平気で1ヶ月とかしないじゃん」



「ねーさん、条件ってそれ?本気の条件?」



「私はいつだって真剣よ!条件よ!」



 俺は幸奈ちゃんの優しさに甘えた。



 早速、目的の大学院の要項を取り寄せて、仕事の合間に勉強した。



 問題は学費だ。



 俺は親父に電話した。



「親父?俺、まともに就職するため、もう一回大学院を受験しようと思ってる…」



 両親は大賛成だった。



 その方が幸奈ちゃんのためにも良いと、特に父が喜んだ。



 これで下地は出来た。



 あとは勉強するだけだ。



 いや、その前にお店に辞める意思を伝えねば…



「本気か?」



「はっきり言って、今のままでは結婚とかも出来ません。だから、大学院に入り直して職を探します」



「いつまでもこの給料のままの訳ないだろう。もう少し頑張ってお店を大きくして…」



 店長はお店を大きくして俺に店舗を任せる算段があると言った。



 正直に言って無理だ。



 このお店はこの地域に出来た初のフリー雀荘。



 最初は儲かっていたが、それを見てきた他の企業が、どんどん自社で娯楽部門を作り、ぽつんぽつんと他に店ができ始めた。



 その1つのお店に、俺はスカウトされていた。



 今の給料の倍額出すと。



 俺は今のお店でそこそこ人気が出て、この地域の麻雀界隈ではちょっと有名になっていた。



 別のお店で遊びに行った時に、そう打診された。



 しかし、恩ある今の店長を裏切ることが出来ずに断っていた。



 スカウトしてきた人は、また隣の市でお店出すから、遊びにおいでと言ってくれた。



 そして、そこの店主になる人と一緒に麻雀を打った。



 気が強いけど優しいおばさんで木山さんと言った。



 このように、母体が大きいところがお店を出し始めると、うちのようなお店は危ない。



 客が分散されて売り上げが落ちるのは必死。



 そこを耐え抜いて次に繋げる体力が他のお店に比べて弱い。



 あれほど代行タクシーやラウンジは続けるべきだと言っていたが、麻雀部門の売上が良くて、他を縮小して、麻雀に大きく投資したのだ。



 ストッパーだった俺が辞めるとおそらく麻雀屋に全投資になる。



 店長だけでなく主任がそうしたがっているからだ。



 高レートもその1つだ。



 他店に高レートはまだない。



 そこで新たな市場を作ろうとしてるのだろうが、甘い。



 固定層の学生が離れて、客質が落ち、客がいなくなる。



 お世話になったお店だ。



 出来るだけ協力はしたい。



 でも、大学院進学を見据えて俺は離れる。



 それは決めたことだ。



 お店の将来を不安に思ったが、俺は、8月末までと、きちんと退職を願い出た。



 店長はなんとか納得してくれた。




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