桃太郎(未完)
未完成のを供養として出しました
昔々、あるところに一人の鬼が居ました。鬼には旦那と三歳くらいの子供が居ます。鬼にはもうすぐ赤子が生まれます。今生まれても可笑しくないくらいの月日が経ち、そろそろ産声が聞こえてくる辺りでしょう。
「頑張れ!あともうちょっとだ!頑張れ!」
と父親鬼が母親鬼を応援します。母親鬼は必死に深呼吸をして、新たな生命を生み出そうとしてます。そして……
「おんぎゃあ!おんぎゃあ!」
元気な赤子の産声が聞こえてまいりました。父親鬼達は大喜び、しかし、その喜びはとあることで打ち消されました。
「角が…ない…」
生まれてきた赤子には角もなく、肌は赤くも青くも黒くもありません。まるで人間の赤子のような……。
「え?嘘……。角が無いなんて…」
母親鬼と父親鬼は悩みます。生まれてきた可愛い我が子、その子は人間の赤子のような姿。こんな姿では周りに住んでいる鬼に虐められてしまう、もし、このまま成長しても角が生えて来なかったら…と。
「…とりあえず、今日は休もう。また、明日考えよう」
翌日、父親鬼と母親鬼は生まれてきた我が子を如何するか考えました。昨晩のように、見た目が人間らしく見えると、何かと不都合…我が子も辛い思いをするだろうと思い、夫婦は子を捨てることにしました。母親鬼は、幾ら我が子の為に捨てることがとても辛く、捨てに行くことが出来ず、父親鬼に任せることにしました。父親鬼はこのまま近くの森で捨てようと思いましたが、父親鬼は我が子の為とはいえ、殺したくはありません。父親鬼はこの前取れた大きな桃の中身をくり抜いて、我が子を中に入れ、川に流すという考えが出ました。近所の川の下流には人間の集落が近い為、拾われる確率が高いであろうと思い、そうすることにしました。
父親鬼は、桃の中身をくり抜き、我が子を入れ、桃を繋ぎ合わせ、川辺へ行き、流しました。
下流に一人の老婆が居りました。日課の洗濯をしており、芝刈りをする旦那の老爺の着物の泥汚れと格闘していたところに、大きな桃がどんぶらこどんぶらこと流れてきました。そう、此の桃が先程父親鬼が流した桃です。老婆は驚きましたが、夕飯の足しに出来るかなと思い、老婆とは思えない脚力と腕力で桃を家へ持ち帰りました。
「ただいま」
「おお、婆さん。おかえり。…なんだい、そのでっかい桃は」
「嗚呼、此れはな、川に流れてたんだ。ちょっと夕飯の足しになるかなぁって持ってきたんだ」
「なるほど。そろそろ夕飯時だし、切っとくか」
老爺は包丁を持ち、桃を切り始めました。桃は柔らかく、あまり力を入れなくても、切れます。切っている時、何か包丁に当たりました。種かと思い、老爺は其処に刃を入れるのをやめ、他のところを切っていきました。
そろそろ切り終わる時、中から赤子の寝息が聞こえました。老爺と老婆は驚きました。いや、まさか…と思いましたが、老爺は慎重に刃を入れ、桃を細かく切り落としていきます。切り落とし終わり、中から赤子の姿が現れました。老爺と老婆は本当に赤子が居たことに驚き、少し奇妙に思いましたが、この子は神からの贈り物、という考えが強く出ました。老爺達には中々子宝に恵まれなかったので、数十年越しの贈り物、と思いました。そう考えた為、老爺達は大喜び、二人は赤子に桃太郎と名付けました(安直だが、昔の名付けは大体こんなものである)。
それから月日は流れ、桃太郎は六つになりました。桃太郎は老夫婦に大切に育てられ、桃太郎は強く逞しい男の子に成長しました。桃太郎は近くの草原を転げまわったり、近所の子どもたちと遊んだりして過ごしていました。
そんな日々を過ごしていたある日、鬼ヶ島という鬼が住んでいる鬼が悪さをしているという噂を耳にしました。鬼は、人間の集落に来て、食料を根こそぎ取り、金目のものを奪い取っていて、人間は鬼の悪行に苦しんでいる、という噂でした。桃太郎はその噂を聞いて、お爺さんとお婆さんに鬼ヶ島に行きたい、と話しました。二人は勿論大反対。大事な我が子を一人で、しかも悪さをしている鬼の本拠地に行くというのだから、そう簡単に了承はするわけがありません。でも、桃太郎は困ってる人を助けたい、痛い思いしてる人を助けたい。と必死に説得すること約二時間…
「わかった。お前が真剣なのはよくわかった。羽織や刀は用意しとくから、絶対に生きて帰るんだよ」
お爺さんはそう言い、桃太郎が寝た後に羽織と切れの良い刀を準備しました。
翌朝の早朝、桃太郎が鬼ヶ島へ旅立ちます。羽織を着、鉢金を着け、刀を差して身支度をします。旅立つ少し前にお婆さんは腹が空いたときの為に、近くで取れた吉備を使った吉備団子を桃太郎に持たせ、二人に別れを告げた後、桃太郎は鬼ヶ島がある南へ足を運び始めました。
南の方に歩き始めて、やく一時間、林の中を歩いていると一匹の白い犬が出てきました。すると白い犬は
「もし、そこの御方、その腰に付けた吉備団子を一つ分けてはくれませんか?」
「嗚呼、良いとも」
桃太郎は袋から吉備団子を出し、犬に分け与えました。犬は尻尾をブンブンと振りながら吉備団子を食べました。
「有難う御座います。お礼に何かしたいのですが…」
「それなら僕の旅についてきてくれないか?鬼ヶ島という島に居る悪さをする鬼を懲らしめに行くんだ」
「なるほど。鬼退治、というわけですか。是非ともお供しましょう」
そうして、犬は桃太郎のお供もして仲間入りすることになりました。
犬と歩いて数十分後、腹を空かせた猿が桃太へ郎達に寄って来ました。
「あの、其の吉備団子をくれませんか?一口でも、一欠片でも…二日ぐらい食べてなくて……」
「そうゆうなら二つや三つぐらい食べて構わないよ」
そう言い、吉備団子を取り出し、猿に二つ渡しましたが、猿の食いつきが良く、とても美味しそうに為、もう一つ渡しました。