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THE GIRLS  作者: 水乃戸あみ
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第一章 小牧円の場合2

「ただいま!」


 ガラガラうるさい玄関引戸を勢いよく開けて、勢いよく急な階段を駆け上がり、勢いよく自分の部屋へと入る。昭和から続くザ日本家屋って感じの我が家。

 死んだお爺ちゃんが使っていた部屋が今のわたしの部屋だ。

 お爺ちゃんが亡くなってから、何となく「わたしの部屋はここが良い」とお母さんに告げた。

 部屋の壁際にはお爺ちゃんが集めたコレクションの数々が並んでいる。

 レコードプレーヤー、アンプ、スピーカー。レコードが大量に入った棚。

 棚からお目当ての一枚を取り出し、慎重に中身の円盤を取り出す。黒く、大きい、でこぼこした円盤。この凸凹には音が刻まれているから、真ん中のツルツルした所か縁を持つんだって。昔、お爺ちゃんに教えてもらったものだ。ていうか、間違って持って怒られて覚えた。

 タイトルは『Exile on Main St.』かの有名なRolling Stonesの1972年の作品。

 邦題は『メインストリートのならず者』

 レコードプレーヤーの蓋を開いて、円盤を載せ、針を掛け、再生スイッチを押す。

 流れ出す陽気なギターの音、体の芯を震わせるベースの音色に、気持ちの良いスネアドラムの音、特に上手いとも感じないけど気持ち良さそうに歌うボーカル。

 ラフで、ワイルドな音。

 当時は評価されなかったらしいが、徐々に評価が上がり、今じゃ名盤扱いだという。

 何が良いんだろう? 

 わたし自身聴いててわからなかった。美メロってわけじゃないし、バラードっぽいバラードも特にないし、曲はキャッチーだけど、一曲一曲がめちゃくちゃ優れてるってわけでもないと思う。

 だけど――。

 わたしはこのアルバムを聴いていると無性に踊り出したくなる。

 叫びたくなり。

 走り出したくなった。

 初めて聴いたとき――お爺ちゃんが死んで二週間くらい経った後――悲観に暮れていたわたしが、お爺ちゃんの思い出にもう一度浸る為に入ったお爺ちゃんの部屋。

 レコードプレーヤーに置かれていたのがこのアルバム。

 たぶん――ロック好きのお爺ちゃんが最後に聴いたのがこのアルバムだったのだろう――『メインストリートのならず者』

 衝撃だった……ような気がする。そこまでその時の感覚をはっきり覚えているわけでもないけれど。全身にぶわっと音が駆け巡った感覚は今でも思い出せる。

 このアルバムを聴いた時から、わたしの中でなにかが少しずつ変わっていった。

 そして、変えたくなった。


 わたしは不妃みたいに美人で纏った雰囲気がその辺の女子と異なる存在ってわけじゃない。

 臆病で、母子家庭で貧乏。何の才能もないし、気持ちを隠してばかりで友達もあんまりいない……嘘。よっちゃんしかいない。

 それでもちっぽけなプライドだけはいっちょ前で、周りの空気に染まるのが嫌で、それで、やったことと言えば、クラスの無視されてる子に独り言みたいにびくびく話し掛けるくらいで。

 そんな自分が本当に嫌になる。

 それでもわたしは何者かになれると信じている。


 わたしはロックンローラーになる為に生まれてきたんだ。

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