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THE GIRLS  作者: 水乃戸あみ
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第八章 小牧円の場合8

 徐々に、本当に少しずつだけど、涼しくなってきた。


 文化祭の準備は進められている。

 学校のそこかしこにそれらしい物を見るようになった。第五七回優陣祭ゆうじんさいポスター、垂れ幕、ゴテゴテした装飾の派手な門、クラス出し物で使用するだろうオブジェや着ぐるみ。優陣祭ポスターなどは地元の商店街などでも張り出されているのを見かけた。

 体育館はまだ地味だ。二階席に照明装置が置かれているくらい。これからなんだろう。

 本番まで後少し。わたしたち――THE GIRLS――は、たった今から本番前のステージチェック、リハーサルを行うところだった。

「じゃ、よろしくお願いしまーす」

「はーい」

「藍ー!」「寧々ー!」

 最近よくお昼を一緒に食べてくれる二人――さっちゃんとうっちゃんも見に来てくれていた。がらんとした体育館の真ん中で、制服姿の女子二人がきゃっきゃと手を振る姿はなんだか青春っぽいなと感じた。

「つーぶら!」

 ひらひらと手を振り返しておく。お腹抱えて笑う。わたしは一体彼女たちが何をそんなに面白がってるのかわからないけど、女子高生ってそういう生き物だ。たぶん。

 放課後。普段この時間、体育館で練習しているバスケ部やバレー部に、一旦場所を明け渡してもらってのリハーサル。わたしたちの他にも後続が控えてるってことで、やるのは一曲のみ。

 何が大変って、機材を持ち運ぶのが大変だった……。ギター、ベース、マイク、キーボードだけだったらどんなに良かったか……普段は不妃の家にセットされているドラムセット、アンプ、詳しくないからよく知らないけど、ミキサーとか、他にもでっかいスピーカーを幾つも幾つも……それがなきゃ、まともな音になんないんだとか。それらを不妃のお父さんのバンに詰め込み三往復くらいしてようやく今の形になったのだ。

 不妃のお父さんは昔はバンドやってたらしいけど、今は自営で別のことやってて、自分で自分のお休み決められるんだとかで手伝ってもらった。感謝感謝。

 本人は娘の晴れ舞台だってことでやけに張り切ってる風だった。やりすぎじゃないかと思った。

 ステージの上。緊張するかなって思ったけど、立ってみると思いの外緊張しない。ここにお客さんがいっぱいいれば緊張するのかなって思うけど、そもそもそんなに言う程お客さん入んないよね。

 さっちゃん、うっちゃん、実行委員の人たち数名。それから面白がって見に来た同じ学年の人たちが一番後ろで壁に背を預けてたむろしていた。後、ド真ん中に不妃のお父さんが仁王立ちで音のチェック。実行委員の人たちより偉そう。

 不妃の軽快なリフから曲が始まる。

 さあ、ロックンロールの時間。


「五十点だね」「演奏は百点だね」「楽しみにしてたのにね」「本番までお預けみたいだね」

 さっちゃんとうっちゃんが口々に言ってきた。

「お預けってなにが?」

「そりゃあ円の不思議な踊り」

「あ、歌は良かったよ?」

「それ、誰に聞いたの?」

「藍」

「藍しかいないじゃん」

「もおー! あいーっ!」




 こんな感じで本番が近づいてくる。

 もう明日だ。

 こんなことになるなんて……少し前まで思いもしなかった。


 過ぎていく。

 わたしの中で、純粋に、心の底から楽しかった日々が。



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