第6話 会社説明会②
2025年12月26日 13時30分。
魔法少女株式会社、会社説明会の会場にて。
「では、ここからが本題となりますっ! あなた達3人に行なっていただきたい業務内容としましては、悪の宇宙人集団【曼荼羅】と戦ってもらうというものです! 曼荼羅は地球人、つまり私たち人類を全滅させて地球を征服しようと考えています! それを確実に阻止していただきたいのですっ!」
業務内容を説明する月野さんの声はとても力強くて、目はギラギラと燃えたぎっているように見える。
それもそうだろう。
もし私たち3人が曼荼羅という奴らとの戦いに負けてしまうと、地球に存在する全ての人類は曼荼羅の手によって全滅させられ、地球も征服させられてしまう。
月野さんが真剣になるのも当然の話だ。
しかし、その空気を打ち砕くかのように黄色い髪の子が質問を投げかけた。
「あの、週休二日との事ですが……シフトはどのような感じで組まれる予定なのでしょうか……? ウチ、いま絵画教室に通っていて……シフトと重ならないかなってとても心配で……」
こらーーーっ!
それいま聞く事じゃなくない!?
月野さんの話聞いてた!?
全人類の存命を懸けた曼荼羅との戦いがまさにいま始まろうとしているのよ!?
絵画教室に行ってる場合じゃないでしょ!?
空気読めーーーっ!
ねぇ! 月野さんっ!
「絵画教室に通われている曜日と時間帯を教えて下されば、それに合わせてシフトを組ませていただきます。ご安心下さいませ、飛鳥すずか様」
って普通に答えるんかいぃいぃぃーーっ!!
月野さん、全人類の命がかかってるんですよね!?
曼荼羅に地球征服されそうなんですよね!?
「というのも……曼荼羅の動きには大体予想がついているからなのです。弊社の研究部の報告によりますと、どうやら曼荼羅も会社的な組織形態で活動しているようなのです。1ヶ月ほど前から弊社には曼荼羅からの宣戦布告的な手紙が毎日ポストからはみ出るくらいに大量に送られてきているのですが、毎回同じ人が書いてる訳ではなさそうなんですよね。現時点で、曼荼羅からは千通以上の宣戦布告的な手紙が届いてきていますが、研究部が送られてきた手紙の日付や書き手の名前などを調べてみた所……向こうは『ローテーション制』で手紙を書く人を回しているみたいなのです。だからきっと、曼荼羅からの攻撃が来る日もパターンがあると考えられ……といいますか、先ほど研究部からのメールで「あと半日くらいで曼荼羅からの攻撃が来る日が大体わかるかも」と連絡がありました。ですので、攻撃が来る日を避けてシフトを調整すれば絵画教室も普通に通う事ができると思います。……あ、また研究部からメールが来ました」
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To:月野はづき
おつ〜。
曼荼羅から攻撃が来る日なんやけど、調べてみたら半日かからんかったわ。
攻撃してくるのたぶん火曜日と金曜日っぽいで。
なんか曼荼羅からの手紙に「火曜日と金曜日はゆっくり休みます。他の曜日はめちゃめちゃ攻撃する予定です」って書いてあったんやけどな。
……これ、嘘やで。
火曜日と金曜日にめちゃめちゃ攻撃してくるで、こいつら。
逆パターンのやつやな。
てか、今日めっちゃ疲れたー。
先にあがらせてもらうでー。
From:研究部
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「だ、そうです。調整しておきますね」
えぇーー……。
もうなんかツッコミどころが満載すぎて、パニック症だけど違う意味でパニクってきたよ……。
「月野さーん! あたしすっごく気になってるんだけど、曼荼羅からの手紙ってどんな感じの内容なのかなぁーって! 見てみたいなぁーって!」
佐倉さんまで……。
いや、さすがにそれはアルバイトの私たちには見せられないでしょうよ……。
「もぉ〜、一通だけですからね?」
「ッしゃああーーっ! ラッキ〜〜!」
マジかいな。
こんなんで大丈夫なのか、魔法少女株式会社……。
月野さんはホワイトボードの下に置いてあった鞄から封筒を一つ取り出して、中に入っている手紙を私達に見せた。
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魔法少女株式会社 御中
いつも大変お世話になっております、曼荼羅のエリンギ太郎です。
最近こちらは肌寒い日が続いています。
そろそろコタツを出してもいい時期かなぁー、って思ったりしてます。
因みにそちらはどうですか?
肌寒くないですか?
あ。 近々にでも人類全滅の準備に取り掛かろうと考えています。
ゆくゆくは地球征服もするつもりですので何卒宜しくお願い申し上げます。
2025年12月4日 エリンギ太郎より
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はい。
ゆるすぎる。
全くもって攻撃的ではない文章に、逆に私は恐怖を覚えた。
というか、何なの[エリンギ太郎]って。
本名なのかな?
ウケを狙ったニックネームなのかな?
だとしたら完全にスベッてるよ……?
私は、これから立ち向かおうとしている曼荼羅からのあまりにもゆるすぎる宣戦布告的な手紙のせいで一気にモチベーションが下がってしまった。