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第4話 それは危険な棒

遡ること、2025年11月5日。

【曼荼羅】の宇宙要塞にて。


伊吹貴(いぶき)様ぁぁぁあぁあぁーーッ!」


赤髪の若い男がフードを被った男の元に走ってきた。

フードの男はステーキをモグモグと頬張っている。

赤髪の男はかなり汗だくで、顔を真っ青にしている。


「どうした、紅月(くづき)よ。というか、貴様とは何だ。俺を誰だと思っている? そして俺はいま食事中だぞ。三日ぶりのステーキだぞ? 用件があるなら、このステーキを食べ終わっ……」


「違うッスよ! 『伊吹貴 様』って呼んだんス! ってか、そんな事を言っている場合じゃないッスよ! [曼荼羅から地球を守り隊]の奴らが3年ぶりに動き出したんスっ! 何やら魔法少女株式会社という企業を立ち上げて、いま魔法少女の求人をかけ始めているそうなんスよっっ!」


伊吹貴は両手に持っていたナイフとフォークの動きを止めた。


「魔法少女株式会社……求人……。つまり、[曼荼羅から地球を守り隊]の奴らがついに我々を迎え撃つ為に動き出したという事か……」


しかし、伊吹貴はすぐさま再びナイフとフォークを動かし、ステーキを食べ始めた。

危機感など全く無くて、至って冷静な様子である。


「だから伊吹貴様、ステーキ食ってる場合じゃないッスって! 俺たち曼荼羅の、人類を全滅して地球を征服する計画がその『魔法少女』とやらに阻止されようとしてるんスよ!? 何とかして早く手をうたないと本当にやば……」


その瞬間、伊吹貴は右手に持っていたナイフを紅月の顔面に目掛けてシュッと投げた。

紅月は咄嗟に避けたが、ナイフの尖端が左頬をかすって一直線の傷がつき、血がツー……と流れた。


「……ッつぅ!」


紅月は左頬を手で押さえ、その場に膝をついてしまった。


「……紅月よ。俺を誰だと思っている? 伊吹貴だぞ? 誰もが認める最強の男、伊吹貴だぞ? 巷ではファンクラブも出来ているという噂があるくらいの最強を極めた、あの伊吹貴だぞ? [曼荼羅から地球を守り隊]の奴らが『魔法少女』をかき集めて俺を……我々を攻撃しに来たとて、曼荼羅の破壊力には到底敵わないであろう。だから焦るな、紅月。そう……2026年の1月1日から地球に存在する人類を全滅させ、地球を征服する我々の計画には何の支障もきたさないし、何の問題もないだろう。大事なことだからもう一度言うぞ? 俺は最強の最強を極めた男なのだ」


紅月は伊吹貴の「俺最強」の連続発言に相当イラついたが、何か言い返したらまたナイフを投げてくるだろうと思って黙っていた。

伊吹貴は要塞の中心部にある、柱に埋め込まれた赤く禍々しく輝きのある菱形のダイアモンドに目を向け「フフフ……」と笑みを浮かべた。

紅月の横にいた筋肉モリモリのモヒカン男でさえも、伊吹貴の闇のオーラに恐怖を覚え……身体をプルプルと震えさせていた。


* * *


2025年12月26日。

魔法少女株式会社の休憩室にて。


私はベッドから起き上がり、窓際の方までおぼつかない足取りながらも歩いて向かった。

ピンクのカーテンの下に落ちてある小さい棒を手に取る。


「何これ? ボールペンかな?」


その小さい棒は先っぽが尖っていた。

色んな角度から眺めてみると、ちょうど棒の真ん中くらいにボタンらしきものが付いている。

私は興味本位から、つい、そのボタンを押してしまった。

その瞬間。


ビィィィィィーーーーーーーーッ


ドゴォォォォォーーーーーーンッ


小さい棒の先っぽから青いビーム的なものが発射されて、白い壁を貫く。

私は慌ててボタンから指を離した。


「え! ……えぇ!? ……ど、どゆこと?」


休憩室の外からダッシュでこっちに誰かが向かってくる。

ドアが開いて、月野さんが現れた。


「ちょ、ちょっと、愛野様!! 何をされたのですか!?」


月野さんは目を丸くして私の顔を見る。

息がかなり荒くなっていた。


「いや……あの……この……、小さい棒の……ボタンを押したらなんかビーム的なものが……」


月野さんは私の手から小さい棒をシュッと取り上げると、神妙な顔つきで言う。


「愛野様、これは……戦闘用に作られた『魔法deスティック』です。弊社の武器開発部の瀬川翔子が研究に研究を重ねて発明した、[対・曼荼羅専用の武器]です。むやみやたらに扱ってはいけません」


私は心の中で、そんな危険な物ならもっと厳重に管理しとけよ……と思いはしたが、そんな事を口にしたら会社説明会を受ける前に不採用になってしまうだろうと、敢えて何も言わなかった。


「『魔法deスティック』は強力な武器ではありますが、使い方を間違ってしまうと危険でアレなので私が責任を持って厳重に保管させていただきます!」


「え、あ、はい……」


月野さんは何故かキリッとした表情で『魔法deスティック』を手さげの中にしまう。

いやいや、地面に置きっぱなしにしてた物をそんな得意気な顔で言われても……とも思ったが、やっぱり不採用になるのは嫌だったので何も言わなかった。


「さて……愛野様。会社説明会の準備が整いました。お休みのところ大変申し訳ありませんが、お時間となりましたので説明会の会場までご案内致します」


いやいやいやいや、『魔法deスティック』のせいで後半の15分くらいは全然休めなかったんですけどーーッ!

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