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第25話 ビロコウ戦①

2025年12月27日 15時30分。

魔法少女株式会社、研修室にて。


私たちは並べられたパイプ椅子に座らされ、月野さんの説明を待つ。

研修室の中は耐え難い魚介臭に包まれていた。


「では、研修の説明を始めさせていただきます。時間があまりありませんので手短に説明致します。しっかり聞いていて下さいね」


月野さんはそう言うけれど魚の匂いがキツすぎて話に集中できるか不安になる。

現に私含め、のぞみんもりんりんも鼻を指でつまんでいた。

それほど臭い。

そんな私たちを気にもせずに月野さんが研修の説明を始める。


「まずこの魚はですね……ハイギョといいまして、ハシビロコウの大好物なんです。そして皆様にはこのハイギョを捕らえようとするハシビロコウの動きを止めて倒してもらいたいのです。見事、倒すことが出来ればミッションクリアとなります」


なるほどね。

なんか意外と簡単そうだなぁ。

というか、のぞみんとりんりんの力を借りなくても私が魔法deスティックを使えばハシビロコウなんて一瞬で倒せそうなんだけど……。


「愛野様。いま心の中で佐倉様と飛鳥様の力を借りなくてもハシビロコウを倒せるんじゃないかと考えておりますね?」


げっ……バレてる。

でも実際、可能だとは思うんだけど……。


「仮に愛野様だけでハシビロコウを倒せたとしても、それでは全く意味がありません。この研修は愛野様・佐倉様・飛鳥様の3人の力とチームワークを駆使して行うことに価値があるのです。そうでなければ、研修をする意味がありませんので」


確かにそうだよね……。

私だけが強くなっても全然意味がない。

私たちは、とても強力なパワーを持った曼荼羅の連中を相手にするんだから。

考えが浅はかだったな。

反省。


「分かっていただけたようですね。では、以上で説明は終わりとなります。ハイギョだけ置いてわたくしは研修室から出ますので研修頑張って下さい!」


え。

もう説明終わり……?

ハシビロコウはどこ?

ハイギョを泳がす池はどこ?

私の疑問を受け取ったかのように、のぞみんが鼻をつまみながらも月野さんに聞く。


「あのー! 月野さんー! 倒すべきハシビロコウが不在なんですけど! このハイギョどうすればいいか分からないんですけど! というか、どうやってハシビロコウ倒せばいいのか分からないんですけどォォーー!」


月野さんはこっちを振り向き、ニコッと笑みを浮かべて言った。


「それらをどうすればいいのかを考えるのも研修のうちですよ♪ あ、念を押して言いますが……ハシビロコウを倒していいのはハシビロコウがハイギョを捕らえようとする瞬間だけですからね。でわでわ〜」


***


2025年12月27日 16時。


ついに始まった特別強化研修。

ただ、私たちの目の前に置かれているのは3匹のハイギョが乗せられた大きな皿のみ。

一体どうしたらいいんだろう。

そして、なんと言っても……めちゃめちゃ臭い。


「わーー! どうしたらいいんだーー! ハシビロコウもいないのにハイギョを捕らえようとするハシビロコウを倒せだなんて意味不明すぎるーー! ハイギョを泳がす池もないしーー! もうこんなの、りんりんが魔法deカードにハイギョを泳がす池とハシビロコウを描いて具現化するしかないじゃんかーー!」


のぞみんが地面を拳でドンドンと叩きながら叫んだ。


「のぞみん、だいじょぶだいじょぶ……。うん。ウチが魔法deカードに池とハシビロコウを描くしかないね……つらいね……」


のぞみんの背中を擦りながらりんりんがそう慰める。

ん、あれ?

それで良くない?

りんりんが魔法deカードに描けばいいんじゃん。


「えーと、りんりん。池の絵とハシビロコウの絵は描くことできる?」


「うん、頑張ったら描ける!」


はい解決。

のぞみん、ナイスアイデア……ってか月野さん普通に「例えば魔法deカードにハシビロコウを描けば具現化されて召喚されます」って答えを言ってくれてたな。


「どうしたら……一体全体どうしたら良いのであろうか……。りんりんが描いた絵を具現化するしか方法がないではないか……。どうしたら……どうしたら……」


まだ言ってる。

たぶん、アピールなんだろうな。

内心では「どうよ! この天才的な発想!」って思ってそう。


「よし! それじゃ悪いけど、りんりん絵をよろしくね。ハイギョが臭すぎるからなるべく早く描いてもらえると嬉しかったりする。マジカルンEXの効力も時間制限あるから……ごめんね」


「んーん! だいじょぶ! 早く描くね!」


りんりんは本当に素直で良い子だな。

天然だけど癒される。


「よっしゃ! んじゃ、わてらはオセロでもやっときやすか!」


のぞみんは本当に能天気。

でも、明るくて元気だからこっちも気持ちが明るくなる。

というか何故にオセロ?

確かにりんりんが絵を描いている間は特にやる事ないけど。


「あたし、オセロすこぶる強いよ! 全国大会で優勝する夢も見た事あるし!」


夢かい。

のぞみんは鞄の中に手を突っ込み、ガサゴソとオセロセットを取り出した。

一体のぞみんの鞄の中はどうなってるんだ。


研修室の中はハイギョの乗った大きな皿を横に絵を描くりんりんとオセロで遊んでいるのぞみんとあたし……という、異様な空間と化していた。

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