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第1話 予期せぬ求人情報

2025年12月24日 クリスマス・イブ。

福岡県某所。


私の名前は愛野あいこ。

福岡県の田舎町に住んでいる私は高校受験に失敗し、中学校を卒業してからずっと部屋で引きこもりをしている。

はい、自他ともに認めるスーパーミラクルニート女です!

はぁ……今日はクリスマス・イブらしいけど、私には関係ないなぁ。

もともとパニック症を患っていて学校は休みがちだったし、受験に失敗して実はホッとしてしまっている自分がいる。

それは、学校に行かないでずっと部屋でダラダラしながら一人でいられるからだ。

ニート万歳!

でも実際には広場恐怖というものがあり、外に出て、道端や電車の中……人の多い所でパニック発作が起きてしまう事への不安が私にはある。

だから、学校にも行かず仕事もせずの生活が私には合っている。

これでいいんだ、と思っている。

因みに今日はクリスマス・イブらしいけど、私には全く関係ないなぁぁ。

……とは言ったものの、両親がこんな私を放っておくワケがない。

毎日毎日、私の部屋に来て「何かアルバイトでもいいから仕事をしなさいよ」と言ってくる。

そのたび私は「そのうちするから出てって」と言い返す。

両親は「そのうちってどのうちよ」と、半ば呆れながら私の部屋を後にする。

これがもう習慣になっている。

私だって本音を言えば働きたいけど、こんな精神状態じゃ仕事に就いたとしてもすぐに辞めてしまうのがオチだ。

決めつけかもしれないけれど、まだ私は十代なんだからそんなに焦らなくてもいいと思う。

私くらいの年齢で仕事に就いていない人なんて星の数ほどいるだろうし。

うん。

焦らない焦らない。

ってか、今日はクリスマス・イブらしいけど私にはすこぶる関係ないなぁぁあ。

……とか思ってたら、


ヴーーッ、ヴーーッ


ス、スマホが鳴った!

男友達なんてほとんどいないのに、クリスマス・イブの日に鳴るスマホのバイブ音は一瞬だけ私をときめかせた。

冷静になって、どうせメルマガか何かだろうと思って、でも少しだけ期待をしながらもスマホの画面を見ると『ガチナビ』という、ちょっと前に軽い気持ちで登録した求人サイトからのメールだった。


「クソがぁあっっっ!」


そうだ、そうだよ。

私みたいな魅力の何一つもないニート女がクリスマス・イブに「もしかしたら奇跡的にイケメン男子からデートの誘いの連絡がくるかも」と期待すること自体が間違っているんだ。

とは思いつつも、求人メールの内容は気になった。

もしかしたらラクに稼げる仕事の紹介メールかもしれないし……ふふ。

そんな儚い希望を抱きつつメールボックスを開いてみたら、予想を遥かに超えるような仕事の求人情報が記載されていた。


―――――――――――――――

【急募】


★魔法少女、大大大募集★


[時給1500円]


◎未経験者OK♪ 1から丁寧に教えますのでご安心ください!


◎交通費全額支給♪ 遠方だから……という心配はいりません!


◎完全シフト制♪ 週5日の中で弊社が状況に合わせてシフトを決めます!


※週休二日制

※各種保険完備


〈どんなお仕事?〉


脅威的な破壊力を持った悪の宇宙人集団【曼荼羅(まんだら)】から地球を守るお仕事ですっ!

アワアワ……

で〜も大丈夫♡

なんとッ、弊社では安心安全のスーパーコスチュームに超強力なスーパーアイテムをご用意しています!

ですので、曼荼羅のヤツらなんてイチコロ(のはず)です!


さぁ、あなたも一緒に魔法少女になって世界の平和を守りませんか?

ご応募お待ちしております〜☆。.:*・゜


[勤務開始日〜勤務終了日]


2026年1月1日から曼荼羅を完全壊滅する日まで。



魔法少女(株) 人事部

―――――――――――――――


なんじゃこら。

あまりにもふざけた内容に私は言葉を失った。

魔法少女? 曼荼羅? 世界の平和?

一体何なの、この求人……。

ふざけるなら、もっとマシな文章があるでしょうよ。

……。

……ま、いいや! 寝よ寝よ。

私はずっとずっとずーっとこの部屋に引きこもるの。

好きな漫画・アニメ・音楽にどっぷり浸かって、寝たい時に寝る!

これが私の人生。

仕方ないじゃん、パニック症なんだから。

仕方ないじゃん、外に出るのが怖いんだから。

仕方ない……じゃん……。

私の目からは自然と涙が零れ落ちていた。


* * *


遡ること、2025年10月18日。

とある宇宙要塞にて。


「どうだ、地球人の様子は?」


黒と赤の(まだら)模様のフードを被った男が隣にいたモヒカンの筋肉モリモリ男に、そう話しかけた。


「どうもこうも、平和まっしぐら全開的な感じでのうのうと過ごしてやがるぜ! ムカツクぜ! ぶほほほほ!」


筋肉モリモリ男は、はちきれんばかりのタンクトップを胸の力だけで引きちぎり、何故かヘドバンを始めた。

モヒカンが揺れている。


「そうか。だが……地球人よ。貴様等が平和な日常を満喫できるのも、あと僅かな時間だけだ……フフ」


フードの男は要塞の中心部に行き、柱に埋め込まれた菱形(ひしがた)の赤いダイヤモンドに手をかざす。


「曼荼羅の威力は……無限大だ」

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