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第17話 絶望と希望

2025年12月28日。

【曼荼羅】の宇宙要塞にて。


「自殺……? その雇用された3人の少女たちがか?」


伊吹貴は羅生の発言に驚きを隠せなかった。

それもそうである。

伊吹貴にとって[魔法少女株式会社]に採用された、愛野あいこ・佐倉のぞみ・飛鳥すずかは曼荼羅の人類滅亡と地球征服を阻止するための【魔法少女】という敵対する存在として認識していたからだ。

しかし、実際は違った。

羅生が言う。


「ああ、そうだ。彼女たちは現実世界で自殺を試みた。愛野がネットで自殺を志願する者を募い、心を病んでいた佐倉と飛鳥がその募いに乗っかった。そして……愛野が待ち合わせに指定した樹海で3人は落ち合った。その樹海には傷だらけの何年も使われていない白いワゴン車が停められてあったんだ。愛野はそのワゴン車の中で[硫化水素]を発生させて2人と共に命を絶とうとしたのだ。 ……で、実際に3人はワゴン車に乗り込んで事を起こしてしまったんだ」


そこで羅生の話に伊吹貴は疑問を持った。

何故、愛野あいこは自分一人だけで自殺する事を選ばなかったのだろうと。

何故、ネットで自殺志願者を募って佐倉のぞみと飛鳥すずかを巻き込んでしまったのかと。

伊吹貴の疑問に答えるように羅生は話を続けた。


「きっと、愛野は寂しかったんだろう。現実世界で愛野は親友だと思っていた者に裏切られたんだ。だから……命を絶つ最期の時くらいは孤独でいたくなかった。確かに彼女がネットで自殺志願者を募って実際に2人を巻き込んで自殺を行なったのは重い罪である事も確かだ。しかし、 愛野をそこまで追い詰めた現実を考えれば同情せずにはいられないのだ。周りの者がどう考えるかは分からないが、少なくとも私は彼女の残酷ともいえる行動を全否定はできない」


伊吹貴は頭の整理がつかないでいたが、どうしても気になる点が二つあった。


「羅生門ノ助よ。その話、にわかには信じがたいが……というか、その話を受け入れる事は今の俺にはかなり厳しいものだ。だが、仮にそれが真実なのだとしたら現実世界で起こった事はだいたい理解できた。ただ……お前が話した内容の中で二つ聞きたい事がある」


羅生は腕を組み「何でも聞け」と言った。


「じゃあまず、一つ目。愛野あいこ・佐倉のぞみ・飛鳥すずかは現実世界で自殺を行なったと聞いたが、彼女たちは……死んだのか?」


伊吹貴の質問に羅生は黙ってしまったが、少し間を置いて答えた。


「……死んではいない。硫化水素を発生させた数分後にたまたま通りかかった村の者が白いワゴン車から異臭がするのに気付き、ワゴン車の中で倒れている3人を発見して救急車を呼んだんだ。すぐに3人とも病院に運ばれたが意識不明の重体だった。だが、彼女たちは何とか生きてはいる……」


すかさず伊吹貴は言った。


「じゃあ、少なくとも現実世界では彼女たちは命を落としてはいない……という事だな? 」


「ああ、その通りだ」


羅生の返事に伊吹貴は二つ目の質問を投げかけた。


「では、二つ目に聞きたい事なんだが……いま我々がいるこの世界は何のために存在しているんだ?」


「それはだな、少しややこしい話になるんだが……正直のところ具体的な事は分かっていないのだ。100%理解してはいない。そう、かくいう私も実はこの造られた世界の住人であって、お前たちと同様に現実世界には存在していないのだ。というか……私だけではなく、魔法少女株式会社で働く者すべてが現実世界では存在していない。じゃあ何故、この世界は造られたのか? これは私の想像でしかないのだが、彼女たち3人……愛野あいこ・佐倉のぞみ・飛鳥すずかは本当は心の底では〈生きたかった〉のではないのか、と。しかし、精神的な弱さや自分自身が置かれていた環境に耐えきられなくなって自ら命を絶つ事を選んでしまった。きっと、無念だっただろう。3人とも形は違えど、それぞれ将来に夢や希望を持っていたみたいだからな。そして、もう……これこそ超絶的に私の想像に過ぎないんだが、いま我々がいるこの世界は彼女たちの微かな『生きたい』という意志から造り出されたものではないかと思うのだよ」


伊吹貴は「なるほどな」という感じで羅生の話を聞いていたが、また一つ疑問が頭に浮かび上がった。

伊吹貴が言う。


「羅生門ノ助よ。どうして彼女たち3人の事やこの世界が造られたものである事、そして……お前を含め魔法少女株式会社の者たちと曼荼羅の我々が現実世界には存在しないって事を知っているんだ? 俺はお前から話を聞くまでは全くもって知らなかったぞ。普通に人類滅亡させて、地球を征服してワッショイワッショイするつもりだったんだ」


羅生は「ふぅ……」と、一つ溜息をついてから答えた。


「それは伊吹貴、やはり私も完全には理解していないのだ。いつの間にか知っていたという感じだ。私の記憶も造られたものだからな。それに、想像の範囲のところでもある……。多分これも仕組まれたものなのだろう。だがな、これだけははっきりと言える。この造られた世界に存在する魔法少女株式会社や曼荼羅という組織、存在している我々の考え・行動は全て彼女たち3人を救う事に繋がっていると」


伊吹貴は鋭い目付きを羅生に向けて言った。


「何故……そう断言出来るんだ?」


「断言出来るもんは断言出来るんだ」


「いやそれ、答えになってないぞ」


伊吹貴はめちゃめちゃ困ってしまった。

羅生から様々な事実を知らされた事によって、どういうモチベーションで……これからどう動いていけばいいのかが全くもって分からなくなってしまったからだ――

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