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第9話 会社説明会⑤

2025年12月26日 14時30分。

魔法少女株式会社、会社説明会の会場にて。


羅生門ノ助……社長のキャラの変貌ぶりには正直めちゃめちゃ驚いたし、とても腹が立ったけど、私は「魔法少女として働く」と覚悟を決めてココに来たんだ。

だから、黙って説明を聞く事にする。


「君たち3人はこれから『魔法少女』になる。……では、どうしたら魔法少女になれると思うかね?」


私含め、のぞみんもりんりんも「どうしたら魔法少女になれるか」だなんて分かるわけがないので返答に困る。


「やれやれ、これだから最近の若者は……。気合いだよ気合い。気合いで魔法少女になるんだ」


え、何言ってんのコイツ。

気合いなんかで魔法少女になれるわけないじゃん。

ホント意味わかんない。


「……なーんてな! 今のは冗談だ。気合いなんかで魔法少女になれるワケないだろ。少し考えたら分かる事だろう。いいか、もう一度だけチャンスをやる。さて、どうしたら魔法少女になれると思うかね?」


いやいやいやいや、冗談なんていらないから!

全然笑えないし、他の2人も呆然としてるし!

っていうか、この空気ありえないし!

私はもう我慢の限界まできていたので言った。


「全くもってわかりません。どうすれば魔法少女になれるのか教えて下さい」


「うむ、分かった。無知な君たちにしっかりと教えてやろう。どうしたら魔法少女になれるかをな。 それはだな……」


社長は一瞬だけ「ぐふふっ」と気持ち悪く笑うと言った。


「気合いだ」


殴ろうかな。

もう殴っていいよね、この社長。

殴られるに値するよね、この社長。


「……なーんてな、冗談だ。めちゃ面白いだろ? まさか二回も気合いが来るとは思ってなかっただろ? お笑い界隈ではこれを『天丼』っていうんだ。あ、これメモな」


このありえない空気に危機感を感じたのか、月野さんが社長に近づいて行き、耳元で小声で呟いた。


「一万円なしにしますよ」


それを聞いた社長は瞬速で地面にひれ伏し、土下座をして言った。


「ごめんなさい、ちゃんと話します! ちゃんと説明します! ごめんなさい! だから一万円なしにしないで! お願い! 一生のお願いっ!」


あぁ、なんて情けない社長なんだろう……。

プライドの欠けらがこれっぽっちも無い。

真剣に考える。

この会社に入って本当によかったのか、と。


「さて、羅生様。 時間ももうあまり有りませんのでご説明をお願い致します」


「うん! 説明するね! だから一万円なしにしないでね!」


「なしにしませんので、早くご説明を」


「わかった!」


社長は立ち上がると、再び背筋を伸ばし腕を組んで話し始めた。


「さて、どうしたら君たち3人が魔法少女になれるか。それはだな……錠剤を飲むんだ」


……錠剤?

まさかの錠剤に私たちは驚きを隠せなかった。

そして、のぞみんが言った。


「あのー! 錠剤ってどんな錠剤ですか! 危ないクスリとかじゃないですよね!?」


社長は「うむ」と頷き、ポケットに手を突っ込んでピンク色の錠剤らしき物を取り出して私たちに見せた。

取り出す時にくしゃくしゃになった馬券が地面にヒラヒラと落ちたが、それには敢えて誰も触れなかった。


「この錠剤は『マジカルンEX』といってな、これを飲むと6時間くらい魔法少女になれるんだ。すごいだろ」


マジカルンEX。

……確かに魔法少女になれるのはすごいけど、「6時間くらい」ってなんかテキトーだな。


「つまりだ、【曼荼羅】の敵が来襲してきたら『マジカルンEX』を飲んで6時間以内に倒さなければならないって事だ。ちんたらしてたら魔法少女じゃなくなってしまい、一般ピーポーになってしまうぞ。だからせいぜい頑張れ」


社長の言葉にはいちいちイラつくけど、それより魔法少女でいられるのに制限時間がつくという事に不安を感じられずにはいられなかった。

ずっと黙っていたりんりんが社長に質問する。


「あの、ウチ……抗うつ薬のルボックスを飲んでるんですけど……マジカルンEXとの飲み合わせは大丈夫なんでしょうか?」


りんりんちゃん、精神疾患持ちだったんだ……。

確かにそれは私も心配だ。

私もパキシル飲んでるからとても気になる。

そして、のぞみんも割って入って言った。


「あたしもラミクタール飲んでるから、めちゃ気になるー! 大丈夫なの社長さん!?」


え。

のぞみん、こんなに明るい子なのに。

……というか私たち3人ともみんな精神疾患持ちなの?

私は何か、心がざわつくのを感じた。


「その点は大丈夫だ。マジカルンEXと抗うつ薬を飲み合わせても、なんの副作用もない。マジカルンEXは弊社に所属する薬剤師が研究に研究を重ねて作りだした安心安全のスーパー錠剤なのだよ。まさにマジカルな錠剤だ。だから安心したまえ……あ、これもメモれよ」


そっか……それなら安心だ。

でもどうして、抗うつ薬との飲み合わせを考慮してマジカルンEXは作られたんだろう。

何か引っかかる。


「では、続いてシフトに関してだが……」


社長はなんともない感じで業務内容や給与に関する事などの説明を進めたが、私は『私含め3人とも精神疾患持ち』『抗うつ薬との飲み合わせを考慮して作られたマジカルンEX』の事が気になって社長の話に全く集中できなかった。

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