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転生した元大賢者が、家を出るまでのお話  作者: ぐまうす


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「ここまで来たら、明日中には着くな」

「今回の旅は本当に色々あったわね、今までで一番よ本当に」

 エル先生のしみじみと、そしてとても感情のこもった一言を言った。

「あたい的には大収穫だったねー」

「私も」

「確かに私も得るものは多かったんだけど、それ以上に疲れたわ」

「体力無いなー巫女様はー」

 梟が器用に肩をすくませて言った。

「大半があんたのせいよ!」

 攻撃魔法を撃つが、ヴィオーラは身動ぎすらせず、全て防いだ。

「何がダメなのかしら……」

「だから教えてあげるってー」

「いいえ、まだ私には気付いていない何かがあるのは確かだし、考えることも修行の内だわ、淫魔の教えなんかいらないわよ」

「強情だなーもう。諦めて楽になりなよう」

「そろそろ飯作る用意するぞー」

 いそいそと野宿の用意をしていた引率リーダーが言った。

 夕食を終えて一息ついた頃、ラルフ先生が珍しく真剣な表情になって僕に向き合った。

「アル、二つほど頼みがあるんだが」

「一国民としては、平和に暮らしたいですよね?」

 二つの内一つは分からないが、もう一つは察しがついたのでばっさりといく。

「話くらい聞いてくれ」

「聞かなくても何を言うか分かりましたからね、ばっさり言った方が後腐れないかなと」

「どうせ、何かあるわけじゃないんだ、仲間になってくれたっていいだろう」

「勇者パーティじゃなければ、仲間になるのは問題なかったんですけどね。まあ、魔封具師としては手伝いますからそれでいいじゃないですか」

 惜しみない接客スマイルを見せる。

「それに、先生方って誰かが集めたわけじゃなくて、偶然に集まったんですよね?」

「そうだが?」

「勇者と巫女とエルフの姫君と元王族のドワーフが偶然に出会ってパーティ組むとか、運命の悪戯にも程があります。将来的にとんでもない何かに巻き込まれそうじゃないですか」

「それを言うなよ……。俺もちょっとそんな気がしてんだから」

「ほらー」

「でも、力を持っているならいずれ何かに巻き込まれるんじゃないかしら?」

「力ですか、魔法資質ゼロの肩書きを舐めてもらったら困りますね。先生方以外で僕に力があると思っている人間はいません。魔封具がありますからね自衛程度の力ならあっても不思議じゃないですし」

「そうだったわね。邪竜すら倒せるのに」

「こう言ってはアレですが、先生方の成長の切っ掛けと極上の素材を上げたんですから、前世が賢者の者としては、十分な働きをしたと思うんですが」

「うっ、そうだよな。一生をかけても手に入れれるか分からない物もらってるんだよなぁ」

「まー、いい儲け話があれば手伝いますよ」

 ここら辺が妥協点かな。

「分かった」

「で、もう一つというのは?」

「家を出る時にサーシャを連れて行ってやってくれ」

「どういうことです?」

「あいつには、あの屋敷で味方がいないんだ」

「そうなんですか?」

「ほんとに屋敷に興味ないよな、お前」

「関わりあうことが無いですからね」

「はぁ……まあいい。あいつはお前付きになっていじめられていてな」

「そんなことを父さんが許すはずが……」

「いわゆるガス抜きって奴だな。それにお前は上手く逃げ回ってたらしいからな、妾の子が自身のメイドに命じてやらせてたみたいだな。肉体的に傷つけるのは不味いのは分かってはいたから、仕事を押し付けるとか、精神的に追い詰めるとかな」

「ああ、だから僕の所に来るのが、朝と夜の挨拶と食事の時にだったのか」

「おそらくだが、お前が出て行った後もそれは変わることはないはずだ。今はお前を弟のように思って耐えているが、心の支えが無くなればどうなるか分からない」

「面倒なことになってたなぁ。まあ、死ぬことはないですよ、ただ壊れるでしょうけど」

「どういう意味?」

「それはサーシャさんに会って頭でも調べてください、エル先生なら分かるでしょう」

「……待って、そういうことしているの貴方のお父様は」

「僕含め、あの屋敷にいる人間全員そうですよ」

「貴方が、妙に父親の言うことに従うと思ったら」

「一応掛かってる振りをしてるんですけどね。ただ前世の記憶が戻る前に掛けられたのでモノ自体は僕の中にあります」

「そう」

「どういうこと?」

「あとで説明するわ」

「まあ、サーシャさんにもお世話になってることですしね、家から連れ出す件は屋敷に帰ったら父さんに聞いてみましょう。最終的には本人次第ですが」

「連れ出した後のフォローはちゃんとする」

「それならちょっと頼みが」

「おう、早速なんだ?」

「家を出た後の生活費を得る為に、コレクションから金目の物を持ってきたんですが、いい換金屋がないかと思って、あと相場が分からないので着いてきてほしいなと」

「ああ、それぐらい付き合うぜ。ちなみにどんなのを持ってきたんだ?」

 荷物から袋を取り出して、中身を見せる。

「この中でこれが一番の目玉ですね」

 古代王国の貨幣を取り出すと、先生方が一気にその場から離れた。

「あれ、どうしたんです?」

「お前それどうしたんだ?」

「え? これだけ最奥のコレクションなんですけど、素材が珍しいだけの唯の古代の貨幣ですが、高く売れるかなって持ってきたんですけど……」

「そうか、時代的には死んだ後だからな」

「ヴィオーラも何か含みがある言い方をしていたんですが、何かあったのですか?」

「いやな、それ一枚で大きな都市が一つ滅ぶってことがあってな、それからその貨幣は呪われた貨幣って言われてるんだよ」

「呪われたって……、むしろは白金ですからはじ――」

「そんなことはいいから、袋に入れてくれ」

 袋の中に入れて紐で袋を締める。

「いや、すまないな。都市一つ滅ぼす程の魔性の魅力があるって言われているからな、実際に滅んでいるわけだし、最低限の警戒をしないといけないからな」

 先生方を見る限り、これは売れないな、一番高く売れそうなのに。

 まあ、別の用途としても持ち出しかたら、無駄ではないのだが。


 予定通り翌日にサーシャさんが待っている町に着いた。

 道すがら、とりあえず今日は合流してそのまま疲れをとり、明日は旅の買出しをして明後日に出発するということになった。

 サーシャさんがいる宿に着くと、受付の近くにある食堂の入り口からサーシャさんが駆け寄ってきて、抱きつかれた。

「えーっと、ただいま戻りました」

「お帰りなさいませ」

 確か弟扱いだったか、まあ、危険と言われている所に行ったのだ、このぐらい心配されていたのも当たり前か。

「サーシャさん、今凄く汚いので離れてください。荷物を置いたら、お風呂に入って着替えてきますので」

「失礼しました」

 サーシャさんはパッと離れる。

「それでは、私は食堂でお待ちしております。皆様ごゆるりと旅の疲れをおとりくださいませ」

 そう言ってサーシャさんは食堂に入って行った。

「ふぅ」

「ん? どうした?」

「いえ、正直、乗り切れないところがあったんですよね」

「なんに?」

「サーシャさんを屋敷から連れ出すって話です」

「もうちょっと人を気に掛けてやったらどうだ、身近な人間ぐらいは」

「まー、ウィリアル君がそうなっても仕方が無いって」

「どういうことだ?」

「当時は老いたから何も湧かないって言っていたけど、大賢者としては魔法使いとしても大人数の弟子を、そう言えないような子もいたけど、数十人規模でいて、その全員が大賢者の称号を剥奪された直後に出て行ったんだから」

「ああ、人見知りじゃなくて人間不信だったんだ、ウィーは。そういえば、あたい達の中で一番早く打ち解けたのがあたいで最後にラルフとエルだっけ」

「根は単純だから、陥落させるのは案外簡単なんだけど、状況が状況であんまり関われなかったみたいだねー、あのメイドさん」

「……どうだっていいじゃないですか」

 面倒臭そうな流れになってきたので、さっさと荷物を置きに行く。

 風呂から上がり、食堂に向かう。

 サーシャさんの姿が見えなかったが、梟が大きいテーブルの上に座り占領していたので、そのテーブルの席に座る。

「君は何をやっているんだ」

「席を確保してあげたのに、酷くなーい?」

「はいはい、ありがとう」

 とりあえず、水を貰おうと厨房に向かって声を上げると、中からサーシャさんが出てきた。

「何やっているのですか?」

「あまりすることが無かったので、ウィリアル様たちが戻ってくるまでの間という契約で働いていました」

 うーん、これがワーカーホリックというヤツか。

「ところでこの梟は?」

「ああ、大渓谷で出会って意気投合したので、使い魔にしました」

 梟が一鳴きする。

「そうなんですか」

 サーシャさんは良かったねと言いながら優しく撫でる。

「それで、ご注文ですか?」

「水が一杯ほしくて」

「はい、すぐお持ちしますね」

 サーシャさんは厨房に戻る。

「なかなか良い子じゃない、これは頑張って屋敷から解放してあげないと。ウィリアル君はどうやってお父さんを説得するのさー?」

「普通に買い取りですよ?」

「さすがにちょっと引いたワー」

「とりあえず、ヴィオーラは金目の物を送ってきて、ここら辺の質屋とか古物商とか全部潰す感じで」

「手段はともかく、本気で助けようとしているのはいいことだねー、明日までには用意するね」

「いや、屋敷のある街の方が高く売れると思うから、その時までにお願い、明日は今の手持ち分だけ売りに行くから、それを選別の参考にして」

「りょーかいー」

「お、もう来てたのか、アル」

「はい」

「お水をお持ちしました」

「あ、麦酒の注文を頼む、ってサーシャ何してるんだ……」

「暇だったから働いてるそうです」

「そ、そうか、まあ何も無いからなここら辺は」

「あたいは蜂蜜酒ね」

「私も」

「私は葡萄酒をお願いね」

 いつの間にやら女性陣も来ていた。

 飲み物が揃ったところで、先生方は乾杯をする。

「なんだかんだで、無事に終わりそうでよかったわ」

「そもそもが何か起こりようの無い案件だったからねー」

「むしろここまでの帰路の途中が一番面倒だったからなぁ」

「そうだったんですか?」

 サーシャさんが料理を運んできた。

「邪竜討伐の軍と会っちゃってねー」

「そう、なんですか?」

「それでちょっと小言言われたのさー」

「えっと、戦乙女様とは」

「会っちゃったよー、サーちゃんは戦乙女様ファン?」

「……いえ、別に」

 サーシャさんには珍しく棘がある感じの声で返した。

「ウィリアル様もお会いになったんですか?」

「うん、大分面倒臭い人だった」

「何を言っていましたか?」

「なんでも僕の元婚約者の友達とかなんとか」

「……そうですか。お飲み物のおかわりを持ってきますね」

 僕の受け答えに何を思ったのかは分からないが、一人飲み込んで厨房に戻っていった。

 明日以降の予定をサーシャさんに伝えて、今日一杯のでサーシャさんの短期ウェイトレスを終えることになったが、店主といつの間にか出来ていたらしいファンクラブとの壮絶な戦いを何故かラルフ先生が繰り広げたが、いやぁ面白かった。

 翌日は、買出しをしに町を歩き回る。

 質屋で普通に鴨にされそうになったが、ギャリー先生のお陰でいい値段で買い取ってもらえた。

 そして三日目、朝食を食べてすぐに町を出た。

 行きと同様に何も起きることなく、平和な旅路を進み、屋敷に帰ることが出来た。

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