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転生した元大賢者が、家を出るまでのお話  作者: ぐまうす


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「何です、あの人?」

「まあ、悪い人じゃないのは確かなんだが、自分が決めた目標に突っ走る人でもあってな」

「はあ? まあとりあえず、ヴィオーラ見たら大体分かるから適当に誤魔化してくれ」

 ヴィオーラは梟の鳴き声で応えた。

 すぐに戻ってきた。

 やはりあの水晶球だった。

 まあ、これで納得してくれるのなら付き合うしかない。

 置かれた判定道具に手を乗せる。

 ギルドで見た結果が現れる。

 いいと言われるまで手を置き続ける。

「どういうことですか……?」

 困惑する戦乙女様。

「だから言いましたよね、きちんと調べたって。こう言ってはなんですが、戦乙女様が知っていることを、ギルドの職員が知らないわけないじゃないですか」

「じゃあ、無詠唱魔法は絶対に使えない?」

「そうですね。全くの安定性が無いので構成ができません」

「……っ」

「満足しました? 先程ラルフ先生が言ったように、明日が早いのでもう戻ってもらっていいですかね」

「失礼しました」

 戦乙女様は出て行った。

「人払い張ったから、もう今日は誰も来ないはずだよ、ウィリアル君」

「ありがとう、ヴィオーラ」

「それにしても、無詠唱が使えない理由が五元素なんて、なんだかんだ持ってるよね」

「ラルフ先生じゃないんだから、やめてほしい」

「おい」

「もう、寝よーよ?」

 ギャリー先生の提案に全員頷く。

「じゃあ、夢魔らしくみんなを夢の世界にご招待、明日何時に起きたいですか? 起こしてあげましょう」

「嫌な予感がするから、陽が昇る一時間前にしてくれ」

「オッケー。じゃあ、おやすみ」

 梟の一鳴きで、僕達は眠りに落ちた。


 まだ暗い時間に起きて、僕達は旅立ちの用意を終えて魔法を駆使して、夜逃げのように野営地を後にする。

「ちょっと遠回りするぞ。あと、靴の魔封具全力で使え」

「勇者ってそんなに勘がいいのですか?」

「ウィーは前世では勇者はいなかったの?」

「いえ、接点はあったんですか、若いのに任せてました」

「若いのって、いやまあ若いのでいいのか……。そういえばウィーの前世の立ち位置っていうか身分? 何をしていたかよくわかんないだよねー」

「あれ、フィーン先生から聞いてないんですか?」

「いえ、言いたくないのかなと、話してない。私も聞いただけど晩年が晩年だし」

「んー、じゃあ、ボクが夕食の肴としてご主人の話をしてあげよう」

「何故、君がするの?」

「じゃあ、ウィリアル君がする?」

「いや、まあ任せます」

「オッケー。あと、ボクの勘だけどこのままいけば、勇者に感知されると思うからさらに西に行ったほうがいいよー」

「マジか」

「フィちゃん、ちょっと本気出して遠見の魔法で見てみてー、普通の遠見魔法ならまだ遠いけど光魔法と鏡魔法の応用でいけるから」

「どうやって?」

「ヴィオーラの世界とこっちじゃ使いかたが違うのですから、せめて呪文を提示してやってください」

「じゃ、ウィリアル君頼んだー」

「全く」

 即興だが呪文を考え出して、フィーン先生に伝えた。

「約二キロ先に移動する集団がいる」

「そんな遠くが分かるのか?」

「即興だからちゃんとは見えないけど、間違いないはず」

「じゃあ俺達の位置がここで、野営地があそこだったから、よし言われた通りここから西にずれながら二キロ離れる」

「なんで私は勇者一行から逃げるように移動してるのかしら?」

「会いたいか?」

「会いたくはないのよね」

 エル先生すらと思ったが、勇者王子がとんでもないわけじゃなくて、ただ単に他の先生方に毒されただけじゃないだろうか、ふと疑問が浮かんだ。

 全力の疾走は昼過ぎまで続き、夕方までには本来予定していた行程の1・5倍の距離を進むことが出来た。

「さて今日はここで野宿するぞー」

「はーい」

 テキパキと夕食を準備した。

「じゃあ、ちょっとした昔話始まりはじまりー」

 本当に夕食の肴として話し始めた。

「ちょっとした小話にしかならないんだけどねー」

「まあなぁ」

 僕は同意する。

「とりあえず、ギャーちゃんの疑問、ウィリアル君の前世は何をしていたのか。ずばり、全盛期と言っても過言じゃない頃は、大賢者してました」

「本当に?」

「おっとー、アクマウソツカナイ」

「なんて嘘くさい」

 エル先生は胡散臭そうに見る。

「本当」

 フィーン先生が肯定する。

「そうなんだ、でも三百年前っていうと五大賢者だと思うけど、その一人? でもなんか……」

「違う?」

「うん」

「それはね、一時期六大賢者だったからよー」

「六人?!」

「驚きすぎー、まー今は一人もいないもんね」

「へえ、今いないんですね」

「お前、魔法の研究をしてた割には知らないんだな」

「知識とは積み重ねなんです。最新の知識をきちんと理解するためには一から順に追っていくのが一番ですよ。だから最先端の人は逆によく知らないんですよね」

「それが何故五人しか伝わってないのか。まあ、途中で除名されたんだよねー、誰でも出来る無詠唱魔法が使えなかったからね、しょうがなかったことではあるんだけど。大賢者の除名は前代未聞だったから、最初からいなかったことにしたって訳だね、以上! イエーイ!」

 ついヴィオーラのテンションにノッて梟の羽とハイタッチしてしまった。

「それだけかよ」

「知りたいことは知れたでしょ」

「まあ、そうだが、何か面白い話はないのかよ」

「そうだねぇ……、じゃあご主人すら知らない話をしようか。ちょっとだけハーレム君たちにも関わりがある」

「僕でも?」

「そー、ウィリアル君は何故今は大賢者がいないか分かる?」

「いない時期なんてよくあることで、今いないなんて不思議なことじゃないでしょ」

「ほう、じゃあ五大賢者の後に何人の大賢者がいたか分かるかなー?」

「何人?」

 そういえば、色々と調べたけど大賢者とされた名前を見てないような?

「五大賢者より後は一人も大賢者の称号を得てないんだよねー」

「三百年間で一人も?」

 いくらなんでも一人もいなかったというのはおかしい。

「ぶっちゃけ、ご主人のせいなんだけどね」

「僕のせいって、無詠唱が使えない無能がまかり間違って大賢者の称号を得てしまったから、基準が厳しくなったとか?」

「おしい! でも、厳しくなったのはそう、今賢者は何人かいるけど、ボクが知る限り三人は大賢者になれる実力はあるよー」

「そうなのか?」

「ハーレム君も知ってる人間だよ」

「というと、あの三人か」

「そう、勇者パーティ上位三組に一人ずついる賢者達だよ」

 いやぁなんかその三人に悪いことをしたなぁ。

「で、その厳しくなった理由ってのはなんなんだ?」

「お、興味湧いてきたかな、ハーレム君」

「アルのせいなんだ、予想の斜め上をいってそうだからな」

「よくわかってる、それがねー。大賢者って国から仕事を依頼されるんだけどさ、ご主人ってお金欲しさに、他の大賢者の依頼を幾つか回してもらってたんだよね。研究に集中させたほうが国の為になるとか言って、依頼の内容もピンキリだったからね。簡単なものを自分に集中させたの」

「ウィー……」

 だって、欲しい素材とか凄い高かったから、弟子の生活を考えると全然足りなかったんだもん。

「で、それが問題になったのが、ご主人が大賢者を除名されてからでね」

「僕が?」

「普通に仕事が回らなくなったんだよねー」

「確かに暇な僕に簡単な依頼を回してもらってたけど、五大賢者なら問題なく完遂できるものばかりだったはずだけど」

「それは、ボク達のせいだったりする」

「ボク達? 十二人の使い魔達ってこと?」

「そう! 国からの依頼って国家機密から貴族の相談事みたいなのまであって、ご主人は魔法のごり押しで解決できそうなもの以外で苦手なのは、ボク達にさせていたんだよね。で、ご主人は国からの依頼の中で依頼人が個人的に仕事をくれたら報酬を貰っていいって言ってねー。まー何体か張りきってねー」

「なるほどな、アルの使い魔が受けていた私的な依頼を、五大賢者にも求めたってことか」

「そーいうこと、大賢者除名になった老人の使い魔に出来てたことを、他の大賢者が出来ないなんて、言えるわけないよね。瞬く間にパンクしてねー。またご主人に依頼できるように国家機密を扱わせる為に、ご主人をせめて賢者に戻そうって話が上がったぐらいらしいよ。でもその頃にはご主人は殆ど人との接触を断って悠々自適の隠居暮らしをしてたから、実現しなかったけど」

「本当にその話は知らないんだけど、どっから拾ってきてたの?」

「外の情報を全く知らないっていうのは危ないからねー、使い魔放ったり、たまに召喚された時に、色々と情報収集してたんだー皆で」

 知らないところで、ありがたいことだ。

「それで結局、大賢者に依頼出来るのは国だけってなったんだけど、ここからがちょっと面白いことがあってね。国の依頼でも大したことのない物や貴族の私的な依頼を民間に回すようになって、ある男がそれを片っ端から受けるようになったんだよ。自分に集中しやすいように根回ししながら。腕は良かったから思惑通りに集中したんだけど、当然個人で回せる量じゃなかった。だから、それを人にさせることにしたの、少しだけ中抜きしてね」

「下請けを作ったわけか」

「まあ、そうかな。始めは男が達成できそうな人物に頼んでいたんだけど、段々と逆に男に依頼を貰いに来る人が多くなっていったんだ。国やら貴族様やらの依頼だからね報酬はよかったから、男が少し抜いたくらいでも、それなりに大金だったのさー。依頼を貰いに来る人数が増え始めると民間からも依頼を受けるようにしてね。何でも屋といえば、その男のことを指す言葉になったくらいさ」

「その話の落ちがわかった」

 さすが長寿、フィーン先生はヴィオーラが話していることについて察しがついたらしい。

「ふふっ。男は仕事を他人に振るようになってからも依頼をこなしていたわけさ、難易度が高いのは達成できる人間が限られてくるからね。だからワクワクするような話も一杯持っててね、好奇心旺盛な子供が話をせがんだりしてね、こう感想を言うわけさ、まるで御伽噺の冒険のようだと」

 残りの先生方も察したらしい、僕も大体わかった。

「何でも屋じゃ格好がつかないと思ってたらしいからねー、こう名乗るようになったらしいよ冒険者って」

「じゃあ、冒険者の発端ってウィーだったってこと?」

「発端の発端って感じかな?」

「その男性は全部狙ってしたのでしょうね。凄いなー僕には出来ないな」

「まあ流石に順調にとはいかなかったけどね、やっぱり資金面で苦労したらしいよ。だから、面白いことやってるなって思って、ボクが資金援助したんだーコレクションの財宝を使って」

「待った、この話ってまだ前世の僕が辛うじて生きてた頃だよね?」

「いいじゃん、気付かないくらいの量ぐらい、どうせご主人は使わなかったものなんだし物は使ってなんぼじゃん」

 まあ、そう言われるとそうだ。

 だけどやっぱり許可ぐらいはとって欲しかったなぁ。

「俺、職業的に凄いことを聞いた気がするんだが」

「何事にも始まりはあるのだし、それに関わっていた長寿種がいてもおかしくないから、まあ気にしたら負けよ、ラル」

 気にしたら負けとは、ラルフ先生に言っているのだろうか、それとも自身だろうか。

 ただ何故か乾いた笑い声が出ている。

「それでね、話を戻すんだけど。ご主人が出来ていたことをすぐに出来なくなった五大賢者の実力に疑問の声があがったんだー。まあ、ご主人のせいでブラック化してただけだし、本来の仕事としては問題なかったし、その他にも功績は沢山あったから、降格ってことにはならなかったんだけど、大賢者になる条件は厳しくなったのさー、大雑把にいうと五大賢者同等の研究成果を出すか、もしくはご主人と同じことが出来るのかっていう感じで」

「ああ、あの達成しなきゃいけない条件数に対して、期間が短い理由がそれだったんだ」

 エル先生は大賢者になるための条件をみたことがあるらしい。

「というか、あれだけの数をこなしてたの、ウィー君は」

「ヴィオーラが言っていたように、使い魔と分担してたから出来てただけですけどね」

「使い魔の使役も実力の一つよ十二体も使い魔がいること自体凄いことなんだから」

「ですかね?」

 困った子供を見るような目で溜息をはかれた。

 数日後、翌日には町に辿り着ける所まで来た。

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