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転生した元大賢者が、家を出るまでのお話  作者: ぐまうす


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「驚くと思いますよ」

「ほう」

「ご主人持って来たわよー。ただどちらか分からなかったから二個持ってきたよ」

「二個?!」

「ああ、最初は普通に一個だったんですが、店主に気に入られて秘蔵のメダルをくれたんですよ」

「へぇ、それにしても、三百年前に人気の王族いたっけかなぁ」

「とりあえず見てください、必ず気に入りますよ」

「へぇ……、って、げっ、これは……」

「あ、それは元々貰った方ですね」

「どの王族かと思えば、そっかーまあ確かにウィーのこと気に入りそうだわ。でも、秘蔵って誰のだろ」

 二個目を見た瞬間ギャリー先生は崩れ落ちた。

「ギャリー!」

 驚いたエル先生が駆け寄る。

「ウィー、あたいが作った物今後一生タダで良いよ……」

「馬鹿な……、実は俺達の中で一番金にがめついギャリーが、タダでいいだと」

「お金が大事なのは当たり前、この世全てはタダじゃないんだから、お金は一杯かかるの」

「ならどうした?」

「これは、七人の王とは別に最も偉大なるドワーフが作った物なの!」

「七人の王以外というと、我らが園について行ったっていう」

「そう! エルフの王子と友情を築きドワーフで唯一悠久を生きたエルフが行くという神々がおわす園に行ったの。でも一番凄いのがエルフの技術と魔法を全て習得したことなんだよ」

「普通、凄さの順が逆」

「そこはドワーフとエルフの違いさ、フィーン。でね、古い考えのドワーフには、あんまり良く思われてないんだけど、一番の職人は誰かって聞いたら、そのドワーフになるの」

 うふふふ、とギャリー先生はメダルに頬ずりする。

「にしても、ウィーの前世が、ばか親父のお客だったとはねー」

「えっ、そうなんですか?」

「うちはちょっと縁があって、このドワーフのメダルは幾つか所蔵してたらしんだけどねー。歴代当主がたまに気に入った人物にあげてたそうなんだ。、ばか親父の代で残りが一個になったんだよ。それで、子供の頃にばか親父は元々自分用に一個確保して所持してたから、あたいも欲しいと言ったら、大分昔に酒の席で人間に最後の一個あげちゃったから無い、てへ、とか言ってね、あたいのばか親父の評価は地下深くに落ちたね。じいちゃんも確保してたけど、どんなにねだってもくれなかったんだよねー……」

 黄昏てそうな言い方で頬ずりを止めないギャリー先生に恐怖を感じる。

「ま、まぁこれで、全員に行き渡ったわね」

 ヴァイオレットがうんうんと頷く。

「予想外の出来事で時間が切れたけど間に合ったので良しとしましょう。ボクのコレクションの一部を元ご主人の横暴でやることになって、実は殆どやけだったけど」

 さりげなく自分の物にしようとする。

「時間切れ?」

 エル先生が聞く。

「ほらさっきハーレム君助けたじゃない? あれで力使い果たしたのよ」

「そうなのか?!」

「正確には仮契約によるこの世界における体の力だね」

 うっすらと透け始める。

「皆ごめん、殴れなかったよ……」

 悲壮感漂わせながら、チラッチラッと僕を見る。

「ちゃんと分かってますって」

「どういうこと?」

 少し時間が無いので、先にやらなければいけなことを優先する。

 魔力で魔法陣を描く。

『いと貴き者よ、我と契約を望む』

「オッケー」

「相変わらず、軽いですよね」

「じゃあ、契約の証ね」

 そう言われて口付けされる。

 ヴァイオレットと縁が結ばれたのが分かる。

「ナニシテルノっ?!」

 いきなりのことにギャリー先生が驚きの声を上げた。

「縁を強固にするために、接触するのは当たり前じゃーん」

「そうなの?」

「そうよ、触るだけでいいけど、口付けじゃなくても」

 エル先生が補足すると、すっごい目でギャリー先生はヴァイオレットを見る。

「さっきの悲壮感はなんだったのよ」

「契約前のイベントだよ、やっぱり何か演出があったほうが雰囲気でるじゃん?」

「ああ、そうねー」

 エル先生は呆れる。

「それで、一応聞きますけど名前は前のままでいいんですか」

「そうだねー、ヴァイオレットは前世のご主人との物だし、ウィリアル君とボクは契約したんだし変えようかな。えーと……、今回はヴィオーラと呼んでちょうだい」

「わかりました、ヴィオーラよろしくお願いします」

「よろよろねー」

「それで、早速ですが」

「人使い荒いよねー」

「幾つかありますが、一つめはここの管理をお願いします」

「お、ついて行かなくていいの?」

「ここからでも、来ることが出来ますからね」

「位置転移とか出来るの?」

「さっきやって見せたじゃん」

 そういえば、と思い出していた。

「見れる範囲なら、どこにでも行けるよー。っていうことで、はいこれ」

 ヴィオーラは梟を作り出した。

「繋がりを重要視したから、これね。その子が見聞した物はボクも見聞きするし」

「こんにちは」

 梟からヴィオーラの声が出た。

「時間のずれ無しに会話も出来るからー。万が一、ボクとの繋がりが切れても消えることはないよー」

「それから次に、先生方と仮契約してください」

「そんなふしだらなこと頼むなんて、転生して大胆になったね?!」

「ウィー?」

 何やらギャリー先生が怖い。

「ヴィオーラの冗談です。まあ、あんまりいいことじゃないらしいですけどね」

「それでそれをさせる理由は?」

「簡単ですよ、今日先生方に送ったものを持ち歩けないでしょう。だから、必要になったら、もしくはヴィオーラが渡しても大丈夫だと判断したら、渡せるようにするためです。僕に頼まないと受け取れないっていうのは不便ですからね」

「それでも、私はしないから、流石に魔族と魔力が仮だとしても繋がっているのは不味いもの」

 エル先生は拒否した。

「なら、ボクから幾つか条件出すから、それをクリア出来たっていうのを確認できる状態になったら、他の皆経由で教えてよ」

「そうなると俺はどうしようかね、ってまあいいか」

「ラル、貴方もしないほうがいいんだけど、まあ誰も気にしないかしらね」

「私も、小言は言われるけど、問題はないはず」

「あたいは、何にも問題はないかな、皆大変だねー」

「じゃ、それも考慮してこうしよう」

 ヴィオーラは三つの指輪を生み出した。

「これなら、持ってるだけで仮契約していると特別にみなします。これに魔力を通したら、ボクと連絡取れるから。いやー、巫女様にも指輪渡したかったんだけどねー、ってもう渡してるかぁ」

「くっ、いつか絶対この淫魔浄化してみせる」

 先生方は指輪を受け取った。

「で、最後に、僕の戦闘補助を」

「ラジャー、まあ最初からその子に戦いに耐えられるだけの耐久力もつけているし、詠唱が終わるまでは大丈夫でしょ」

 ヴィオーラはふと、先生方を見た。

「というか、この人たちがいれば、あんまり必要なくない? それに他にもいるくない?」

「先生方は、今の父親が雇った冒険者だというのと、今世はゆっくり暮らしたいですしね。あとは……先生方ぐらいしか思いつかないですけどね」

「ふーん、そ」

 いきなり興味が無さそうになった。

「さ、ここに来た目的も終わりました」

「そうか、じゃあ一泊して明日にでも帰るか」

「ごめん、流石に色々有り過ぎてしばらくゆっくり整理したいんだけど」

「私も流石に、疲れた」

「あたいはちょっと探索したい」

「もぬけの殻ですから、何も無いですよ?」

「でも、人の家って何か探索したくない?」

 分からなくはない。

「じゃあ、サーシャには悪いが、三日ぐらい休むか」

「さんせーい」

 

 翌日。

 ヴィオーラが建物を管理をしていたので、快適にすごすことが出来る。

 かつての自室でゆっくりする。

「で、ヴィオーラ、聞きたいことがあるんだけど」

「何? ウィリアル君」

「その前に、何その呼び方」

「気になるタイプでもないでしょうに。ちょっとしたら貴族でもなくなるだし、それでご主人呼びでいらぬ好奇心をもたれるよりはいいでしょ。まあ、ついていくわけじゃないけど、翁いないしいいかなってね」

「ああ、なるほど。それで聞きたいことだけど、僕の死体ってどうしたの?」

「ああ、そういえば言ってなかったね。最初はミイラにでもしようかって話があったんだけど。帰ってきた場合、躊躇い無く粉にしそうだから、火葬で全部燃やしちゃった」

「まあ確かに、あるならいい媒体としてそうしようと思ってたけど、何故火葬?」

「倫理間的に? ぶっちゃけ、自分の遺体粉にして使う姿とか、マジドン引きだから。火葬は元の世界でボクの住んでいる国が火葬だからそうしたってだけ」

 悪魔に倫理を諭された。

「なるほど。じゃあ気になるようなことは一つもないし、明後日までぐうたらしていようかな」

 流石にここにいるときぐらいは、先生方もだらけるのを許してくれるだろう。

「何か飲み物持ってくる?」

「あー、お願い」

「おーい、ウィーいるー?」

 ノックと共にギャリー先生に呼ばれた。

「いますよ、どうぞ」

「失礼するねー」

「ドワーフ娘ちゃん、ちょうど飲み物持ってこようと思ったところなんだけど、何かいるー?」

「いーや、ちょっと届きに来ただけから、すぐに出るからいいよ」

「届けに?」

「探索してたら、綺麗な祭服があって、大事な物っぽいから持ってきたんだけど」

「……そうなんですか、ありがとうございます。そこに置いておいて貰っていいですか」

「じゃあ、ここに置いておくね」

 そう言ってギャリー先生は出て行った。

「処分してなかったの?」

「持って行かれてると思ってた」

「いや、大賢者の祭服なんて持って行っても、しょうがないでしょ」

「素材としては、一級品だったから。古着で売ってもそこそこ値段にはなるし」

「それで、どうする? ボクが処分しておこうか?」

「いや、自分でしてくる。ごみ焼却場に行くけど、先生方は来そうにない?」

「現在地的には当分近づかないと思うけど。相変わらず人の魔力を読もうとしないんだねー」

「まあね。安心できる場所以外は気配を読むようにはなったけどね」

「やっぱり少しは変わったんだね」

「良いのか悪いのか。じゃあちょっと行って来ます」

「しっかり焼いてきなねー」

 長年住んでただけあって、十五年経っても迷わず行くことが出来た。

 捨てる瞬間だけでも感慨があるかと思ったが、何も思うことは無かった。

「老いてるからと思ってたけど、そうじゃなかったか。まあ生まれ変わったからって可能性が出てきたけど、支障が無いしどうでもいいか」

 祭服を放りこんで、詠唱を始める。

「あれ、ウィー何してるの?」

 突然、ギャリー先生の声がして、焦ったように振り向いた。

「えーあー、ごみを捨てに。そんなことより、どうしてここにいるんですか?」

「普通に適当に歩いてたらここの近くに出てね、ウィーの気配がしたから、何してるのかなって」

 ヴィオーラめ、わざと見逃したな。

 意味の無いことはしないから、必要だと思ったのか?

 その頃ヴィオーラは、あれいつの間に、と思ってたりする。

「ごみってここに捨てるの?」

「ええ、魔法の研究や練習に使う物の中に危険な素材とかありますので、ここに持ってきて焼却してたんです。あ、泊まってる間にごみが出てもヴィオーラが回収しますので、持ってこなくていいですよ」

「ちょっとヴィオーラには悪いけどそうさせてもらおうかな。それで、ウィーはどうしてここに?」

「えっとだから、ごみを捨てに……」

「何を捨てたのかな?」

「ご――」

 魔法でも使ったのかというくらいに素早くギャリー先生が横に来て、中を見る。

「さっきの今でもしかしてとは思ったけど」

「いや、ごみなのは本当なんですよ。折角持ってきてくれたのに、ごみだというのは申し訳なくて」

「いらない物なんだねー」

「はい」

「じゃあ、あたいが貰おう」

「はい?」

「だって綺麗だし、装備としても最上級にいいものだよね、三百年以上経っても劣化した気配がないし」

「ダメです」

「見たくないっていうなら、見えないように使うしエルに頼んで仕立て直しもするよ。ドワーフのあたいには大きすぎるもんねー」

「えっと、いや……」

「嫌な理由あるのかな?」

「ないですけど」

「じゃあいいじゃない」

 いつの間にか手に持っていた。

「ウィーが魔法使うのを見逃すって、珍しいね。ということでエルに頼みに行くから、さらばだー」

 また一瞬で離れて行ってしまった。

「はぁ……」

 どうしてこうなったと、昼食の用意が出来たと呼びにこられるまで考えてしまった。

 あとで、ドワーフがあんなに素早く移動するとは思わなかったとヴィオーラに謝られた。

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