ちょっとした小話と、真相
訪問者が消えて、部屋には鐘とドルジが残されていた。
ドルジはまたカウンターの席に座り、鐘はカウンターに手を置く。
「で、あの方はどのような方でしたの」
「さっきのお客かい?うーんと、まぁ、一言で言えば狂っちゃった女の子だね」
「やっぱりですか……」
鐘ははぁ、とため息をついた。
「あの子は幼馴染……翆くんの突然のひどい暴行に耐えていたが、それも限界が来ていた。けれど抱くのは憎しみではなく愛情だったんだ。憎しみを愛情でカバーして心を守っていたんだね」
「へぇ、なぜそのようなことを?」
「うーんと……憎しみの前に、元から愛情を持っていたんだね。その愛情が、翆くん好き好きフィルターをかけて……」
「でも、徐々に憎しみが優ってきたと?」
「そういうわけ。それで自分が直々に殺そうとしたけれど、すでに翆くんは自殺してしまった……翆くんが読み始めたという本も、自殺のマニュアルだったんだ」
「まぁ、生死が間際にあったお話ですのね」
鐘はうんうんと納得した。
「はぁ、ここまで話す義理はないのだけれどね。友情価格なのだから、感謝してよね」
「いつも感謝しておりますわよ」
用は済んだようで、鐘は出入り口のドアに手をかける。
「それでは、また」
「あぁ、次もよろしく」
鐘は嬉しそうに本音売りを後にした。
ほんのちょっとの短いお話でしたが読んでいただきありがとうございました