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勇者編 犠牲者

短めですが、勇者サイド。最後のはなんとなく誰かわかるはずです。

 今、俺は最初に来た書物部屋に来ていた。周りには先生を含む他全員のクラスメイトが集まっていた……あぁ、全員ではなかった。

 重苦しい空気が全体に広がる………その理由は、この世界に来て初めての犠牲者が出てしまったからだった。

 犠牲者の名前は桑原優太。正直友人だったとは言えないような間柄だったが、それでもクラスメイトという身近な人物の死、そして何より自分は最後に彼を見た中の1人だという事もあり、今にも泣きそうな心情だった。


(………もっと、もっと俺が強ければ優太は生きていたかもしれない。なんで、なんでこんなに俺は弱いのだろう。)


 そんな自己嫌悪が襲ってくる中、静まり返った部屋の中で、涙を必死に堪え、鼻を啜る音が耳に入ってきた。その主は国本真司、優太とはとても仲の良かった友人だった。


(親友が亡くなって悲しくないわけないよな……)


 そう考えた俺は、気づけば彼の横に向かっていた。


「わ、悪りぃ、い、今、顔みないで、くれ」

「勿論だよ」


 俺は彼の涙が落ち着くのを少し待った後、声をかけた。


「…ごめん、俺がもっと魔法が使えたら優太を助けられたかもしれなかった…」

「謝んなよ、俺だって強けりゃ守れた」

「でも、俺はあいつに有利な魔法が使えた」

「だからって勝てるわけじゃねぇだろ」


 彼は俺を、自分自身を責める事もなくただ事実を述べているようにも思えたが、その声には確かに「悲しみ」「悔しさ」そして自分に向けた「怒り」がこもっていた。

 真司は親友が死んだ悲しみに溺れる事もなく、ただただ自分の不甲斐なさを悔やんでいるようだった。紛れもない、誰を責めるわけでもない自己嫌悪、それが感じられる人はそうそう居ない。

 俺は立ち上がり、彼なら自己嫌悪に飲み込まれる心配はいらないだろうと、その場を後にした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「……で?要件を申せ」


「ハッ、始末を予定していた異世界人の「百獣の王」ですが、訓練中にデッドソローと遭遇したため、予定より早めになりましたが、始末いたしました」


「……勇者達は無事なのだろうな?」


「もちろんでございます」


「良い、ならば邪魔者もいなくなった。このまま勇者の成長を見守れ」


「承知いたしました」


(さて、最初はどこに行かせるか……)

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