表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/31

あ、裏切られた感じだ

 俺たちが実戦の場として向かったのはキャロルの森という場所だった。曰くスライムが多く、スライム以外にもたまに角兎(ホーンラビット)というスライムに比べると少しだけ強い魔物が出てくる、最初の訓練には持ってこいの場所らしい。

 ちなみに俺が吸収していたスライムは戦闘能力のないスライムだが、ここでは酸性の粘液を出したりとしっかり攻撃してくるので注意が必要だった。


「!そっちから来るよ!」

「了解!」


 とは言ったものの実を言うと、未来君の職業のおかげで楽に倒せているのだが。

 未来君の職業は《指揮者》戦闘系の職業ではないが、戦況を把握したり今したい行動への再効率は何かということを計算できたりととても便利なものだった。

 まー便利すぎてこの中でもちろん1番無能な俺が役に立てるわけもなく最早人数合わせ要員と化していた。

 その時だった。周りの空気が一気に変わったのがわかった。一瞬で周りの温度が下がり、薄く霧が出てきたほどだ。


「み、皆固まれ!何か来るぞ!」


 騎士団のギルさんが声をかけて呼び寄せた。そして全員がちょうど固まったところだった。

 森の奥から現れた巨大な動く骸骨、いわばがしゃどくろのような魔物だった。そいつを見た瞬間、一瞬で「勝てない」と察知する、体が死を覚悟する。そんな恐怖を身を覆った。


「で、デットソロー!?そんな魔物この森にはいないはずだぞ!?」

「デットソロー!?」


 ギルさん曰くデットソローとはSからFまである魔物のランク中2番目に高いAランクの魔物とのことだった。もちろんそんな魔物に勝てる訳もない、そんな中で俺たちが選ぶべき手段は一つ…


「全員!退却!!」


 ギルさんの声が響く同時にデッドソローはその大きな手を振りおろし、攻撃を始めた。


「くっ、シャインボール!」


 攻撃を必死に避け、勇輝が返しに光の弾の攻撃魔法を当てると、属性的に有利だったらしく少しよろめいた、が、すぐにデッドソローは動き出し、次の攻撃を繰り出した。


「!!前園さん危ない!」

「え?」


 赤坂君がそう叫び、咄嗟に前園さんの方を向けば、デッドソローが今度は腕を横から振り、木を倒して当てようとしていた。そんな彼女を見て俺は……


「っ!!」

「く、桑原君!?」


 気づけば前園さんを突き飛ばしていた。これが噂に聞く体が勝手に動くと言うやつかと後から思った。

 木が倒れ、俺の足は木の下に少し挟まってしまった。幸いなことにすぐ抜けたのだが、足を挫いてしまい、引率のもう1人の騎士団員に支えてもらった。

 そしてもう一度デッドソローが横に手を振り払った。かろうじて避けれる距離かとそう思った直後………


「…え?」


 体が後ろに後退した。

 一瞬、理解できなかった、支えてくれている騎士団員に突き飛ばされたこと、そしてそれが分かった瞬間、体に激痛が走った。デッドソローに殴られたと今度はすぐにわかった。


「優太!!」


 騎士団員を誰も見ていないところを見ると、俺はただ攻撃を喰らってしまっただけに見えているようだった。

デッドソローが今度は的確に騎士団員を狙って腕を振り下げた。


「ひっ!」


 騎士団員は炎魔法のスキルを持っていたようで、咄嗟に火炎弾をデッドソローの肋骨に当てた。すると弱点だったようで骨の破片が少しだけ散らばった。


「今だ!逃げるぞ!!」

「でも、優太が!」


(僕は、見捨てられるのか…)

 朦朧とした意識の中、しっかりとした絶望感を感じながら俺はそう考えた。

(いつから人生を踏み外したのだろう)

 そんな事を思いながら、俺はそのまま意識を手放した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ