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二度目の異世界、少年だった彼は年上騎士になり溺愛してくる  作者: 琴子
再びの年齢差編

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43/49

もしも、だったとして



「サラ、夕食は何が食べたいですか?」

「なんでもいいの?」

「はい、できる限りのことはするつもりです」


 屋敷に着いた頃には、既に日は暮れ始めていた。


 子供の彼女ならば、違う世界の食事は口に合わないものも多いだろう。なるべく希望を聞こうと思い尋ねると、しばらく悩む様子を見せた後「あのね」と口を開いた。


「オムライスがいい! うさぎさんの絵もかいてほしい」

「分かりました。少し待っていてくださいね」


 料理長には任せず、もちろん俺が作るつもりだ。


 サラは俺が子供の頃からオムライスを何度も作ってくれていて、つい先日の休日も一緒に作ったばかりだった。その際に作ったケチャップも、まだ保存してある。


「ルークおにいちゃん、すごいね! かっこいい」

「本当ですか? ありがとうございます」


 サラはキッチンまでついてきて、調理中も後ろで興味津々と言った様子で見つめていた。可愛すぎて、何度も手を切りそうになったのは内緒にしておこうと思う。


 その後、なんとかオムライスは無事に完成したものの、ひとつだけ問題があった。


「サラ、うさぎでいいんですよね?」

「うん!」

「……分かりました。頑張ります」


 ケチャップを袋に入れてきっちりと結び、袋の角を小さく切る。そして小さく深呼吸をすると、俺は小さなオムライスに向き合い、サラのリクエストであるうさぎを描き始めた。


 ──幼い頃から、俺は何でも人並み以上にこなすことができた。けれど、唯一絵を描くことだけは苦手で。


 子供が喜ぶような絵というのは、かなり難易度が高い。それでも何とかサラを喜ばせたい一心で、精一杯描いていく。


「サラ、できたんですが……」


 そう呟くと、食堂の椅子にすでに腰掛けていたサラの前にことりと皿を置く。わくわくとした表情を浮かべ、皿の中を覗き込んだサラは、やがて「ふふ」と吹き出した。


「あはは! ルークおにいちゃん、へたっぴだね」

「すみません、頑張ってはみたんですが」


 自分でも、とてもうさぎには見えない。良くてスライムだろう。今後は絵の練習をしようと決意した。


「ううん、かわいい。ありがとう! うれしいな」


 それでもサラは、眩しいくらいの笑顔で喜んでくれて、俺が向かいに腰掛けるのを待った後、両手を合わせた。


「わあ、すごくおいしい!」

「本当ですか? よかったです」


 サラが母親に教えてもらったというレシピだからこそ、彼女の口にも合うのだろう。


 内心安堵しながら、二人で楽しい夕食の時間を過ごした。



 ◇◇◇



 その後メイドとともに寝る支度を済ませたサラは、広間で話をしているうちにソファで眠ってしまった。静かに抱き上げて寝室へと運び、その隣に腰掛ける。


「……かわいい」


 すやすやと気持ちよさそうに眠る姿は、やはり天使のように可愛らしい。あどけない寝顔には大人になったサラの面影もあって、思わず笑みがこぼれた。


「サラは、子供の頃から明るくて優しい子だったんですね」


 初めは戸惑ったものの幼い彼女と過ごし、知らなかった新たなサラを知ることができたのは、幸運だったように思う。


「俺は過去に何度も、サラと同じ世界で、同じくらいの年齢で生まれていたら、なんてことを考えていたんですよ」


 ──もしも違う場所で違う出会い方をしたとしても、俺は絶対にサラを好きになっていただろう。


 彼女もそうだったらいいなと思いながら、柔らかな頰に触れると、サラはくすぐったそうに身を捩らせた。愛しさで、全身が満たされていく。


「おやすみなさい。良い夢をみれますように」


 小さくて柔らかな手を握り、いつかの彼女が俺にしてくれたように、そう祈ったのだった。



いつもありがとうございます。

本日、書籍の書影が公開されました……!!



 挿絵(By みてみん)



氷堂れん先生が、本当に格好いいルークと可愛いサラを描いてくださっています( ; ᴗ ; )‬すてきすぎます……!


かなり改稿しているので、WEB版の読者さまにも楽しんでいただけるかなと思います♪


私としては、これからもサラとルークのお話を書きたい、2巻も出せたらいいなと思っています。書籍をお迎えいただき応援していただけると、とても嬉しいです……!!


ビーズログ文庫さま/12月15日発売/定価748円

各書店さまにて予約受付中です!


コミカライズも12月15日に開始予定です♪

どうぞよろしくお願いいたします……!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 書籍化おめでとうございます!!! ルーク、実は吉田の遠い親戚か?!とちょっと興奮してしまいました(笑) もしこのままサラがもとに戻らなかったら、昔と全く逆の恋愛模様が見られるのかなとお…
[良い点] 「料理長には任せず、もちろん俺が作るつもりだ」の意気込みにキュンとしました。オムライスは二人にとって特別な料理なんですね。 そしてスライムみたいなうさぎの絵…!またマンガで見たい絵が誕生し…
[良い点] 書籍化おめでとうございます! 何度も何度も読み返していたので、紙媒体でも手元に置いておけるのが嬉しいです!!続編も楽しみにしています♪ [気になる点] 「二度目の初恋を君に」のタイトルが詩…
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