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第1話
「ほらよ!」
男が乱暴にダンボールを投げ捨てると、5匹のカッパが一目散にそれに群がる。
ダンボールの中には大量のキュウリ。
我先にとそのキュウリを奪い合うカッパたちを見て、テルシャは思った。
「ここは地獄だ」
全てのカッパたちが満腹になっても、まだ余るほどキュウリは提供される。
競うようにしてキュウリを食べる必要などどこにもない。
そんなことは皆わかっている。
ただ、ここには食以外の楽しみがない。
11時間にも及ぶ強制労働の末に唯一与えられる食事。
それが終われば翌日の起床時間まで睡眠をとり、目が覚めれば悪夢のような労働が始まる.
毎日がその繰り返しでしかなかった。
「キュウリ食わないのか?」
背後から不意に声を掛けられ振り向くと、立っていたのはジベラだった。
「あまり考えすぎるな。考えたところで現実は変わらん」
そう言うとジベラは軽く笑ってテルシャの肩に手を置いた。
テルシャは何も答えず、微笑み返した。