ユーカリの噂
午前の授業が終わり、昼休みになるとユーカリ君はすぐに教室から出て行った。結局聞けなかった事を聞こうと思って追いかけようと思ったけど、クラスの女の子達に「一緒にご飯を食べよう」と言われて呼び止められてしまった。同い年の同性の子と一緒にご飯を食べるのは青春をしているみたいで流石に断る訳にはいかなかったので諦めた。
「アイリスさん、ユーカリ君に何かされなかった?」
クラスメイトのサラさんが一瞬何を言っているのか分らなくて反応が遅れてしまった。「何か」とは何を指しているのか。少なくてもマイナスな意味で言った事は分かる。
「その、嫌な事とか?」
「いえ、別にされませんでしたが……」
この時私は既視感を感じた。家でよく見る光景。陰口を言う時のわざと言葉を濁す言い方。お偉いさんが来る社交場でいろんな人を見て来たから分かる。
「それならいいんだけど。アイリスさんも気を付けてね?」
「何にですか?」
「これは噂なんだけどね、ユーカリ君は昔1人の女の子を見捨てた最低な人らしいんだよね」
サラさんのその言葉を聞いて、私は信じられないと言う風に持っていた箸を落とした。
「アイリスさん?どうしたの?大丈夫?」
「そ、そんな……。何かの間違いですよね?ユーカリ君はそんな人じゃ無いです」
ユーカリ君が人を見捨てるなんてあり得ない。ユーカリ君は小さい時に唯一の友達で、理解者だった。ユーカリ君がいなければ、とうの昔に心を壊して今を生きていないくらい。家族以外の人で初めて信じられる人でそれだけ助けて貰った人だ。
「でも、噂で聞いたんだよ。クラスだけじゃなくて学年中に広まってるよ。皆それを信じてユーカリ君に関わる人が減ったから」
「それでユーカリ君はいつも1人でどこかに……」
ユーカリ君が休み時間になると1人でどこかに行くのはそういう理由が。クラスに居ずらいんだろう。今もユーカリ君はきっとどこかに1人でいるんだろう。そう思うと心が締め付けられる。1人はとても寂しい。それは私が一番知っている。
「だからね、アイリスさんもユーカリ君に関わるのは辞めた方がいいよ」
「サラさん。ご忠告ありがとうございます。でもその忠告聞けません」
「な……!!」
「後、今後ユーカリ君の事をそんな噂程度の事で除け者にするのは辞めて下さい。不愉快です。あ、とても貴重な時間でした。ありがとうございます。また機会があれば一緒に食べましょう。私は用事が出来ましたのでここで失礼させて貰いますね。それでは」
そう言って私は教室を出た。




