第3話
「何をボーッとしておるのじゃ、エド街とやらに行くのじゃろ?」
「は、はい。」
誰がどう見ても小悪魔コスプレをした10歳くらいの女の子。そんな子どもに思わず敬語を使ってしまった僕。
幸い、そんな情けない僕の姿とルシファーとのやりとりを見ているプレイヤーは周りには居なかった。
・・恐らく、全員消し飛んだからだ。申し訳ない・・・荒れ果てた一本道の荒野を僕たちは闊歩する。
僕はルシファーに話しかけた。
「なあ、さっきの技なんて言うんだ?」
ルシファーは少し不満そうに答える。
「技と言うほどではない。わしは、受肉しておらんからな。ただの、黒い炎と言ったところか。全く、全然力を発揮出来ておらんわ。これは朔よ、お主が未熟じゃからじゃぞ!」
そう言うと、またもや僕を不満そうに見つめる。
あれが、ただの炎?意味が分からない。
道中、奇跡的に黒い炎から免れたモンスターが森の跡地から出くる。僕たちに躊躇なく襲いかかってくるが、一瞬で消し炭となっている。
恐らく、弱いモンスターはルシファーに近づくだけで即死のようだ。ルシファーが居なければ今頃は逆に僕が瞬殺されているだろう。
「わしは、今の時点では、さっきの黒い炎しか使えん。わしが弱いと言うより、主の朔が弱いからじゃな。よりお主自身が成長すれば、もっとわしの素敵な技を見て見惚れることが出来るぞ♪」
ルシファーは不敵な笑みを見せる。まるで、無邪気な子どもだ。
(今の力だけで、十分すぎる気が僕にはするけど・・・)
そうこうしているうちに30分もかからずエド街に辿り着いた。
まあ、森を突っ切るというより、森を焼き尽くして真っ直ぐ歩いてきただけだから当然か。
『エド街』
初心者が最初に訪れる街。ここでは主に、装備を揃えたり、クエストを受けたり、ギルドに加入をしたり、そして重要な最初の職業を決める為の街だ。
冒険者の拠点となっているこの街は、ワールドオンラインで1番栄えていると言っていい。
——先ず、ルシファーの件はまた考えるとして、
「何の職業にしようかな・・」
僕は、エド街の目的である自分の職業選択について考える事にした。
ルシファーの圧倒的な力を見せつけられて、もはや無職でも良いのではないかと思ってしまっているのだが・・・