第2話
『ワールドオンライン』
天才技術者によって作られた最新VR異世界ゲーム「ワームホール」と呼ばれる次元転送装置を使い、プレイヤーごと異世界へ転送する仕組みとなっている。
つまりは、異世界を利用した現実型オンラインゲームだ。
地球と同じ大きさの規模で構成されているため、セカンドアースとも呼ばれる。
この世界では様々な魔法が使え、様々な空想上の生き物が存在する。
実際に死ぬ事はないが、痛みは現実世界同様に感じる。
ただし死亡判定と見なされれば、現実世界へ強制転送させられる仕組みとなっている。
公式説明によると、プレイヤーのバックアップは現実世界に存在する為、死んでもご安心をとの事だ。
あくまでこれはゲームなので安全面は保証されているという訳だ。
◆◆◆
そして、そんなわけで話の続きに戻る。Fランクの小悪魔ペットを召喚し、最初で最後の大爆死をしてしまったところからだ。
「小悪魔じゃないわい!わしは究極なる堕天の王じゃ!!」
そう喚く彼女に、僕は苦笑いで。
「ごめんごめん、堕天の王よ。まあ、これからよろしくね。」
クヨクヨしても仕方ない。配られたカードで勝負するしかないんだ。それに、中々可愛い小悪魔じゃないか。
「まあよい。それにしても、このわしを召喚した者がこんなに幼い稚児だとは思わなかったぞ。お主、名前は何という?」
・・・お前の方がよほど稚児だろ!!
「名前は朔だ。それにもう僕は17歳だ。」
「朔か。ちなみにわしは10万10歳じゃ。」
——お前は聖飢魔IIか・・・
「のぅ、朔よ。わしを召喚出来たという事はお主、やはり召喚士だろう?」
「え?いや、違うけど。僕はさっき始めたばかりの初心者だ。召喚というか、ほら、そこにあるガチャで引いた。」
突如、小悪魔は驚いたように眼を見開く。
「な!なんじゃと!!まさかあの様な物でわしを召喚したのか!一体なんたる事!!どうなっているのじゃ!!!」
「いや、こっちが聞きたいよ!」
ルシファーは少し苦い顔をして何か考え事をしている。まるで、嫌いなピーマンを食べた子どもの様な顔だ。
「・・・まあ、仕方ない。手段はともかく、わしを召喚したのはお主じゃ。となると、わしは朔に従うしかないようじゃな。」
「ああ、まぁよろしく頼む。」
「それで、これからどうするのじゃ?」「そうだな、まずは・・・」
周りのプレイヤー達の様子を見ると、ガチャを引いた後は、「エド街」という大きな街で「職業」を選択しに行くらしい。
今いる「始まりの村」からさほど遠くない。怪物の森を突っ切ると30分程で到着する。
ただし、怪物の森にはモンスターもいる。初心者エリアだからさほど強くないだろうが、ガチャを外した9割のプレイヤーは迂回ルートの90分コースを歩いて行くみたいだ。
「なるほどのぅ。なら、話は簡単じゃ。わしは回り道はせん。何事も真っ直ぐ進む信念なのじゃ。」
いや、武器も防具もない初心者以前の僕と、小悪魔一匹が怪物の森に入るのは自殺行為だ!この傲慢な小悪魔は何を言っているんだ!
「いや、だから、いまの僕らじゃ・・・」
ルシファーは不敵に笑う。
「安心せい。」
小悪魔な彼女は怪物の森の方角を向いて、
その小さな手をかざす。その直後、凄まじい衝撃が僕を襲った。
——な!?爆発!?
凄まじい爆発音と衝撃波が辺り一面を覆う。
「ゴホッ!ゲホッ!」
土煙に塵芥で何も見えない。
「一体何なんだよ・・・」
数十秒後、ようやくして視界が晴れてきた。
一直線上に焼き尽くされた怪物の森。森の跡地には一本の大きな荒れ果てた道が出来上がっていた。
森が消えた事で、その先にうっすらと現れたエド街の姿。そして、またもや自信満々の表情のルシファー。
「この道を真っ直ぐじゃな。さて、いくかのぅ♪」