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帰れない

作者: 大澤香代子
掲載日:2018/06/05

震災のあとの、女性がつぶやく。


シートに覆われた、中にだれがいるのかは、知っていた。  


警察もいる。

嘘はつけない。


わずかにはみ出た指が、汚れていた。

早く洗ってあげたい。終わりにしよう。



シートをつかみ上げ、制止されたが、ここで怒りが爆発した。


違う、あんたじゃない、眼の球がない、何年も待って、このざま。


自分の腰がぬけ、くらい群青の海が、あんたの台にもあふれる。



誰か呼びますか。


いいえ誰もいないの。


ひとりにしてください。


見たくないので、シートを被せて。


このひとは悪いことばっかり、したのださ、でも終わったんださ。


この方を、お引取りいただけますか。


連れてはいけない、家には娘も息子もいる。


誰も呼べない。


埋葬許可証を、手続きし、自分で法華経をあちこち唱え


近くの焼き場で終わった。


娘になんと言おう。また私をなじり砲火にまみれた火宅になり、弟にもあたる。


財布が気になった。


焼き場の5000円と、焼けるまでの、日本酒200円。


このまま帰るか、残りの4000円でどこに行けるか、



あんなやつに、「文学なんて言うな、ガキ」


「ショんべんくせ、な」


から


私の一生のあらすじは見え、そのとうりにすすみ、ここにいる。


しゃがみこむと、ふとった腹がつかえて、尻がついた。


ははは、笑った。


この震災で、笑ってる自分がさらにおかしく、この静謐の異常が私を狂わせた。

家族が壊れていく、身近なもののひとり語り。

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