ねぇ 変わってよ
貴女はいつも愛された。
両親からも私の友人からも私の婚約者からも……
だからもういいでしょう。
変わってくれて。
森に住む婆やに薬を頼んだの。
入れ替わりの薬よ。
あなたは健康な体を欲しがっていた。
だからあげるわ。
私の体を…
うん。知っている。
貴女の身体が、後一年も持たないってこと。
だから体を取り替えた時一度だけ貴女のふりをして私の婚約者と寝たの。
別荘に静養に行く前にね。
貴女は魅了を無意識に垂れ流していたから、身体がボロボロになっていた。
貴女は喜んで体を取り替えた。
私のことを馬鹿な姉だと思っているだろう。
昔から魅了の効かない私を煙たがっていた。
寝取り?
まあ…どうなんだろう?
ボロボロの体と健康な体を取り替えたんだから。
それぐらい許されるわよね~
元々私の婚約者なんだし。
妹だと思って抱いた婚約者。
ん~?浮気?になるのかな?
それで別荘にいく途中で強盗に襲われた。
全く堪え性がないわね。
婚約者と寝たのが気に食わなかったらしい。
一年ぐらい待てないのかしら。
妹の母が雇った強盗らしいわ。
だから煙幕玉を使って強盗を撒いて。
ショールを枝に引掛け、滝に落ちた様に見せかけた。
私は婆やのいる森に行った。
婆やは本当は私のおばあちゃんなの。
母とおばあちゃんは、伯爵家に薬を卸していた。
十五歳になった時、伯爵に捕まり。
地下室に閉じ込められレイプされ、私を産んだ。
そのまま産後の肥立ちが悪く、帰らぬ人となった。
私は人質だ。
高価な薬をおばあちゃんに作らせる為に。
私は母の幼馴染みに真実を知らされた。
道理で家族から疎まれる訳だ。
父にとって私は人質で政略結婚の駒でしかなく。
義理の母にとって、私は目の上のたん瘤。
本当は妹を侯爵家に嫁がせたかったのだ。
しかし妹も妹の母も身体が弱かった。
高価な薬は妹と母親のためだ。
フードを被り、私は街に薬を売りにいく。
おばあちゃんの薬で私は健康になった。
街で聞いた噂では、妹は死んだそうだ。
体を取り替えてもその魂に刻まれたスキルは、解けなかったようだ。
確かにもう一度、体を替えることは可能だ。
ただし妹の体と薬があればだ。
母の幼馴染みの手引きにより、祖母と私は違う国に移っていた。
私は子供の手をつないでお菓子を買う。
私を愛してくれなかった婚約者の子ではあるが。
私はこの息子を愛している。
息子は大きくなると学園をトップの成績で卒業して薬師になり城に勤めている。
息子は結婚して孫も出来た。
おばあちゃんはひ孫を嬉しそうに抱いている。
体を取り替えたからと言って、今まで培ってきた技術や記憶が無くなる訳ではない。
体を取り替えても私は魅了を使う事が出来ない。
それは妹とて同じだ。
最も妹は自分が魅了を使っていたことを知らない。
私も教えなかったし。
旨い具合に自滅してくれた。
私は母の幼馴染みと結婚した。
出会った時、彼は三十二歳だった。
夫は冒険者で珍しい薬草を取って来てくれる。
プロポーズは、珍しいキノコを持って来た時だった。
「父さんプロポーズはエーデルワイスだろ」
この地方はプロポーズする時エーデルワイスを恋人に渡すのだ。
今も息子にからかわれている。
無骨な人だ。
でも私と息子とおばあちゃんを愛してくれる。
妹や婚約者や親モドキがどうしてるかって?
風の噂だと学園の卒業パーティーで、王太子を魅了を使って操っているのがばれて。
親モドキ共々縛り首になったそうよ。
婚約者?さあ?知らない。
兎に角、今とても幸せよ。
愛する家族に囲まれて。
~ Fin ~
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2018/3/23 『小説家になろう』どんC
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★私
妹と体を取り替える。
★妹
魅了で男も女も操る。
姉と体を取り替える。
★婆や(おばあちゃん)
主人公の実の素朴な。有能な薬剤師。
★夫
主人公の夫。母親の幼馴染み。
★父親と継母
ろくでなし。
最後までお読みいただきありがとうございます。