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会場に入って一発上官に怒られた。
間に合ったんだから…と、言い訳したいところだけど、俺が時間にルーズなのが悪いんだろう。
素早く見習い騎士の列に入る。
「…ニコレ君大丈夫…?」
女騎士のクララが俺の耳を打った。
にこりと笑って頷く。
何故かクララは顔を赤らめ自分の腕で自分を抱きしめていた。
色が白くてクリーム色の髪の毛は眼を見張るほど美しいけど、かなり変な奴だな。
だんっ
騎士養成所長が壇上に上がり、教壇を叩いた。
「これより第一回勇者専属騎士団 選考テストを開始する!」
第 一回勇者専属騎士団 選考テスト …?
今日受けるのは第46回ストラビア騎士団見習い騎士養成所騎士昇格試験のはずだったけど。
俺は一度覚えたことは忘れないから。
みんなも不思議に思ったようでざわつく。
「静粛にしなさい」
司会役の上官の言葉にみんな戸惑いならも口をつぐむ。
俺たちは次の言葉を待った。
「君たちもー、先代の勇者が戦いの果て使命を果たし天に還ったのは知っていよう」
勇者は、天からの使者とされている。
教会から発足しているのだから頷ける。
「勇者はこれまでに何人いらっしゃったのか知っているな?ドミートリ家の
次男坊」
ウィルが当てられた。
これは、もう試験始まってるってことだと思ったほうがいいな。
俺は顔を硬くした。
「4人です。ワーグナイト所長」
「そうだ、4人だ。そして今回の勇者はいままでと何が違う?マーティウルト家の長女」
クララの友人の女の子が当てられた。
「女性であること です」
「そういうことだ。後の説明は次の勇者付き神官となられるサマンサ大神官猊下に一任させていただく」
所長は一礼すると壇上から降りていった。
俺はぴしっと敬礼を決めた。
唖然としている人が多かったので、敬礼をしたのは俺くらいで、俺の横にいた何人かはつられて手を持ち上げていた。
みんなやると思ってやったもんだから少し恥ずかしい。
猊下が壇上を歩き出したのでみんな彼女を目で追った。
優雅に礼をすると、漆黒の髪がさらりと純白の新刊服に川のようにながれる。
後ろに百合が見えるようだった。
「みなさん御機嫌よう。ゲオルク・サマンサと申します。私が今回の試験官長です。勇者専属騎士団に見合う騎士をこのストラビア騎士団見習い騎士から4人選考をいたします。
まず何故専属騎士がいるのかというこのについては、試験合格者のみに伝えます。この試験事態まだ公のものではないので事前に伝えれなかったのです」
なるほど。
俺の国には5つの騎士団があって、1番このストラビア騎士団が優秀だ。
勇者はすべての人類にとって勇者だからきっと他の8つの国でも試験することだろう。
騎士団の設立は人間界に義務付けられているから、騎士団はざっと160近くになるだろう。たまに貧乏な国は騎士団一個しかなかったりするしな。
だとすると、国立騎士団よりだいぶん人数の少ない騎士団になるな。
少数精鋭ってことか?
俺は別に昇格出来たらいいだけで、そんなキャリア欲はない。
「ということで、私の部下が用意した試験用の森に入り闘ってください。必ずしも1番に抜けたものが選ばれるわけではありません。いつもあなた方のことを監視していますから」
猊下は口を閉じるとパチンと指を鳴らした。
どーんと、闘技場の外に森が出現した。
猊下の術で管理されてるんだな。
壇上の猊下とふと目があった気がして、硬直した。
ふわりと花の咲くような笑みで笑いかけられたー気がする。
猊下が俺に笑うか?
そんなこと友達に言えばきっと指を指して笑うだろう。
俺もフッと笑って森へ向かって歩き出した。