新・火縄銃
まず黒色火薬を混合する際に水を加えるのは、一般的な手法だそうです。
そして粘土状? おそらくは蕎麦でも打つぐらいにパサついた感じの材料を、目的の粒の大きさへと練るんだそうです。
ここで簡単な性質として――
粒が細かい=燃焼速度が速い
粒が大きい=燃焼速度が遅い
となります。
で、素人考えだと燃焼速度が速ければ強い火薬と思ってしまいますが、そうではありません。
例えばハンドガン(拳銃)の場合、銃身が短いので弾が銃口から出る前に火薬が全て燃えている必要があります(爆発が推す力へ転嫁しきれないため)
しかし、銃身の長いライフルの場合、弾が出る前に火薬が燃え尽きてしまうと、それがパワーロスにつながるそうです(『銃口から出るまで燃え続けない=ガス圧が後ろへも逃げ始める』と思われる)
これは何故FN Five-seveNというハンドガンが駄目なのか調べた時に判明したので、動かしがたい事実と思われます。
※
・FN Five-seveN
みんな大好きパーソナルディフェンスウェポン(アサルトライフルとサブマシンガンのハイブリッド。最先端兵器思想の一つで、次世代歩兵銃)であるP90の対になるハンドガン。
簡単にいうと歩兵銃とハンドガンを同じ弾で賄おうという発想。
カタログを信じるのであれば、ハンドガンなのにライフル弾を発射するという便利さ――貫通力と対人効果を持つ。
要するにボディアーマーは貫通するのに、人体では止まって乱回転して絶対殺す。
が、そんなに便利になれるはずもなく……。
P90側は高評価なものの、FN Five-seveNは誰も信じていないという結果に(ようするに火薬の燃焼が遅いので、ハンドガンではパワー不足となっている)
これの裏付けは別メーカーが同コンセプトを追随(なんとH&K社のMP7がそれ!)したのに、対となるハンドガン(P46)の開発は中止したから!
つまり、パーソナルディフェンスウェポンはともかく、ハンドガンとの弾薬共用は無理という結論を出した。
ちなみに攻殻機動隊では、その辺の技術的問題をクリアした未来ピストル出てた……かな? やや、うろ覚え。
そして詳しくない方は――
「ならハンドガン側に弾を合わせたら?」
と仰るかもしれませんが――
「それだとサブマシンガンですがな!」
なぜサブマシンガンという種類があるかというと、あれはハンドガンと同じ弾を撃ちだしているからなんです。
なので自動的に威力もハンドガン相当で、ライフルには遠く及ばないとなります。
またハンドガンでライフル並みの貫通力が欲しかったら、それ用に徹甲弾を用意した方が安上がり!(まあ、これだと人体も貫通してしまい、ダメージは下がりますが)
で、話は黒色火薬へ戻ります。
なんと水で練った黒色火薬は板状にしたり六稜火薬と呼ばれる、まるでナットのような形に押し固めたりもしていたとか。
(これは砲術系のテクニックらしく、どうも黒色火薬は燃焼速度のコントロールが難しい模様。大質量の弾を打ち出す大砲では、必要な火薬量の決定は肝でしょうから、色々と研究されていた模様)
なるほどねぇ。猟銃も黒色火薬を使うのは粒を大きくしていたそうだし……燃焼速度のコントロールは、最初期からしていたのかな?
………………うん?
そういえば最先端技術で――
『ケースレス弾』ってのがあったよな?
銃器の弾に、いまでは薬莢を使うのが当たり前ですが、それを火薬で兼ねたものが『ケースレス弾』になります。
薬莢分だけ重量と容量が減り、装弾数を増やす目的で研究中の先端技術です(発想そのものは新しくはないといいます)
で、黒色火薬というのは粘土のように自由な形で押し固められる。
………………うん?
火縄銃の弾に、薬莢みたいに黒色火薬を押し固めてくっ付けたら?
で、火縄銃も後装式へ――中折れ式ライフルやショットガンみたいな形にして?
……火薬というのは密閉空間だと燃えるから爆発へ変わる?
しかも筒状の物へ詰めると、火薬と筒の僅かな隙間で、さらに燃焼速度が高く?
先端に弾を埋め込んで薬莢状に火薬を押し固め、念の為に細い筋でも入れておけば……燃焼速度で困りはしない?(筋の本数で調節できる為)
ケースレス弾ってのは、燃えカスが酷くて故障の原因となるらしいけど……もともと火縄銃というのは、一発撃つごとに銃身内を掃除の必要あるし?
つまり――
中折れさせて、銃身を掃除、軽く薬莢型火薬を押し込む、中折れ戻す
で、再装填終了!?
火縄銃時代から早込などの工夫はあれど、これは画期的に早いかも!
さらにいえば、丸い玉型からの進歩――ライフル弾だって作れる?
いや、それどころか薬莢があるのなら……雷管を付けることすら可能!?
(作者、しばし研究中)
………………さすがに雷管は無理か?
それに金属キャップは邪魔にもなりそうだし、大量生産向きではないかも。
でも、火が付けば結果は同じ?
例えば――
「薬莢型火薬のお尻を、昔のマッチと同じ素材で作るとか? あれなら擦れば火が点く!」
別案として――
「フリントロック式――火打石の火花で燃える素材――例えばマグネシウムでも塗っとく?」
いや、もっと簡単に考えて――
「引鉄を引いたら『ジッポーオイルに点火、引鉄が戻ると同時に蓋されて消化』程度の仕組みでも、火縄の数倍マシなんじゃ?」
もっともっと単純に考えて――
「薬莢型火薬のお尻に、癇癪玉を貼り付けたら? 癇癪玉は驚くほど単純――火薬とコランダムの粉を混ぜただけだし? ああ、これって原始的な雷管そのものか!」
………………うん、これならリボルバーまでいけるね。
リボルバー形式なら銃身を通るのは弾と纏わりつく燃えカスだけだから、数発なら連射も可能なはず。
弾を込め治すたびに銃身内を掃除しなきゃだけど……数連発できる事実を前に、そんなのは小さいことかも?
そしてリボルバーが可能ということは――
リボルバーライフルも可能ということに!
連発式ライフルは、本当にまずい! 劇的に歴史が変わる!
そして黒色火薬以外に必要なのが、極論的には鉄の筒だけというのがまた……。
でも――
いまさら火縄銃を改良しようなんて、どこの原始人だよ!
「あ、内政なろう先輩ちぃーす! え? こんど領内で火縄銃をお作りに? 魔族が攻めてきて、遠慮してる場合じゃなくなった? ………………差し出がましいですけれど、拙者に妙案が――」
で、終わり!(苦笑)