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ペット&ライフ  作者: 仮ノ一樹
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14/18

第14話 仮面の死神 ―前編―

《ヴォルフガング》

 かつて世界中で暗躍していた、テロ組織の通称。その実態は過激化した宗教団体と言われている。

 主に、雇われの傭兵や麻薬の売買を行い、また独自に暗殺者の育成機関を設立、レイコとサナエもその一員であった。

 彼女達の裏切りによりリーダーが殺され、最終的に組織は解散となった。

 あるものは自主や逮捕に至り、あるものは自害をし最後まで組織に忠誠を誓うものも少なくなかった。しかし、現在になって残党が現れ、何処かで組織の復活を目論んでいるのかもしれない。


12月5日

――P.M.11:59――

「後一分か…。いよいよだな」

 時計を確認し、隣にいるアキラに言った。

「はい。あと五十秒でカウントを始めます」

 全員、数時間前にここを出かけ、既に持ち場に就いている。後はこちらの指示を待っているばかりだろう。


 今、僕とアキラがいるのは医務室兼研究室だ。隣にVRトレーニングシステムを搭載したこの部屋は家の中でも特に重要な施設であり、今までの記録が詰まった資料やデータが保存されている。父さんの遺した研究データと記録も、ここから引っ張り出したものだ。

 他にも皆の持っている首輪や腕輪から送信される情報を記録・解析する精密機械があり、トレーニングも含め、戦闘データも記録している。大画面のモニターとマイクはそれを通じて現場との連絡を取り合い状況を共有する、言わば司令塔のような所だ。

 普段はユウカが閉じ籠ってBADの解析や研究をしたり、彼女が得意とする武器の改良や小物の発明に使われているが、勿論、医務室でもあるため、ベッドや応急処置用の救急箱ぐらいは置いてある。また、今は使われていないが、病院にあるような道具も幾つかか仕舞っている。


 モニタリング事態はいつもならユウカやヒトミあたりが行う役だ。僕は現場に行って間近で戦いを見守るのだが、今回は僕とアキラを除く全員が出撃ということで、ここで皆のサポートに徹する事となった。 

 そんな事を考えている内に、五十秒経った様だ。

「ご主人様。カウント、始めます」

「ああ、頼む」

 そういうと、アキラがカウント始めた。

 十…九…八…――――

 緊張が走る。モニター越しでも、これから殺し合いが始まるという嫌悪感は変わらなかった。

 ――――三…二…一…!

「全員行動開始!」

 静かに、しかしそこに熱意を持って、僕は号令を掛ける。



12月6日

――A.M.0:00――

 僕の声を首輪のマイク越しに、まずマオが動いた。

「あの、すいません。道を聞きたいのですが」

 見張りの男にマオが近づいた。無自覚だが、あいつの長所を活かすことの出来る場面だ。気休め程度だが、少しは期待したい。

「何だ、ここは立ち入り禁止だぞ。早々に立ち去れ」

 残念ながら、警備の人に彼女の魅力は一切効かなかった様だ。

 だが、一応初対面にも拘わらず、無愛想に言われるので、彼女はムキになって頬を膨れ上がらせる。

「もう、ただ道を聞いているだけじゃありませんか!」

「ここは立ち入り禁止だ。立ち去れ」

 見張りの男は尚も言葉を繰り返した。


 この機械的な言い回しもそうなのだが、量産型遺伝子操作人間(デザイン・クローン)と見て間違いない。

 マオのつけている首輪から、相手の生体反応が送られてくる。そこには、はっきりとクローンである反応が出ていた。

 彼らは見張りとしての命令しか受け付けておらず、生真面目に仕事を全うしているだけの様だ。

 なんだかんだマオが上手い事見張りを引き付けられているので、とりあえずミオに指示を出した。

〈チャンスだ。今の内に皆を侵入させよう〉

「了解」

 首輪から発せられる僕の声に静かにミオは応えると、後ろにいる仲間に相槌をして見張りの後ろを通り過ぎようとした、がしかし。

「貴様ら!そこで何をしている!?」

 しまった。気づかれたか!

 もう一方の見張りが、廃研究所に近づくミオ達に気付き、大声で叫んだ。

 ごめん、完全に僕の判断ミスだ…。そりゃ、見張りが一人な訳無いよなー。

 マオが引き付けていたクローンも、仲間の元へ駆けつけようとした。するとマオがその腕を掴み。

「えいやっ!」

 見事な叩きつけで、見張りの一人は一発ノックアウトとなった。

「こちら二一四一番。侵入者を確認し―――」

 ぼとり、と頭が落ちる。自慢の脚力で地面を蹴ったサヤが、すれ違い様男の首を切り落としたのだ。


「やられた。今ので増援を呼ばれたわね」

 冷静に状況を見るミクにチサが言った。

「せやけど、うちらにとっては好都合や。これでコソコソせんと、堂々と殺れるで」

「フッ我が力、存分に見せて―――」

「ハイハイ、そんないつも通り中二病全開なアカリちゃんはほっといて」

「ちょっ、ナナミちゃん!?」

「私たちが道を開けるから、皆は先に行って」

「ん。わかった。予定通りに」

 コクりとナナミを前に頷くミオ達に、他の見張り達が集まって来たようだ。

 アキラが送信されている映像と情報から、敵の数と戦力を分析する。さっきもそうだが、首輪には周囲の生体反応をスキャンする機能があり、その結果、全て量産型遺伝子操作人間デザイン・クローンである事と、獣人の反応が出ている事が解った。

 先程対処した二人もそうだったが、獣人化する前に始末出来て何よりだ。

 数は五、種類(タイプ)昆虫型(インセクトタイプ)獣型(ビーストタイプ)が三対二に別れている。

〈増援はまだ来ていない。突破するなら今しかないぞ!〉

 その言葉を境にアカリはアサルトカービンを、チサは二本のファインディングナイフを、ナナミは銛を。三人がそれぞれ武器を構える。


 本来の作戦では、見張りの相手はマオ達の役目だったが、人数変更と臨機応変に基づき役割も多少変更した。

 アカリ達は確かに実戦経験こそ薄いが、ああ見えてタフな連中だ。そうそうやられはしない。

 一方、クローン達は獣人態へと変貌し、モニター越しでそのおぞましさを目の当たりにする。

〈うげぇ!?〉


 獣型(ビーストタイプ)の獣人は、大きな丸っこい耳と口に出っ歯のあるハツカネズミだった。すぐに数が増えるという意味では、ネズミ科の獣人の大量生産はやり易い所があるのかもしれない。ただ―――

 昆虫型(インセクトタイプ)の獣人。こちらは長い触覚に黒く茶色い光沢のある昆虫類―――そう、危険生物G(ゴキブリ)だ。

 昆虫型(インセクトタイプ)の獣人というのは、どれも人の外観を完全に失っているが、この手のものは群を抜いている。

 更に言えば、五体中三体がゴキブリ獣人なのだから、趣味が悪いったらありゃしない。

 今回、やっぱり行かなくて良かったかも…。

 

 三人が引き付けている間にミオ、マオ、ミク、サヤ、アキ、ユウカ、ミサ、ヒトミ、フミナ、ミツバが各々敵を無視して駆け抜けて行く。

 当然、獣人達も侵入させまいと追いかけようとするが、アカリがカービンを打ってその足を止めさせた。

「フッ!脆弱な虫ケラ共が。我を無視するとは良い度胸を……わっ!ちょせめて最後まで言わせて~」

 片手で眼帯のある方の目を抑え、前髪を上げるような仕草をするアカリに、ネズミ獣人が襲い掛かる。

 格好つける際、カービンを二丁とも下に置いていた彼女は丸腰のまま逃げて行ってしまった。


 彼女が何がしたかったのか、理解出来なかった他の獣人は一瞬だけ首を傾げるも、直ぐに眼前の侵入者の排除へと向かう。

 相手が相手だけに動きが素早く、カサカサとした動きで一気に距離を積めてきた。

「うえぇっ!?気持ち悪い!」

 ナナミが悲鳴を上げた。

 人間大になったゴキブリを間近で見るとなると、声の一つは上げてしまうのは当然だろう。僕だった多分失神する。

「ここは火星やないやろに…ええい、うっとしい!」

「流石ゴキブリ、しつこい上に頭いいなぁ」

「感心してどうすんねん…あっ、くそう!」

 素早い脚を持つゴキブリには翅もあるため、空中にも戦闘を運んで思いの外ヒット&アウェイを繰り返してきた。

 足が速いだけならチサも対応はできるが、空を飛ばれてしまっては御手上げだ。そのため二人は懸命に攻撃を仕掛けるも、ただ空を切る事しかできなかった。


 一方、アカリは未だネズミ達に追いかけられていた。やろうと思えば武器無しでも反撃は出来るだろうが、土壇場では中々スイッチが入らないらしい。

「全く、アカリはさっきから何しとるんや」

「あはは…逃げてばっかだね」

 逃げ回る彼女を見て呆れる二人だが、敵はその暇を与えない。

「誰か~武器、武器とって~」

「こっちも手がいっぱいやさかい。自分でなんとかせい!」

「そんなこと言わないで~」

 先程までの威勢はどこへやら、アカリの目には涙が浮かび、無様にも両手を挙げている。ねだる声はほぼ叫びにも近かった。


 因みに、アカリのスイッチの入れ方には三パターンある。

 一つ、眼帯を外したとき。

 二つ、武器である愛用のアサルトカービンを構えたとき。

 三つ、頭を強く殴られたとき。

 今なら眼帯を外して一つ目の条件をこなせば良いのだが、必死で走っている彼女はそんな事を考えない。


「ああもう、しょうがないなあ。チーちゃん、ここちょっとお願い!」

「うわっ!ちょっとナナミ!?」

 ナナミはゴキブリ獣人を二体共チサに任せ、地面に置いてあるカービンに駆け寄った。

 何やら作業を始めたと思うと、銛の先っぽから糸を取りだして、それを適当に二丁のカービン銃に巻き付ける。

 実はナナミの持つこの武器は、一見持ち手が太い銛に見えるのだが、彼女の趣味で釣竿モードに変形が可能なのだ。

 また、武器自体は勿論、仕込んだ釣糸もかなり丈夫で、マオが引っ張っても中々千切れない優れものだ。そのため獣人に対する拘束具としても使える。


「アカリちゃん、行っくよー!せーのっ」

「ふえ?」

 ナナミは釣竿モードの銛を大きく振りかぶり、カービンを二丁まとめてアカリに投げ渡した。

「おっとと―――キャッチ!」

 掛け声と共にアカリは愛銃を手にする。直後、逃げる足をくるりと変え、それを構えた。

 瞬間、足を止めた彼女の両肩をネズミ獣人達が、ガブリと噛みつく。巨大な前歯が食い込んでいくが、アカリに動じる気配がなかった。むしろ、痛みすら感じてないように見える。

「フッ、この我は、痛みなど忘れたわ!」

 その状態のまま銃口を突き付け、ゼロ距離で発砲!銃口が吹き飛ぶ可能性もあるが、至近距離での戦闘が強い彼女の為に改造が施してあるので問題はない。

 やがて銃弾が治まると、ネズミ獣人達は糸が切れたように倒れていった。


「お、あっちは終わったみたいだね」

「せやな。ほなこっちも、方つけたらなアカンな!」

 アカリにカービンを渡し終えたナナミが戻り、二人も勢いに乗せて気合いを入れ始める。

「あ、待てっ!」

 本能的に不利を感じたのか、ゴキブリ獣人が撤退を始めた。しかし、戦いの最中(さなか)に背を向けた事により勝敗が決する事となる。

 チサは四つん這いの姿勢を取るや否や手足を獣化させる。そして、勢い良く走り出した。

 ネズミ科であるハムスターのそれでゴキブリ達に追い付き、空を飛ばれる前に翅を破壊、正確には背中を切り裂いて翅を落とした。

 パタパタと切れた翅とそれを覆っていた外殻が地面に落ち、獣人は悲鳴を上げる。キィィィィという、木が軋むような叫びだった。

「せいっ!」

 そこに更に、チサがナイフを打ち込む。二本のナイフの柄と柄を合わせ、後はトンカチの要領で力任せに背中からえぐった。

「これで―――終わり!」

 銛を正面から獣人の胸に突き刺し、ナナミは一気にそれを引き抜く。銛の返しを利用し、心臓を体外へと排出させてみせた。

 内臓をえぐられた二体の獣人は、同じように地面に平伏す。

「やった…かな?」

「はあ――はあ――思ったより手強かったね」

「さ、ウチらもはよ行こや。まだ始まったばっかやし次のこともやらなアカン」

 戦闘が終了し、余韻に浸る二人だが、チサの言葉を受け取ると、三人はユウカ達の後を追った。




――A.M.0:24――

 アカリ達が入り口で奮闘していた頃、先に突入したミオ達も工場内部で戦っていた。

 相手はもちろん獣人だが、人間も何人か混じっている。ただし、全員クローンばかりだ。悲しい事だが、使い捨ての人材はここでもきちんと役割をこなしている。

 当然、こちらも躊躇はない。むしろ相手が量産型遺伝子操作人間(デザイン・クローン)なら、これ以上にやり易いものはない。

〈ここを突破して、もっと地下を目指してくれ!そこに《BAD》や《キメラ》の保管施設があるはずだ〉

「了解。最短で遂行する。状況開始」

 ナイフを構え、決め台詞を言い放ったミオが敵の群れに突っ込んで行く。

 相手の獣人は入口(うえ)と同じでゴキブリとネズミばかりだった。これを見た僕は当然気持ち悪くなったが、そんな事を一々気にしているわけにはいかない。―――実はこの獣人達を見て、ミオが「美味しそう」と呟いた気がするのだが、それも気にしないでおこう。

「あっ、ミオさん待って下さ~い」

 遅れてマオ達も後を追う。


 数は多いものの、狭い通路の中ではあっちの方が不利だ。

 ミオは壁や天井を蹴って縦横無尽に跳び回り、猫の反射神経を応用することで確実に敵を仕留めている。

 マオに至ってはシンプルに凪ぎ払っているだけだ。持ち前の怪力は獣人達を次々に撥ね飛ばし、向かう所に敵は居ない。

 ミクも猪突猛進の通り敵に突っ込んで行く。突進方向にサブマシンガンを打ち放って経路を開け、真っ正面からの彼女はほぼ無敵状態だ。

 サヤは自慢の羽を使って大ジャンプ―――だが、室内なので飛びすぎて当然のように頭を打つ。気を取り直してワイヤー付きのダガーを相手に投げ、突き刺さった所でワイヤーを引いた。その反動を利用して一直線の飛び、鋭い鍵爪のある足で頭を鷲掴みにする。


〈ユウカ、そこから右へ曲がれ。ここからは別れ道だ〉

「了解。アキ!ミサ!行くわよ」

「オッケー、ユウちゃん」

「言われて無くともついていくわよ」

 気持ち良く返事をするアキと、ミサも文句を言いつつ蛇の体で蛇行しながら後を追って行った。

「では我々も、ユウカ様に動向します」

〈ああ、後は頼むぞ〉

 僕の声に了解を示すとメイド三姉妹もユウカ達と同じ方へ走って行った。



――A.M.1:56――

 その後、しばらく進む内に、僕らは段々と不信感を覚えていった。

〈なあ、ミオ。何だかおかしくないか?〉

「うん。おかしい」

 何がおかしいのかというと、先程から敵の数の動員される数が異常なのだ。

 確かに、数で押す戦法自体は何ら不自然は無い。相手が増えることに特化した獣人なら尚更だ。ただ、ここまで来た道は全て通路だけなのだ。

 後ろから挟み撃ちをする訳でもなく、ただ僕らの行く方向のみに現れている。いや、道を塞いでいると言うべきだろうか。まるで、この先に目的地がありますよ、と道案内をしているような気がする。

 それに、あれだけ警戒していた《ヴォルフガング》の姿も見えない。まだどこかで待機しているのか、それとも……。


 そんな風に考えていると、モニターに()()()の生体反応が記されていた。

〈ミオ!危ないっ〉

 首輪から僕の声が発せられた瞬間、一つの弾丸が彼女に迫った。

 ―――キィン…!

 静かな金属音が鳴ったかと思うと、足元には二つに切り裂かれた弾丸が転がっていた。

 これは飛んでくる弾丸を瞬時に捉え、軌道を読んで斬り裂く、常に高い集中力と動体視力をもつミオだから出来る荒業だ。


 一行は弾の軌跡を辿る様に視線を向けると、そこに居たのは白銀の毛並みの髪と耳、そして尻尾を出した女性。そして長い前髪の隙間から漏れでる赤い眼光を放つ黒い少女。

 正しく、《吸血牙狼(ヴァンプウルフ)》の二人だった。

「レイコ、サナエ―――!」

 ミオが彼女達の名を口にしたとき、サナエが狙撃銃の引き金をもう一度引いた。

 しかし今度の銃弾は空気を裂き、ミオの足元で外れる。

 サナエの銃の腕前は、例え一キロ離れていても当たる正確さだ。まして、こんな距離で外すことはまずあり得ない。

 実をいうと、これは()()なのだ。ここに目的のモノがある、ないしはこの先は危険であるという。どっちにしろ、先に行く事には代わり無いが。

 この状況、この展開、これはすべて演技だ。レイコもサナエも、知っての通り僕達の優秀なスパイであり仲間(かぞく)なのだから。


 《吸血牙狼(ヴァンプウルフ)》は、元ヴォルフガングのスパイとしての実績があり、それを利用して裏社会の内通者(コウモリ)として情報収集をしてくれている。

 今時傭兵を雇う所も少ないが、表向きにはそんな所だ。ただ、「元ヴォルフガング」というだけで、彼女達の評価は大きいらしい。特に、依頼主は《BAD》に絡んだ所がほとんどで、場合によっては殺人を依頼されるケースもあるとかないとか。

 

 サナエが直ぐに銃のリロードを始めると、レイコが何の前触れもなくミオに襲い掛かってきた。

 武器は出さず、ひたすら徒手空拳による蹴りや拳、そして爪を繰り出してくる。

 ミオもそれに対応し、攻撃の直前にナイフを仕舞う。そして、相手の攻撃を受け流しつつ、的確に反撃を入れようとする。

 お互いにスピードに長けている為、一瞬モニター越しで見えない一撃がちょくちょく繰り出される。狭い通路の中でこれだけの殴り合いが出来るのは、流石と言う他無い。


「流石ね、ミオ。腕は鈍ってないようだな」

 冷ややかな声でレイコは口を開く。そこにいつ見ても醜悪な笑みを浮かべている。…あれ、本当に演技だよね?後ろでアキラも引き吊っているんだけど。

「そっちこそ、元気そうで何より。ご主人様も喜ぶ。…こんな状況でなければ」

 互いに猛攻を仕掛けながらも、二人の会話には余裕が見えていた。しかし、こんな熱いバトルに水を指すように男の声が響く。


「―――あー、感動の再開のとこ悪いんだケド。そろそろおっ始めてもいいんスかネェ」

 それは爽やかな風のようで、しかしそこに残忍さが滲み出ているような、そんな声だった。

 モニターを確認するが、そこにはミオにマオ、レイコや他の三人以外にその目の前の獣人達の反応しかない。

 アキラにも確認をとるが、やはり、それ以外の生命反応は出ていなかった。

 すると、獣人達が次々に道を開けていき、そこに居たのは緑のパーカーを着けた青年だった。容姿や格好から察するに、彼が報告にあったアルという人物だろう。

 全員が、青年に向けて敵意の視線を送る。

「オイオイ、そんなにこっちをみないでくれよ。恥ずかしいじゃないカ」

 わざとらしく照れるような仕草をとるアルだが、不意に表情を変えた。

「なあ、いい加減、化かし合いよそうゼ。アンタらもそろそろそっち側に戻ったらどうだ?」


 こいつ、知っていたのか!?レイコとサナエの素性を。

 僕やマオ達はその事実に驚愕したが、レイコやサナエに動じる気配は無い。どうやら、薄々気づいていたらしい。

「やはり、知っていたか」

「まあネ。こっちにも色々と伝があってサ」

「ほう、ならその伝というのを教えて欲しいものだな」

「いやいや。いくらアンタでも、そこまでは教えてやらねぇヨ」

「なら良いさ。ここで捕らえて洗いざらい吐いて貰うからな!」

 ナイフを構え、レイコは俊足でアルの寝首を掻こうとした。だが、その刃は他の刃やいばよって食い止められていた。


 黒いマント。白く、模様が髑髏(ドクロ)にも見えるような仮面をつけ、大鎌を持ったその様は、正に《死神》だった。

「なっ…貴様!」

 状況を見たレイコは咄嗟に飛び退いた。

 サナエが銃で撃つが、相手はそれを先程のミオのように弾いて見せた。

 だが、驚く理由はそれだけではなかった。あの仮面は、以前にも見た事がある。

 そして、あれを見て異常なまでの反応を見せたのが、ミクだった。

「お前、お前は―――!」

 一歩ずつ、一歩ずつ、怒りを露あらわにした彼女は、既に獣人化していた。

「ようやく―――見つけた―――!死神―――‼」


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