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時守る竜がないた国  作者: 薗崎葵
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序章

 肺の中に冷たい空気がどんどん溜まっていく。呼吸するたびに喉の奥が締め付けられる様な痛みに襲われ、口の中には、血の味が広がった。

 十歳の少女の身には余る重荷を、必死に抱えながら、少女は走る。森の中。木々は少女に道を開けた。少女の行く末を見守るように、木々は少女を見送り、その道を閉じた。雨ですら、少女を守るかのように、激しく降り注ぐ。そして、少女の足もとだけは固く平たく広がった。今この瞬間。森羅万象が、少女の味方をしたのだ。けれど、少女はその事実に気が付くことはなかった。それどころか、今の少女には、全てが、敵に見えた。少女を擁護している全てが、彼女には災難であり、天災だった。

 ドレスの裾が少女の足に纏わり付き、地面に倒れ込む。美しかった少女もドレスも、泥だらけになり、くたくたになっていた。

 もう体が動かない。

 傍らには、少女の腕の中から零れ落ちた剣があった。クリスタルで生成された美しい剣は、雨に濡れ煌めいていた。少女は起き上がることもせず、剣にただ手を伸ばした。

 「私なんかが……継承してしまって、ごめんなさい……」

 擦り切れた小さな声で、少女は剣に語りかけた。剣を握りしめる。少女の冷えて悴んだ手の中で、剣は僅かばかりの温もりを感じた。

 体は芯から冷え切っていたが、急に目頭が熱くなる。

 私が未熟だからこんなことになってしまったのだろうか。私が、何も知らない子供だから、無知で何もできない人間だから、こんなことになってしまったのだろうか。私がちゃんと、もっと勉強をしていれば。私に、もっと行動力と覚悟があれば。

 「未来は……違って、いたのかな」

こんな私に、この剣を独りで背負っていくことができるのだろうか。この重みに、耐えられるだろうか。

 「ごめんなさい……」

 そのまま、少女の意識は無くなった。木々は少女の周りを囲い、雨を凌ぐ屋根を作った。動物達も集まりはじめ、少女と共に暖をとった。雨や木々、動物たちに守られ、少女は森の奥深くで眠りについた。

 少女の名は、エミリア・クワルツ・ド・ロッシュ。神に愛された、時守の少女である。


こんにちは。薗崎葵と申します。

今作は長編小説となっていますので、お付き合いいただければ幸いです。

よろしくお願いします!


pixivやcomicoにも同じものを掲載しています。

Twitterでその都度お知らせします。

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