分与…【終】
俺は両親が嫌いだ。こんな屑達の元に産まれたことを憎んだ。 この世界に、優しさなんてないんだと学んだ。
クラスの奴らが憎かった。 ヘラヘラと笑って、些細なことで不幸だと嘆いて。 自分たちが恵まれていることに気づきもせずに生きている。
それが許せなかった。 まるで俺が不幸を背負うことで、周りの奴らが幸せを感じている気がして。 不公平だ、不平等だ。
こいつらを傷つければ…… 俺は少しでも幸せを感じれるんじゃないか? 俺は望まぬまま不幸ばかりを背負わされてる。 お前らは、望まなくても幸せを手に入れている。 なら、お前らがもっと不幸になれば、俺の分の幸せが産まれるんじゃないのか?
たくさん傷つけた。 悪い気はしなかった。むしろ、周りの奴らが傷つく姿に一種の快感を覚えた。
……だから、気づくのが遅れたんだろう。
屑人間 社会のゴミ 低脳 害虫 早く死ね
そんな言葉が、家の扉や壁を埋め尽くしている。 …誰が? と考えて、思わず笑ってしまった。 『誰』なんて、特定の人物の行動ではない。 これは、俺が傷つけた幸せの数だ。
この数だけ、俺は傷つけたのだ。 幸せを、奪ったのだ。 ……こんな簡単なことにも気づかないなんて。 奪うだけ、奪われるだけの人間なんていないのだ。
俺が、誰かを傷つけ幸せを奪ったように。俺が得た、ほんの小さな幸せでさえ。誰かに傷つけられて……… 奪われるんだ。
おかしいのは。俺か? 俺以外の誰かか? それとも……
この、世界そのものか?
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ーーおかしいなら。 正せばいい。
ーー狂ったなら、壊せばいい。
ーーそうすることで。この不幸が終わるなら。
ーー世界の狂いを、狩りつくそう。
【狂狩】 終……
お付き合いいただきありがとうございました。 また、機会があれば。