挿話
いつか夢を見ました。
干涸びた土の上にいました
相も変わらず其処には虎がいました。
伏せて前足に頭を預けていました。
ー毛並みは前より少しだけ色が薄くなったような気がします。
おい、と話しかけても反応がありません。
何度も話し掛けると瞼を動かして糸目になりました。
いつもどおりの仕草です。
お前は変わらずだなと言ってやりますと
すると、そんなことは無い、と言われました。
大きくなったり小さくなったり、をさなかったり年老たりする。外見はころころ変わるものだ、と。
しかもこの景色なんてころころ変わる、土砂降りの大雨になったかと思えば、一気に日が差して草木は赤や黄色に咲き誇り、楽園に変貌を遂げるものだと付け加えました。
私は苦しく無いかと聞くと、
苦しいさ、だが此れが私だ。と言い放ちました。
其の姿は真に悠々として、ですが其の眼は前を向き強く主張して、目を離すことは出来ませんでした。
私は震えました。体の中心でカッと火山が噴火した様に打ち震え、込み上げて来ます。
此れだ、と私は思いました。
此れこそが
『 』。
私は息を久し振りについで、目を閉じました。
今夜はよく眠れそうです。
さあ、それでは答え合わせをしよう。
此処は何処か
ーーわたしのこころ
虎は何か
ーーわたし
じゃあ私は
ーー
What do you think about "me"?