一日目
一日目は、短編『夢』と同じものです。
夢を見ました。
目を閉じると、其処は険しい細道でした。そんな印象でした。
木々は疎らで苔や小さな葉が一面に生えたなかで、一本の剥げているものだったので獣道かと思われました。
ー以前、父と訪れた広島の吾妻山の情景を模倣したのかもしれません。
私は、手持ち無沙汰になって仕方なしに下る為にゆっくりと歩き始めたのでした。
ですが、私は居ても立っても居られなくなって、次第に脚は早まり、遂には走り始めました。
ーどの位経ったのでしょうか。
ちょぼちょぼという音聞こえました。
小川が流れていたのです。
その川は道に沿うようにゆるりとしているのでした。
その頃には木々の皮がつるつるしていて灰を被った様な色ではなく、赤褐色の歳を重ねた様な険しい皺を持っていました。
私の脚は走り続けます。
やがて道の険しさから角が取れてきたように感じました。
それでも私の脚は走り続けます。
ふいに私はそのはやる足を止めました。
ーその欲求が吸い取られたようにさっぱりなくなったのです。
そして如何しても振り返りたくなったのです。自分が今通ってきた道を。
果たして、其処に居たのは少女でした。
私の直ぐ後ろに彼女はいました。
背は私のより2周り小さく、手足はそこらの棒きれのように細く儚いものでした。
ですが、その幼顔の頬は林檎のように赤らみふっくらとしていて妖艶さ漂っていました。
少女は目をパチパチと瞬かせながらもジッと私の顔をみています。
誰かに似ている、漠然とそう思いました。