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第1話(2)

 1人の少女が街中まちなかを走っている。

「はぁ、はぁっ、はぁ、はぁ・・・」

 急がなきゃ、急がなきゃ、急がなきゃ。

 私の名前はアネスティー。

 アネスティー・ノーステルダム。16歳。

 もうすぐ授業の時間だというのに、寝坊して遅れそうだ。

 ピョンと跳ねた寝癖も直せてないのに。

「おやアネスティー、また寝坊かい? これ、持って行きな!」

 八百屋のおばさんに林檎を投げられる。

「おばさん、ありがと!」

 走りながら上手く受け取って、一口ひとくちかじる。

「嬢ちゃん! 眼鏡と帽子、ずれてるぞ!」

 魚屋のおじさんに陽気に笑われる。

「あ、ありがと!」

 ここの商店街はいつも賑やかである。

 なんだかんだで、皆が道を譲ってくれる。

「アネスティー! 遅刻かい?」

 占い屋のお姉さんに呼び止められる。

「あ、はい!」

「だったらウチのバイクに乗りな。おーい、ジオ! あんたも遅れそうなんだろ? さっさとアネスティー乗せて行きな!」

「わーってるよ姉ちゃん」

 母屋の奥から気怠そうな男の子、顔なじみの同級生:ジオが頭を掻きむしりながら出てきた。

「マリンさん、ありがとうございます」

「いいって。それよかアンちゃん」

 アンちゃんとは私のニックネームである。

「何ですか?」

「もしかしたら今日、授業行かなくていいかもよ? 占いにそう出てる」

「?」

「行くぞメガネ。乗れよ」

 ヘルメットにゴーグルを付けたジオが呼ぶ。

 マリンさんの占いの内容が分からないまま、私を乗せたバイクは走り出してしまった。


 原付バイクで土の道路を駆ける。

「いつも言ってるけど! 私はメガネじゃなくて、アネスティーって名前があるんだからね!」

「あぁ!? メガネかけてるんだからメガネでいいだろ?」

 バイクの騒音で、いつも以上に声が大きくなる。

 学校。街の中心部にある大きな塔はもう目の前だ。


「間に合ったぁぁぁ・・・!」

 息せき切って机にへたり込む。

「あんた、いっつも遅刻ギリギリに来るわねぇ」

 前の席にいるクラスメイト:ナオミが話しかけてくる。

「だってぇ・・・時間が待ってくれないんだもん」

「時間は待ってくれないものよ、アネスティー?」

「ううぅ・・・」

「あんたは目覚ましかけるくせに二度寝するんだから」

「返す言葉もありません・・・うう」

 こんなやりとり日常茶飯事。

 いつも通う学校の、いつも見かける、いつもの風景だ。

 学校と言っても、ただ勉強する場所じゃない。

 いわゆる職業訓練学校みたいなものだ。

 大破壊の後の世界では、昔のような教育は何の役にも立たない。

 しかしだからと言って今までのスタイルが覆るかというと、そうでもない。

 文字など、今までの教育で必要な部分は残しながらも、自分に適した職、自分がやりたい職を探しながら友好の輪を広げて将来での仕事のやりとりを円滑にできるようにしよう。

 というのが大まかな狙いである。

 まぁ正直、将来何をやりたいかなんて、まだ何も決まってないんだけど。

「大変だ! 街でパンドラ・フェイカーが暴れてるらしいぞ!」

 と、のんびりしてた矢先に一報が舞い込んできた。

 パンドラ・フェイカーとは、つまりは大破壊によってもたらされたパンドラの箱の欠片を得る事で開花した能力者のことである。

 最近はそんな騒動もあまり聞かなかったのに。

 みんな退屈なのか窓辺に詰め寄ったり、外に出て見聞しようと野次馬になっている。

 く言う私も野次馬の1人だったりする。

 てへ。

 ここは3階だから比較的に見渡せる場所にある。

 見ると酒場から大男と優しそうな青年が対峙しながら出てきた。

『貴様ぁぁぁ! この俺を、この俺を「暴動」のニコラスと知っての狼藉かぁぁぁ!?』

 大男が叫ぶ。

『そんな狼藉というほどでは。ただ、皆が楽しむ場所で暴れるのはどうかと言っただけで――――』

『ぬああああぁぁぁ!!』

 優男の弁明にも関わらず、大男が突進する。

 あ。

 ダメだ。

 あれは話が通じない人だ。

 このままじゃ、あの優しそうな人は潰される。

 だというのに、あの人は手にした木製の杖を掲げて、真っ直ぐニコラスのほうへ向けている。

『きゃあああぁぁぁ!』

 目を閉じた女性陣の悲鳴。

 あぁ、潰される・・・。

 と思ったのに、大男ニコラスの勝ち誇った声が聞こえない。

 恐る恐る目を開けると、杖の真正面ギリギリで大男の拳が止まっている。

 文字通り、止まっている。

 いくら力を入れても拳は進まない。

 どころか、彼の体さえも動いてないのでは?

『だめですよ、短気を起こしては』

 たしなめる優男。

『短気は損気。って、お母さんに言われませんでした?』

 困ったような顔しながら。

『ぐっ・・・このぉ!』

 だが大男は力ずくで押し通すつもりだ。

 空間がひび割れたように動き出し、拳が徐々に前進する。

『あれま』

 予想外だったのか、優男が情けない声を上げる。

 ひびは段々と拡大していく。

『あらあらあらあら』

『暴動の力を舐めるなよ!』

 押し切られるか・・・!

『だからお主は詰めが甘いのでござる』

 聞こえた途端にサムライが現れる。

 どこか芝居がかった口調だが、その瞬間、ニコラスが崩れ落ちる。

『かっ・・・!』

 ドサリ。

 あっけなかった。

 何が起こったのかハッキリしなかったが、大男はそのまま警察に連行され、対峙した優男とサムライもどこかへ立ち去ってしまった。

 能力者を倒すなんて、何者だろう?

 暴動のニコラスって言ったら、つい先日の強盗事件の主犯じゃないですか。

 あの2人、何者なんだろう?

「アネスティー? いる? おじいさまがお呼びですよ」

「はーい」

 先生に呼ばれて、それ以上考えることはできなかった。

 ノリです。勢いです。

 以上。

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