Chapter 1 「なんとなく」
部活もやらず、勉強も頑張らず、彼氏も作らず(作れなかった)、なんとなく過ごしてきた夢も希望もない高校生活ももうすぐ半分を過ぎようとしていた。
私、いつからこんな冷めた人間になっちゃんだろう……
退屈な授業が終わり、仲の良い友達が部活に行くのを見送った後、学校の最寄り駅のホームのベンチに座り、電車を待っているといつも夕方の独特の寂寥感を感じながら真は小声でそうつぶやくはずだった。
でも、今日の私は別の言葉をつぶやいていた。
私、別の世界に行きたい……
今から思えば、私はもう退屈な日常や自分への言葉では言い表せないような悲しさに我慢の限界が来ていたのかもしれない。
周りに合わせようとして、お洒落に気を使おうと勇気を出して茶色に染めたけど、赤くなり過ぎた髪の毛を手で弄びながら呟いた。
すると前方から若い男の声がした。
「行けるよ」
「え?」
発言の意味より自分の呟きを聞こえてしまったことを恥じ、素っ頓狂な声を出して顔を上げると、夕日を背にしていて顔はよく見えないが、眼鏡で小太りなおじさんが立っていた。
そして、再びそのおじさんは口を開いた。
「そう、AVならね」
言葉の意味を理解するのを忘れるほどに、夕日が照らしたそのおじさんの顔は気持ち悪かったが、その堂々とした力のある声や立ち姿はなぜか格好良かった。
To be continue………
ひーや