プロローグ
※大丈夫とは思いますが、念のためR15指定しております。
更新は遅くなると思います。気長に待って頂ければありがたいです。
誤字、脱字には気を付けて投稿していきますが、もしもあれぼ指摘して頂けれると嬉しいです。
こんな小説ですが、楽しんで頂ければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
ホームステイ。それは一種の異文化交流だとか、生活体験だとか言われている。その行為の目的がなんであるのかと聞かれれば、自分には分からない。自分には想像もつかない深い目的があるのか、それとも浅はかとも言える考えの下で行われるかも、よくは分からない。強いて分かることは、それが一風変わった一種の行事のようなものだと言うこと。
少なくとも、白海広はホームステイをそのようなものだと思っていた。正確に言えばそういうものだと『思いたかった』という願望なのだが、その解釈を本人自身は間違っていないと信じていた。自身の家ににやってきたその『モノ』の姿を見るまではそう思っていた。
「ホームステイって、なんなんだろうかねぇ……」
薄緑の色が目に優しく思える和式の居間で一人、座布団の上で胡坐をかいてお茶をたしなむ広は上の空を眺める目で呟く。今年で高校二年生となる広にとって、早朝に自宅の和室で一人お茶を飲むと言う行為は繰り返されるであろう毎日の中でも変わらない行動の一つであった。
以前までは、それこそ多少ゴタゴタした日もあったが、割と毎日の流れは一定したものであった。朝起きたら顔を洗って、うがいをして、お手洗いを済まして朝食を作って…
ガラッ!
「おはよう広。今日も冴えない顔でお茶飲んでるのな」
一人お茶を飲みつつ黄昏ていた広の前に、和室の引き戸を開けて入ってくる一人の『蒼い』少女。もっとも、この『蒼い』という表現はあくまでも外見上での印象の話である。
まるで深海のような濃い青色をした長くサラッとした髪。
宝石のサファイアのように澄んでいる青い瞳。
外見上、歳相応であろうその発達している身体に纏う青空のように爽やかな薄い青色のワンピース。
そして、それらを引き立たせる淡くも白い素肌。
地肌が若々しくきれいな白っぽい肌色なのも相まって、彼女はとても『蒼く』見える。黒髪で短髪の広が上下ともに橙色のラインの入った紺色のジャージを着ているのと比べれば、その『蒼さ』は余計に引き立つ。
「前にも言ったと思うが、ここで飲むお茶が好きなんだ。なんというか、落ち着く」
「いつも毎日がハチャメチャだからね。こういう時が一番リラックスできるのな」
「お前が言うなよレヴィ」
レヴィと呼ばれた蒼い少女はその言葉にムスッとした表情を浮かべると広の前に座った。足を伸ばして上半身を眼前の机に持たれかかる様にして座るあたり、その整った顔や身体に相まって可愛げのある女性に見て取れる。しかしながら、そのような姿をした『蒼い少女』を見ても広は大して動じることなくため息を吐いた。
「そんな顔しても事実は変わらんよ」
「まるで私が元凶と言わんばかりの台詞なのな」
「実際そうなんだから仕方ない。お前が来てから毎日が祭りみたいにどんちゃん騒ぎだよ」
「…お祭り、とか言うのが毎日で楽しいとは思わないのな?」
「レヴィ。毎日がお祭りのように騒がしいだけであって、今の毎日がお祭りという訳ではないよ」
なにやら勘違いをしていたレヴィに広がそう話すと、「そうなのな」と納得した様子で一人頷く。そして、なにやら一人考え込むと、やがて独りでに顔を綻ばせた。
「毎日がこうも楽しいと、本当の祭りという日はどれだけ楽しいのかな?」
「祭りって言っても様々だからなんとも言えないが、一般的な祭りは賑やかな人混みとか屋台とかを楽しむものだと考えてくれれば良いよ」
「それはそれで楽しそうなのな」
「もっとも、祭りなんてまだずっと先の話だよ。まだ4月半ばで、新しい生活も始まったばかりなんだ」
「私の知らないこと、まだまだ沢山あるのな」
「ああ、沢山あるよ」
「それは楽しみなのな。『こっち』に来た甲斐があったよ」
まるで遠足を待ち望む子供のような顔で再び笑う蒼い少女。どことなく幼さの影が見えつつも、どこか大人のような雰囲気を漂わせる目の前の少女の姿を見て、広は再び息を吐く。
(こうして見るだけなら、まだ普通なんだけどねぇ……)
心の中で愚痴をこぼしながら、広はこれまでの日常を非日常へと変貌させた元凶とも言える目の前の『モノ』を改めて見つめる。
まるで深海のような濃い青色をした長くサラッとした髪。
宝石のサファイアのように澄んでいる青い瞳。
外見上、歳相応であろうその発達している身体に纏う青空のように爽やかな薄い青色のワンピース。
そして、それらを引き立たせる淡くも白い素肌。
……それだけならば、本当にただの『ホームステイにやってきた異国の女性』で済んだのに。
「現実は非常とはよく言ったものだよ、ホント」
「うん?何を言ってるの広?」
「なんでもないよ、『レヴィアタン』」
「ん、その名前はあんまり呼ばないでって言ったのな」
『レヴィアタン』と呼ばれ、ふてくされたかのような顔をする蒼い少女。
そう、広の目の前にいるその蒼い少女、否、『蒼い少女のようなモノ』は人ではない。今でこそ人の姿をしてはいるが、その正体は全く異なる存在である。
平凡とも言えた白海広の日常を大きく乱し、自身とその周囲の人々をも騒乱な毎日へと変貌させた、少女の姿をした存在。
その正体は『レヴィアタン』。空想と言われていた存在であり、七つの大罪の内の一つである嫉妬を司る悪魔にして地獄の海軍大提督である。