第20話 戦争の影
更新遅れました……
結局、3人とも泊まってしまった。まぁ、いつも広すぎる自宅の空間を持て余してはいるが、それでも女子が男子の家に泊まるのは大問題だ。
「今日は純也に美味しいもの作ってあげよう!!」
「お、お~」
「ま、私の腕前の前にひれ伏させてやるわ」
勝手なことをほざく3人……いや、2人。琴美はなし崩し的に巻き込まれている。つまり、純也と同じ被害者だ。
ちなみに、3人とも料理は上手い。純也内順位では、1位は琴美、2位は奈緒、3位は友紀だ。
理由は、友紀はたまにゲテモノ料理作るし、奈緒は自分が食べたい物優先で、味付けまでもがそうだ。奈緒は甘党なので、甘いものがそれほど好きでない純也には、嬉しくはない。不味くはないのだが……。
一方琴美は純也の好みを的確に押さえてくるし、3人の中でも一番、料理が上手い。
だから琴美だけにしてほしかったのだが……。
「聞くわけ無いよな……」
純也は諦めたようにぼやいた。
食事は、できるだけ琴美の物を食べるようにしたが、さすがに他の2人の物も食べさせられた。
奈緒の料理は、やはり甘かった。玉子焼きも砂糖をふんだんに使っていて、食べただけで体がだるくなるような、そんな味だった……。普段は美味しいのだ、普段は。ただ、張り切るとこんな地獄が具現化する。
友紀は更にひどかった。見た目は悪くないが、素材がひどかった。虫に挑戦していたのだ。どこかの国ではゴキブリでさえ食べていたようだが、今となってはその国も食べていない。そもそも世界の大半はゴキブリを食べるという発想をしない。とんでもない発想力には敬意を払うが、せめて常識的な範疇にしてほしかった。
友紀の珍しい可愛い笑顔に押され、食べざるを得なくなった純也は、ついによくわからん虫を口にした。
「が……ぐぅっ……!!」
外側の味付けはとてもおいしかった。問題は、どうしても味付けが薄くなる内側。友紀は料理が上手い。素材の味は死なさない。
つまり、純也にとっては地獄の始まりだ。
素材……よくわからん虫の味が死んでいなかった。むしろ生き生きとしている。
それが地獄を更に凄まじいものにした。
それを見て、いつになく不安な友紀。
「お、美味しい?」
友紀のキャラが崩壊するほどの不安げな表情。
不味い!!
とは、言えずに死にかけの顔で頷く純也。
どうやら、友紀だけは騙されてくれた。奈緒と琴美は慈愛に満ちた同情の目で純也を見つめている。
純也は目で助けを求める。奈緒は素早い判断で放置を決断。優しい琴美は、散々迷って悩んだ末に……
涙目で頭を下げてきた。
見捨てられた……
そのまま純也は地獄旅行を体験していった……
翌朝
「じ、純也……ごめんなさい……」
琴美が半泣きで謝っている。彼女の視線の先には……
ベッドに寝かされた、純也の死体があった。
かわいそうに……
琴美は、純也を見捨ててしまった自分を情けなく思った。あんなところで命が惜しくなって、大好きな人がこんなになるまで放置していたなんて……。
なんで、あの時に保身に走ったのだろうか。純也を見捨ててしまったのだろうか。
琴美は、純也のような悲劇を2度とおかさないことを胸に誓った。
今日も、純也は幼なじみと一緒に街に出ていた。今は朝。どこに行くのか?
それは……
臨海エリアの海岸だった。海岸部の一部は公園になっており、海が一望できる。彼らはそこに行ったのだ。
「うわー。海だー」
奈緒がはしゃぐ。
「バッカみたい」
冷たいことを言う友紀。
「はわわ……」
友紀を見て怯える琴美。
「は~」
それを見て呆れている純也。なんだか奇妙な空間ができあがっている。
「あ。あれって、第三独立機動艦隊だよね。戦艦がいっぱいだよ!!」
奈緒が言うので、友紀と琴美も奈緒の隣に行く。
「うわ……壮観ね」
「はう……純也はあれに乗ってるんだ……戦艦がいっぱい……」
彼女達が言ってる戦艦は、‘軍艦’という意味だろう。なにせ、見える範囲で一番大きいのは大和級巡洋艦だ。
3キロ以上離れているが、やはりデカい。
そんなことを思っていた純也は、ある気配を一瞬だけだが感じた。
……誰だ?
今の気配は危ないものだ。殺気を纏っていた。
純也は私服の腰に隠していたハンドガン型レールガンを掴んだ。抜きはしないし、何気なくポケットに手を突っ込んでいるフリをする。実際にはポケットに手を入れてはいないが。
幼なじみ3人の近くまで歩き、3人に小声で呟く。
「基地まで行こう」
「えっ? なんで?」
奈緒の疑問。それは、友紀も琴美も同じだった。だが、彼女達は純也の引き締まった表情を見て、ただ事ではないことを感知する。
純也も、この状況で嘘をつくほど余裕がないので、端的に言う。
「気のせいかもしれないけど……敵だ。多分、傭兵。日本人か、それに似た誰か。殺気がある。早く基地へ。慌てるな。見つかったことを知れば、容赦なく殺しにくる。まぁ、対象は俺だろうけど」
その言葉に3人とも息を呑む。
今まで平和に暮らしてきた3人には、いきなりのことで、驚くのも無理はない。
だが、敵はいる。気のせいか、と思ったが、やはりいる。
「さ、行くぞ」
純也は3人を連れて、基地に向かった。
「ちっ……ターゲットが我々の尾行に気づいたぞ」
「バカな……」
「民間人3人も一緒だな」
「まとめて殺すぞ」
「クライアントの意向は、何としてでも最新型戦闘機のパイロットを消すことだ。奴らの最新型戦闘機は、適合者でないと扱えないという情報は得ているそうだしな。これ以上、日本に強くなられては困る」
「日本が勝ってしまえば我々の仕事も減りますしね」
「その通りだ」
十数人の私服の傭兵達は、民間人のフリをして純也達に襲いかかろうとしていた……
「聞こえるか、親父!?」
純也は携帯で父親を呼び出した。
「純也か!? 大丈夫か!?」
「その台詞がでるということは、状況がわかってんだな?」
「ああ。UMSばかりに気をとられていて、他のPMCの動きに気づかなかった。……お前の友達が向かってるから安心しろ」
「友達……? 艦魂か?」
「ちがう。デッドフォースだ」
純也は海岸線の道路を歩き、わざと人気のない路地に入った。
案の定、奴らが姿をさらけ出した。
「貴様、《バクガ・タイプ》のパイロットだな」
《バクガ・タイプ》という、わけのわからない単語を聞いて3人の少女達は襲撃者達に怯えながら、純也を見る。
「ああ。そうだ」
「死んでもらうぞ、ジャップ!」
「古い呼び名だな……だが、死ぬのはお前達だ」
彼らがいるのは狭い道路。襲撃者達は、先回りができなかったために、純也の10メートル前に全員いる。
そして、純也の近くの路地から完全武装のパワードスーツ兵4人が現れた。
さらに、襲撃者達の背後にも12人。
襲撃者達の数は12人。
数も質も負けている。なぜなら、このパワードスーツは5・56ミリライフル弾を完全に防ぎ、7・62ミリライフル弾に撃たれても簡単には破壊されない。さらに、着ているのが世界最高峰の特殊部隊。
「お、おのれぇ……」
「奈緒、友紀、琴美……目を瞑って耳を塞げ」
3人とも純也の言うとおりにする。
「ファイア」
デッドフォース部隊の隊長らしき人物が言った。その声は、パワードスーツのスピーカーを通していて、電子的な音声に変換されているため、人間の声にはとても聞こえない。
「うぐぁっ!!」
「ぎゃあ!!」
12人の襲撃者達は鮮血を撒き散らして、醜い肉塊と化した。
大和
「ヒドいです……」
作者
「あ、あはは……」
近江
「てめぇ……覚悟できてんだろーな?」
作者
「な、なにを……」
近江
「更新おそいんだよ!!」
近江、M60機関銃を取り出す。
作者
「や、やめ……」
近江
「うるさい!!」
ズダダダダダダダ……
作者
「うぎゃああああっ!!」
近江
「鉄拳制裁完了」
大和
「‘拳’じゃないし……。制裁というか粛清?」




