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永遠の魂  作者: 突撃バカ
2/23

第1話 核融合エンジン搭載型巡洋艦『大和』と艦魂

第1話です。

どうぞ!

2089年2月1日。

この日、若き少年士官が日本軍に入隊した。


「ふえ~。けっこうでけーよな……」

その少年士官……谷水たにみず 純也じゅんやが言った。

彼がいるのは日本軍横須賀基地だ。その基地内のドックに彼は立っていた。そして、目の前には巨大な艦影。

核融合エンジン搭載型巡洋艦『大和』である。世界初の核融合エンジン搭載型艦船で、指向性エネルギー兵器を装備している。

正確にいうと、

三連装対艦レールガン5門

二連装対空レールガン18門

十五連装VLS2基

高出力レーザー砲3基

粒子エネルギー砲1基

……である。

さらに8機のVTOL機を搭載できる。

外見的には旧世代の航空戦艦に近づいた感じだが、装甲にステルスコーティングをしており、レーダー波のほとんどを吸収する。

まさに、世界最強の戦闘艦といえる。

そして、谷水 純也少尉は18歳にして、艦載機のパイロットとして『大和』に乗艦するのだ。



彼の機体は《Fー6 烈火》という、第7世代戦闘機だ。

まだ烈火は届いていないらしく、大和の格納庫がガラガラだ。

純也は『大和』に乗り込み、艦内を探索することにした。

訓示は明日だ。


巡洋艦とはいっても、規模は戦艦レベルだ。探索はとても充実したものとなった。

「外から見てもデカいけど、中から見てもデカいよな~」

などと、純也が当たり前のことを口にしていると、前方の曲がり角に15歳ほどの女の子が、チラリと見えた。

「なっ!?」

純也は唖然とした。女の子が何で軍艦に?

だが、さっきの女の子は士官服を着ていた気がした。そんなワケがあるはずないのに。


とりあえず、女の子が向かった方向へ純也は走り出した。





「う~ん……どこへ行ったんだ?」

純也は完全に見失っていた。艦内は広大で人捜しには苦労しそうだ。

「仕方ない……諦めるか」

そう言って、純也は引き返そうとした。

だが、その目線の先に、自動ドアから出る女の子が現れた。

その女の子は純也の視線に気づいたのか、純也を見詰めた。

女の子は腰まで届く黒髪で、顔は幼い。15歳くらいだろう。その女の子はパチパチと目を瞬かせながら口を開いた。

「あ、あの……もしかして、私がみえます?」

「うん、見える」

純也は即答した。

「う、生まれて初めてです……。私が見える人にあえるなんて……」

女の子は恥ずかしそうに言った。とても恥ずかしがり屋なようだ。

「へ?」

純也は思わず間抜けな声を出してしまった。まるで、普通は人には見えない、というような口振りだ。

「す、すみません……言い忘れていました。私はこの艦の艦魂『大和』と言います」

「艦魂……!」

この時代、艦魂は少し噂になっていた。昔から船には魂がある、と言われ続けてきたからだ。第二次・第三次世界大戦でも艦魂の存在が確認されたらしい。

「噂には聞いていたけど、まさか本当にいるとは……」

純也は驚きを隠せなかった。

「はい……。実は私、竣工したばかりなので、他の艦魂はあまり知らないんです」

「へぇ~。そっか、大和は1ヶ月前に竣工したばかりだからなぁ」

「ところで、お名前は……?」

大和は興味深げに尋ねた。

「俺は谷水純也少尉。この艦の戦闘機パイロットだ」

「パイロットなんですか? じゃ、私を護ってくれる人なんですね?」

大和がキラキラした目で確認をとってきた。割と年が近い女の子にこのような目で見られると、少し照れる。

「い、一応そうだけど……。でも、そんなたいそうな事じゃないよ」

「いえ、私にとってはナイト様ですよ!」

あまりの過大評価に少し焦る。

「ちょ、いくら君の艦載機だからって、君ばかり護るわけにもいかないよ」

それを聞いた大和はしゅん、となって、「そうですよね……」と悲しい顔をした。

ここは安心させるべきかな、と思った純也は優しい笑みで言葉をつけ加えた。

「でも、可能な限り君を優先するよ」

その言葉を聞いた大和は顔を真っ赤にした。

「あ、あ、あの……その……あぅ……」

脳内処理が不可能となったのか、さらに真っ赤になって、俯いて黙ってしまった。

今よく見ると、大和はとても可愛らしい。胸とかは成長していないし、幼い顔だ。しかも素直な子だ。人間でもなかなかこんないい子はいない。まるで妹みたいな子だ。

ちなみに、今さっきのいい子は‘大人の世界’での意味ではなく、純粋な意味だ。

「さて、と……。俺は君を何と呼べばいいの?」

「……はっ!」

トリップしていた大和はようやく戻ってきた。

「その……普通に……大和でかまわないです」

「わかった。よろしく、大和」

純也は屈託のない笑顔で言った。

「は、はい! 純也少尉!」

「少尉はいらないよ」

「え? ですが……」

大和は軍服を着ているところを見ると、一応軍人だ。規律には厳しいんだろう。

艦魂は立場的に弱い。何もできないからだ。だが、純也はそんなことを気にしなかった。

「俺と大和は友達だ。だから、純也でいいよ」

「……わかりました。よろしくお願いします、純也さん」

「こちらこそ」

恥ずかしそうにはにかみながら言う大和に純也は笑顔で応えた。

「早速なんだけど、大和?」

「何ですか?」

「この艦の案内頼める? 今日はこの艦を一回りしたいんだ」

それを聞いた大和は嬉しそうに頷いた。

「艦内を見てまわった後、私の妹たちに会いませんか?」

「妹?」

純也は聞き返した。

「はい。2番艦『武蔵』、3番艦『信濃』、4番艦『近江』の艦魂です」

それを聞いた純也は面白そうだと思った。

「会ってみるよ」

「じゃ、そうと決まったら行動です。案内します」

と、言った大和は歩きだした。

……が、何もない平らな床で、ずるっと滑ってべターンと転けた。顔面を床にうちつけている。

大和は鼻を押さえながら起き上がって顔を真っ赤にした。

「す、すみません……」

「大丈夫か?」

純也は大和を心配して尋ねた。

「……だ、大丈夫です」

そう言う大和の鼻から少し鼻血が出ている。

「鼻血出てる。ほら」

純也は軍服のポケットからハンカチを取り出して、大和に渡した。

「あ、ありがとうございますぅ……」

恥ずかしさで死にそうになっている大和の頭を純也は撫でてあげた。

「あ、あの……」

さらに真っ赤になった大和は純也を見る。

「いやぁ……なんだか、鈍くさい妹みたいでさ」「鈍くさくありません!」

大和が根拠の無い否定をするので、純也は笑ってしまった。

「な、何で笑うんですか!?」

大和が抗議を始めた。しかし、それでも笑い続ける純也に、大和は頬を膨らませた。

「私のこと、鈍くさいと思っていますね!?」

「ああ。世界最強レベルの大和級航空巡洋艦の艦魂がこんなんだからな~」

「ひ、酷いですぅ~!」

そう言う大和も心の中では、とても嬉しかった。自分が見える人がとてもいい人だったからだ。




ひと通り艦内巡りが終わった。やっぱり軍艦だ。大して面白いものはなかった。

「純也さん、そろそろ私の妹たちと会いませんか?」

大和が唐突に尋ねてきた。

「そうだな。どこで会うんだ?」

「あの子達、私の部屋をたまり場にしていますから。勝手に大和に入ってくるんですよ? 私の許可なしに」

ちょっとトゲのある口調の大和だが、あまり嫌そうな顔はしていない。何だかんだ、妹たちが大好きなんだろう。

「てかさ、艦魂に自室があるのか?」

「空き部屋を勝手に使ってるだけです」

「なるほど」

艦魂はたいていの人間には見えないから、部屋なんて用意されるわけがない。

「じゃ、行きましょう」

「また転けるなよ」

「転けません!」

純也の言葉に頬を膨らませて否定した大和であった……






大和はある部屋の前まで歩き、立ち止まった。

「ここが私の部屋です。ちょうど3人の声が聞こえます」

確かに女の子3人の声が聞こえる。

大和が部屋の中に入ったので、純也もそれについていった。


様子はというと、ポニーテールの女の子とショートカットの女の子が取っ組み合いをしており、無表情の髪の長い女の子がそれを傍観しているといった状況だ。

「何してるのよ、あんた達……?」

少々呆れた表情で大和が言った。すると、ポニーテールの女の子がいち早く反応した。

「お姉ちゃん、聞いてよ! 近江が私のお菓子勝手に食べたんだよ!」

近江と呼ばれたショートカットの女の子が即座に反応した。

「違うぜ、姉貴! 武蔵のやつがお菓子を沢山持っていきやがったから、1つ貰ったんだ! そしたらいきなりキレやがって……」

「何よ! あんた朝、チョコレート1人で食べてたでしょ!?」

「それとこれとは別だ!」

お菓子のことで喧嘩をしていたようだ。すると、唐突に無表情の女の子が口を開いた。

「……私はお菓子1つも貰ってない……」

『うっ……』

喧嘩していた2人の声がかぶった。大和はため息をついた。

「……大和姉さん、後ろの男の人は……?」

「ああ、紹介するね。私に配属された戦闘機パイロットの谷水純也少尉だよ。艦魂が見えるみたいだから、みんなで仲良くしていこう」

次に大和が純也に振り向き、妹たちの紹介を始めた。

「紹介しますね。ポニーテールの方が武蔵、言葉遣いが荒い方が近江。あの長髪の子が信濃です」

武蔵と信濃は興味深そうに純也を見ていた。近江だけは、純也を睨んでいる。

しかしながら、全員15歳前後の姿で可愛らしい顔をしているため、近江が睨んでも、正直かわいい。

「純也お兄ちゃん、よろしく!」

武蔵はそう言って、いきなり抱きついてきた。身長180cmの純也と比べると、4人ともかなり小さい。だから、武蔵が純也に抱きついても、妹が兄に甘えているようにしか見えない。

純也は微笑みながら「こちらこそ」と言って武蔵の頭を撫でた。

信濃はぺこりと頭を下げて、「……よろしく、純也さん」と丁寧に言った。

近江だけは、ふん、と鼻を鳴らして一瞥しただけだった。悪いことをしたっけな~、と純也は思ったが、まったく心当たりがなかった。……というより、さっき初めて会ったばかりだ。

「近江、純也さんに失礼だよ!」

大和がお姉さんらしく、妹を叱る。しかし、近江は態度を変えずに口を開いた。

「知ったことか。人間なんて信用ならねえ。人間は俺達を道具としてしか見ない。軍艦だからな」

近江は悲しみと怒りが混ざった声で言った。

「だから、人間はポンポン戦争するんだよ」

「それだと、君は艦魂の存在も否定してるぞ?」

「何だと?」

近江は怒りをはらんだ目で純也を睨んだ。

「だってそうだろ? 君は戦争なんていらないと言った。戦争がなければ軍艦はいらない。軍人もな」

「だけど! 人間は俺達が傷ついても何とも思わないんだろ!?」

「君は大事なことを忘れてるな」

「何だよ?」

「艦が被弾すれば、そのたびに人間が死んだり負傷したりする。艦魂1人が死ぬまでに、人間が何人死ぬと思ってるんだ?」

近江は黙り込んでしまった。

「それに、人間の大半は艦魂の存在を知らない。知れば、もっと艦を大切に使うだろう。だが、知らない人にとっては君はただの物、ただの兵器だ。昔からそうなんだ。でも、それでも艦と運命を共にした人だっている。君が何を知って人間が嫌いになったのかは知らない。だけど、君が知っているのは人間の一部でしかない」

「…………くっ!」

近江の態度に変化が現れた。急に涙を流し始めたのだ。

「……この前、軍の実弾訓練の標的に友達が使われたんだ。姉貴達は知らないだろうけど……。俺はスペースの都合で一週間前までは姉貴達と違う軍港にいたんだ。そこで友達になったやつがいた。そいつは老朽艦で五十年も生きてきたんだ。見かけは俺よりちょっと年上なだけだけどよ……。そしてここに来る数日前に実弾訓練があったんだ。空軍の連中が老朽艦の4隻に対艦ミサイルを当てて行きやがった。俺の友達を……殺したんだ……」

近江が泣きながら言う台詞をみんな黙って聞いていた。だが、ここで信濃が口を開いた。

「……でも、その艦魂は幸せだったと思う。……国のために役立って死んだし、五十年もの歳月が彼女に与えた物は大きい」

「けど……けどよ……あんまりじゃねぇか……」

「近江、君はその友達が嫌がって死ぬ姿を見たのか?」

純也は尋ねた。

「……いや、笑ってたよ……。国のために死ぬから無駄じゃないって……だから、俺に泣かないでって……」

「約束守ってやれ」

「………………うん」

近江は頷いた。死んだ友達の心をようやく理解できたのだろう。生まれて1ヶ月しか経っていないのに、近江は友人の死を経験したのだ。

だが、友人が嫌がって死んだわけではないことに気づいた。その友人は軍艦の艦魂として生まれてしまったことを受け入れたのだ。そして、近江も彼女のその決意に気づいた。


「少尉……すまなかった」

近江は素直に謝った。

「まさか、初対面でここまで世話になるとはな」

近江は苦笑いを浮かべた。

「構わない」

近江に対して純也は優しく微笑んだ。近江は目を丸くした後、顔が真っ赤になった。いきなりの現象だ。

「……? 大丈夫か?」

純也が心配して尋ねたが、近江は真っ赤な顔を俯かせて隠した。




そんなこんなで初めて艦魂に出会った純也だった……





ここは後書き空間。

作者にとっては後書きのスペース。艦魂にとっては夢の中の世界である。



大和

「作者さん、大丈夫ですか?」


作者

「何が?」


大和

「文才も時間的余裕もないアナタが艦魂小説なんて」


作者

「地味に酷い言葉が入ってたぞ……?」


大和

「まぁ、気にしないで」


作者

「わかったよ……さっきの話だけど、不定期更新ならいけそう」


大和

「そうなの?」


作者

「何とかね。まぁ、人気なんてでないと思うけど」


大和

「弱気になっちゃダメです!」


作者

「ありがとう……。読んでくれた皆さん、感想とか頂けたら嬉しいのでよろしくお願いします」


信濃

「……よろしく(ペコリ)」


大和

「信濃!? いつのまに……」



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