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永遠の魂  作者: 突撃バカ
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第8話 北京強襲partⅠ

まだ北京強襲はしません。もうすぐです。

3月18日早朝……


第二・三独立機動艦隊の所属の人間は福岡軍港内の軍用機滑走路に集められ、訓辞を受けた。滑走路に集められた理由は、単にこれだけの人数を並ばせるのに必要なスペースが他に無かったからである。

「私は大和艦長及び、第三独立機動艦隊司令長官である、谷水大佐である。我々は明日2000時より、北京強襲作戦を行う。北京の基地や部隊を攻撃し、朝鮮半島への補給路を断つことが今回の目的だ。この作戦によって、味方が有利になるのは明白だ。各員、最善を尽くすように。日本人の誇りを忘れるな。では、解散」

純也の父親は訓辞を終えて、基地の建造物内へ消えた。今は7時。10時には出航だ。


「いよいよですね……」

大和は言った。

「そうねぇ~。でも、大丈夫なんじゃな~い。私達もいることだし~。大和ちゃんはもっと私達を頼っていいのよ~?」

「ありがとうございます。しかし、私達は私達ができることは、私達だけでしなくてはいけないです」

「固いわね~」

苦笑しながら感想を漏らした長門だった。




「…………………」

「どうしたんだ、近江?」

「……少尉か。何でもねーよ」

ここは大和級航空巡洋艦4隻が入っているドックの、艦魂達がよくたむろしている倉庫だ。で、今は8時。9時には各員、自分の艦に乗らなくてはいけない。あと1時間しかないせいか、他の艦魂達もいない。

「何でもないわけではなさそうだな。言ってみろよ」

「……何でもない」

そう言う近江の視線の先には自分の艦体の後部……VTOL戦闘機専用の航空甲板があった。

「……戦闘機部隊が心配なのか?」

「………っ!?」

どうやら図星だ。

「確かに危険ではあるけど……」

前回の航空戦は一方的に殲滅したが、あれは、相手の予想を裏切るようなミサイルの性能のおかげだ。前回は油断していたようなので、今回は気を引き締めていることだろう。前みたいにミサイルを当てまくることは、もう不可能だ。それは、日本軍人全員が理解していた。前回の半分当たれば良い方かもしれない。

そうなれば、戦闘機部隊はドッグファイトに入る。

1対1なら余裕だが、1機に対して4機5機と襲いかかってきたら、さすがに烈火でも危険だ。


「俺は……仲間には死んでほしくねーんだ……」

近江がそう言った。純也は、そういう気持ちも理解していたが、口にしたのは全く別のことだった。

「それは無茶な話だ。更に言うなら不可能だ」

「……な……っ!?」

近江は自分が正論を言っていると思っていたので、一瞬唖然とした。

「みんな生き残る……そんなの有り得ないよ……」

その台詞を聞いて、近江は怒り出した。

「何でだよ!? 有り得ないって!! 少尉は仲間が死んでも仕方ないってのか!?」

「そうだよ」

「なっ……!?」

平然と肯定した純也に驚愕の表情を見せる近江。正直、普段の純也なら、「みんなで生きて帰る」と言いそうなものなのだが……。

「少尉!! なんでアンタはそんなことを言うんだ!? 仲間が生きて帰ってきて何が悪い!? 仲間が死んでも悲しくないのか!?」


近江の台詞を聞いた純也は、やれやれ、といった表情になった。それが、近江の怒りに油を注いだ。

「何もかも知ったような顔をして!!」

そう言って近江は、ついに純也に殴りにかかった。

その近江を純也は底冷えするような目で睨みつけていた。近江は一瞬だけ怖じ気づいたが、その気持ちを振り払って拳に力を込めた。



……なのに……



「うわぁ!?」

拳が純也に当たると確信した次の瞬間、近江の視界は反転した。そして床に落ちた。幸い、いうほど痛くなかった。

だが、その間に近江は理解した。純也にカウンターで投げられたのだと。


そして、近江が立ち上がろうとした時に純也の声が響いた。

「俺が君に言った言葉の真意がわかるか?」

正直、全くわからない。

「近江、君は全員に生きて帰ってほしいと言った。だけど、彼ら……俺も入るけど、とりあえず彼らがするのは戦闘だ。虐殺じゃない。一方的な殺しじゃない。戦闘であり、戦争なんだ。つまり、殺し合い。両方死ぬんだ。自分達が一体何をしているのか、それを理解してくれ」

近江はその言葉を聞いて動きを止めた。

自分が言っていたのは、虐殺や一方的な殺しをするときじゃないと達成できない。

それを今、近江は理解した。

「仲間が死ぬのは悲しい。でも、俺達は先日の海戦で一方的に数千人を殺した。相手にとっては、数え切れない仲間が殺されたんだ。いつか、俺達にもそういう時がくる……。覚悟は決めておけ、ってことだよ」

その言葉の一つ一つが近江の体にずしりずしりとのしかかってきた。自分の願いはただのワガママだったのだ。

「少尉……俺は……」

「近江は優しい子だね」

「っっっ!?」

いきなりの純也の台詞に頭の中が真っ白になった近江。

「いつもは乱暴だけど、本当は仲間思いのいい奴だよ」

「な、何を!?」

慌てる近江を放置して、純也は悲しい表情をして言った。

「生まれてくるのが平和な時代だったら良かったのにね……」

近江は一瞬、その言葉に同意しかけたが、あることに気がついて、同意しなかった。

「いや、この時代でいいぜ」

「……え?」

「この時代じゃなかったら、姉貴達や神楽達、第二独立機動艦隊の艦魂達に出会えなかったし、少尉にも出会えなかった。だから、この時代でいい。な?」

近江は、純也がこれまでに見たことがないような魅力的な笑顔を見せた。純也はニヤリと笑って言った。

「やっぱり、笑顔が素敵じゃないか、近江」

「う、うるせえ!!」

近江の顔が爆発するように真っ赤になったが、心なしか近江の表情は幸せそうだった。

「ほ、ほら!! 時間ねぇぞ!! さっさと大和に乗れ!!」

「え~……まだ少し時間あるだろ?」

「いいから、行けぇ!!」

「はいはい……」

近江は照れているのを隠すため、純也を大和に向かわせた。後で少し後悔したが、彼に照れていることがばれるよりかはマシだという意見に達した近江だった……。







純也が大和に戻ると、その艦魂の方がご立腹だった。

「純也さん! 遅いです! 何やってたんですか!?」

「えっと……まぁ、いろいろ」

純也はてきとうに答えた。その態度に大和は激怒。

「なんなんですか、一体!? せっかく心配してあげてたのに!!」

「ならその心配を妹にも向けるべきだな」

いきなり真面目な口調に変わった純也を見て、大和は驚いた。

「妹たちに何かあったんですか……?」

「ああ……。俺が相談相手になったから大丈夫だ。少し手荒にいかせてもらったけど」

「もしかして……暴力ですか!?」

大和は怒りを露わにして純也に詰め寄る。だが、純也は表情一つ変えずに言葉をかえした。

「振るったのはあっちだ。でも、大丈夫だ。あっちはあっちで心の整理がついただろうし」

「そ、そうですか……。暴力ってことは近江ですね?」

「さすが姉。妹のことはお見通しか?」

「当たり前です!」

大和は殆どない胸を張った。

「てか、部屋に戻ろうよ……」

「あ、そうですね」

大和は航海中は純也を独占できるため、とてもニコニコと笑顔だった。










北京


北京に潜入したコマンド部隊には複数の任務がある。任務内容は以下の通りだ。



燃料貯蔵基地を破壊


軍港にある建造中の潜水艦3隻を撃沈(これは、コマンド部隊の母艦である潜水艦が行う)


軍事工場の破壊


空軍基地の破壊


発電所施設の破壊




である。かなり多い。これを8小隊の計40人が行う。

武装については、北京郊外の倉庫を偽企業を通じて購入し、そこに大量に運搬している。アタッシュケースに入れていたのは、いざという時の護身用だった。

倉庫は隠れ家としても使用されている。

武器はプラズマ弾頭ロケットランチャーや、レールガン系の武器、ミサイルランチャーなどなど、重装備だ。



そして、彼らα部隊の任務は、燃料貯蔵基地と空軍基地の破壊だった。

別動隊であるβ部隊は軍事工場と発電所の破壊だ。

α部隊の第1小隊に所属する‘彼’は、隠れ家である倉庫の中で、手に持った写真を見つめていた。

「……恨むな、晴香……」

七瀬竜也大尉は独り言をポツリと呟いた。

彼が所属するこの特殊コマンド部隊は通称‘デッドフォース’と呼ばれていた。その名は有名で、由来は敵に迅速なる‘死’を与える部隊であるからと言われてきた。実際、暗殺任務は数え切れないほどこなしている部隊だ。第三次世界大戦後に発足し、各国の危険分子を次々と暗殺してきたのだ。

だが、‘デッドフォース’の由来は別にある。それは、全員が死んだはずの兵士で構成されることだった。‘デッドフォース’に配属されると、事故や特務で死亡したという扱いを受ける。家族や友人にも、だ。何故そんなことをするのか。

それは、デッドフォース隊員に対する配慮である。これだけでは何が配慮だ?、と思うが、彼らが恨みをかう部隊であることを理解してほしい。暗殺任務を行うが、逆に暗殺されてしまうこともあるのだ。だから、戸籍上存在しない人間だけで編成する。それがデッドフォースたる名の由来だ。



「作戦実行は明日だ。装備をチェックしておけ」

そう言うのはα部隊隊長の滝田たきだ 祐一ゆういち大尉だ。マッスルな体格で、正直見ているだけで暑苦しい。

「了解」

「わかりました」

「仰せのままに」

各員がそれぞれの言い方で返答した。


もうすぐ実戦だ。何度経験しても、戦闘前は緊張する。竜也は装備を確認しながら妹を想った。

彼は妹が軍に入ったことを知らなかった。もちろん、自分を追って軍に入ったことも……







近江

「なんか俺、少尉に迷惑かけてばっかだ……」


作者

「う~ん……。でもそれは近江が優しいからで……」


近江

「黙れぇぇぇぇっ!!」


作者

「ぐはぁぁぁぁっ!!」


近江

「俺は優しくなんかない!!」


作者

「ホント……優しくなかったら死んでたよ。いきなりバックドロップって……」


近江

「俺は優しくないって言ってんだろがぁぁぁぁっ!!」


バックドロップ再び


作者

「ぐあっ!!」



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