月
玲と別れてから、碧はテレビを見るのをやめた。きらきらと輝く芸能人たちを見ると、玲のことを思い出してしまいそうで、怖かった。
碧にとって、いつも輝いているように見えた玲。その玲が、今どこでどんな風に生きているのか、分からないのが怖かった。輝いていない玲を見たくなかった。
玲と別れてから、碧は玲のことをきれいさっぱり忘れると決めていた。きっともう会うことはないだろうし、何より玲のことを考えるだけで碧はつらくなった。
けれど、玲の存在は、碧が思っている以上に大きかった。どれだけ忘れようと思っても、玲のことは忘れられなかった。
時が経つにつれて、その思いはどんどん大きくなった。
「なんでもっとちゃんと、玲と話さなかったんだろう」
後悔だけが強く残っている。
***
仕事帰り、碧はふと足を止めた。頭上には煌々と輝く満月があった。碧は、思わず玲のことを思い出してしまった。
いつも輝いて見えた玲。満月と玲が重なって、碧は思わず手で顔を覆った。玲の笑顔や、碧に別れを告げたときの寂しそうな表情がフラッシュバックした。
きっと、上京してもうまくいくことばかりじゃない。ずっと玲のことを見てきた碧には、そのことが分かっていた。突然、玲のことが心配でたまらくなった。
「ごめん、玲……」
思わず口から漏れたのはそんな言葉だった。
なぜそんなことを言ってしまったのか、碧自身にも分からなかった。




