受付窓口23
俺は
皇帝姫 vs ドS級美人試験官
――受付史上最悪の喧嘩
「……あなた」
低い声だった。
背筋が凍る種類の。
振り返るまでもない。
俺の妻――皇帝姫。
完全に怒っている。
「今の、何かしら?」
視線の先。
ドS級試験官エリゼが、愉快そうに笑っていた。
「何、とは?」
「受験者に対する態度よ」
「適正評価ですが?」
空気が割れた。
窓口周辺の職員たちが無言で後退する。
俺は理解した。
災害が発生した。
「適正?」
姫の笑顔が怖い。
「人格破壊面接の間違いではなくて?」
「受付マスターランク試験ですので」
エリゼは一歩も引かない。
というか楽しんでいる。
「ぬるい配慮など不要かと」
「……言ってくれるじゃない」
「事実です」
バチッ、と火花が散った気がした。
物理ではなく精神的な意味で。
「彼は私の伴侶よ?」
「試験対象です」
「夫よ?」
「受験者です」
「未来の国家運営級人材よ?」
「未評価です」
やめてくれ。
胃が死ぬ。
「あなたねぇ……」
姫の声が一段低くなる。
完全に戦闘態勢だ。
「少しは敬意という概念を――」
「敬意?」
エリゼが被せた。
笑顔のまま。
「試験に私情を持ち込むのですか?」
凍結。
職員全員が息を止めた。
言ってはいけない地雷を
躊躇なく踏み抜いたぞこの試験官。
「……へえ」
姫の目から温度が消えた。
「言うのね」
「当然です」
「私は皇族よ?」
「ここでは無関係です」
「私を誰だと思って――」
「受験者の同伴者ですね」
終わった。
本当に終わった。
「表へ出なさい」
姫が真顔で言った。
「望むところです」
即答。
なぜだ。
なぜ乗る。
「待て待て待て待て」
俺は慌てて割って入る。
「何を始める気だ二人とも」
「決闘よ」
「思想矯正です」
「言ってることが物騒すぎる」
両側から視線。
逃げ場ゼロ。
「あなたは黙っていて」
「受験者は介入しないでください」
「理不尽すぎるだろ」
だがその瞬間。
エリゼがふっと笑った。
「……まあ、合格点ね」
「は?」
「挑発耐性、周辺圧力耐性、関係者衝突耐性」
指を折る。
「すべて評価対象よ」
「……今の全部」
「試験です」
姫が固まる。
俺も固まる。
「もちろん」
ドS級美人試験官は楽しそうに言った。
「あなたの妻の反応も含めて。」
「……性格最悪ね、あなた」
「褒め言葉です」
受付窓口23。
受付試験において最も危険なのは、
クレーマーでも魔物でもない。
試験官である。
やめてくれ




