受付窓口22
試験とは、能力を測るものではない。
限界を暴くものだ。
取り繕った言葉も、
積み上げた実績も、
本当に壊れる瞬間にしか、価値はない。
ドS級・美人試験官
――最悪の面接
試験当日。
窓口の空気は、異様だった。
客の姿はない。
職員もいない。
いるのは俺と――
「遅いわね」
女が一人。
窓口前の椅子に座り、脚を組んでいる。
黒髪。
整いすぎた顔立ち。
無駄のない立ち姿。
そして何より。
圧が異常だった。
「受付マスターランク進級試験官」
女は名乗る。
「エリゼ・フォン・アルヴァレス」
嫌な予感しかしない名前。
「……受験者だ」
「知っているわ」
視線が刺さる。
笑っている。
だが目が笑っていない。
「では始めましょうか」
「何をだ」
「面接よ」
「は?」
「受付の昇格試験でしょ?」
「ええ」
「当然、面接くらいあるわ」
聞いてない。
資料には一言も書いてなかった。
「まず確認」
エリゼは頬杖をついた。
「あなた、自分を有能だと思っている?」
いきなり地雷質問だった。
「……職務は全うしている」
「質問に答えていないわね」
「評価は他者が決めるものだ」
「逃げた」
即断。
即切り捨て。
即イラつく。
「では次」
「あなたの判断で何人救った?」
「数えていない」
「無責任ね」
「数える類の仕事じゃない」
「言い訳に聞こえるわ」
何なんだこの試験官。
だが本当に地獄なのはここからだった。
「受付とは何?」
「秩序の維持」
「浅い」
「……情報の管理」
「凡庸」
「……死線の調整」
そこで初めて。
試験官の目が変わった。
「続けなさい」
「未来の分岐制御」
沈黙。
ほんのわずか。
空気が凍った。
「……面白い答えね」
「事実だ」
「増長ではなく?」
「現実だ」
エリゼがゆっくり立ち上がる。
距離を詰める。
近い。
やたら近い。
「嫌いじゃないわ、その顔」
「何の話だ」
「でもね」
耳元で囁いた。
「受付マスターランクを舐めないことね」
ゾッとする声だった。
「これからあなたの窓口を」
妖艶に微笑む。
「徹底的に破壊するから。」
直後。
鐘が鳴った。
扉が開いた。
怒号が響いた。
「受付ぃぃぃぃ!!」
雪崩れ込む冒険者。
血まみれ。
怒り狂い。
錯乱状態。
そしてエリゼは、涼しい顔で言う。
「さあ、面接の続きよ」
「……は?」
「口ではなく」
残酷に笑う。
「実務で証明しなさい。」
受付窓口22。
史上最悪の試験が、始まった。
面接は終わっていない。
むしろ、ここからが本番だ。
受付に求められる資質は、知識でも経験でもない。
崩壊の中で、機能を維持する力。
理不尽。
怒号。
混乱。
それらすべてが、試験項目となる。
ドS級試験官。
彼女は敵ではない。
受付という職業の、
最も正確な代弁者だ。
受付窓口22。
窓口は破壊される。
それでも――
受付は、止まらない。




