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有給休暇

休みは取るべき?

受付窓口19


有給休暇

――夫婦初の温泉


 受付に有給休暇は存在する。


 理論上は。


「……本当に取れるんですね」


 申請書を三度見した新人職員が震えていた。


「制度としてはな」


「前例が無いんですが」


「俺も初めて使う」


 窓口の空気がざわつく。


 マスター受付が休む。

 それはこの街にとって、

 災害に近い扱いらしい。


「護衛はどうされますか?」


 その一言で、問題が顔を出した。


 俺の妻は――ウサ耳姫。


 国家級重要人物。


「不要だ」


「却下です」


 即答だった。


 声の主は、王国直属護衛騎士。


「姫殿下の安全確保は最優先事項」


「温泉旅行だぞ?」


「なおさらです」


 姫本人が口を挟む。


「ねえ、そんな大人数で来られたら

 休暇にならないのだけれど」


「任務ですので」


「私は“夫婦旅行”と言ったはずよ?」


「任務ですので」


 ――話が通じない。


 だがそこで、俺の加護が働いた。


 〈受付男子〉。


 護衛騎士の表情を読む。


 職務上の硬さではない。


 純粋な心配だ。


「……最小人数でいい」


「しかし」


「俺がいる」


 一瞬の沈黙。


「戦闘力の話ではありません」


「違う」


 俺は淡々と言った。


「ダンジョン都市で

 最も安全な存在は誰だと思う?」


 騎士が黙る。


「冒険者でも騎士でもない」


「受付だ」


「――?」


「危険を未然に潰せる職業は

 この世界に一つしかない」


 姫が小さく笑う。


「つまり、最強の護衛を連れて行くってこと?」


「そういうことだ」


 結局。


 同行は一名。


 監視兼連絡役。


 温泉地に向かう馬車の中で、

 姫は妙に上機嫌だった。


「楽しみね、温泉」


「護衛よりそっちか」


「当たり前でしょう」


 少しだけ間を置いて、


「やっと“普通の夫婦”になれるのだから」


 受付窓口19。


 世界で最も不釣り合いな休暇が、

 静かに始まった。

取らないべき?

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