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受付窓口18

受付は、安全地帯にいる。


 そう思われている。


 剣も振るわず、

 血も浴びず、

 ただ座っているだけの職業。


 だが――


 最前線とは、

 必ずしも戦場にあるとは限らない。

忙しい業務シークレット


 受付が暇だと思っている者は多い。


 座って、笑って、紙を受け取るだけ。


 ――そんなわけがない。


「次の方どうぞー!」


 表向きの声とは裏腹に、

 俺の視界では情報が洪水のように流れていた。


 〈受付男子〉の加護。

 来訪者の装備、疲労、焦燥、虚勢。


 〈ダンジョンガイド〉の加護。

 探索ルート、帰還率、危険偏差、魔力変動。


 窓口の前には列。

 後ろでは職員が走り、

 横では回復班が担架を運ぶ。


 だが本当に忙しいのは、

 目に見えない部分だ。


「三層帰還組、重傷二名。

 回復室優先」


「西ルート、魔物密度増加。

 新人パーティー止めろ」


「待て」


 俺は即座に修正する。


「止めるな。

 構成を見る限り、対応可能だ」


「え?」


「ただし――」


 受付板に追記。


「補助魔法持ちを臨時同行させろ。

 成功率が跳ね上がる」


 誰も気づかない。


 この窓口で毎秒、

 数十の判断が行われていることに。


 紙を受け取っているだけじゃない。


 笑っているだけでもない。


 受付とは、


 情報を裁き、

 死線を調整し、

 未来を分岐させる仕事だ。


「相変わらず異常ね、あなた」


 隣で呆れた声。


 ウサ耳姫――いや、俺の婚約者。


「今さらだろ」


「普通の人間は、

 そんな速度で状況を処理できないわ」


「普通の受付でもないしな」


 忙しい業務の秘密。


 それは、


 受付が戦場の外にあるだけで、

 やっていることは戦闘と同じという事実。


 そして誰も知らない。


 このダンジョン都市が安定している理由の

 半分以上が、窓口にあることを。


 今日もまた、

 列は途切れず、

 悲鳴と笑顔が交差する。


 受付窓口18。


 世界で最も静かな最前線。

忙しさとは、量ではない。


 判断の密度だ。


 一つ間違えれば誰かが死に、

 一つ遅れれば街が傾く。


 受付の仕事は目立たない。


 だが、軽くもない。


 英雄は称賛される。


 受付は記録される。


 それだけの違いだ。


 受付窓口18。


 静かな窓口の奥では、

 今日も無数の未来が仕分けされている。


 誰にも知られず、

 誰にも気づかれず。


 それでも世界は、

 確かに支えられている。


 窓口は、止まらない。

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