受付窓口16
支援とは、
助けの顔をした介入だ。
力を貸す代わりに、
判断に近づこうとする。
受付が試されるのは、
誰かが「守ってあげよう」と言ったときだ。
国と受付支援を受ける
――姫と婚約したからだ
支援の話は、書面から始まった。
王都印。
正式文書。
やけに丁寧な言葉遣い。
――受付業務に対する、国家支援の提案。
読み終えた瞬間、
俺は一つだけ理解した。
これは、善意じゃない。
政治判断だ。
「やっぱり、来ましたね」
隣で、彼女――婚約者が苦笑する。
ウサ耳は隠しているが、
立ち居振る舞いは、もう隠せない。
「姫と婚約した受付が、
野放しのままなわけがないか」
王都は、
“世界を判断する男”を把握している。
〈受付男子〉
〈ダンジョンガイド〉
そして――
マスター受付候補。
危険すぎる。
だから、
囲いに来た。
会談は、ギルドではなく、
中立を装った会議棟で行われた。
「国家としては、
あなたの判断を支援したい」
宰相代理が、そう言った。
「人的補助、
情報網、
安全確保」
俺は、即答しない。
受付は、
“支援”で狂う。
「条件を聞きます」
「もちろん」
彼は、紙を差し出す。
要約すると、こうだ。
――受付判断への直接介入はしない
――ただし、国益に関わる案件は事前共有
――姫の安全は最優先
最後の一行で、
彼女が、わずかに眉を動かした。
「私は、
冒険者として登録しています」
静かな声。
「特別扱いは、
しないでください」
場が、一瞬凍る。
俺は、助け舟を出さない。
これは――
彼女自身の判断だ。
宰相代理は、深く息を吐いた。
「……理解しました」
紙を修正する。
――姫個人への特別介入は行わない
――ただし、受付判断は尊重する
そこで、
俺は口を開いた。
「一つ、追加条件があります」
「何でしょう」
「支援は、
受付という機能に対して行ってください」
彼は、首をかしげる。
「個人ではなく?」
「はい」
俺は、はっきり言う。
「俺がいなくなっても、
続く形で」
沈黙。
それが、
マスター受付の発想だった。
「……それは、
国にとっても都合がいい」
宰相代理は、ようやく本音を見せた。
「ええ」
「受付は、
誰かの所有物じゃありません」
婚約者が、
小さくうなずく。
「判断の支援は受ける」
俺は、締めくくる。
「でも、
判断そのものは、
誰にも渡さない」
会談は、成立した。
ギルドに戻る途中、
彼女が言う。
「大丈夫でした?」
「ええ」
「国を敵に回したり、
しませんでした?」
「半分は」
そう言うと、
彼女は笑った。
「それ、
受付さんらしいですね」
「……今は?」
「婚約者さん」
その呼び方に、
少しだけ照れる。
国の支援が入る。
それは、
力が増すということじゃない。
責任が増えるということだ。
だが、
もう一人じゃない。
受付窓口16。
ここから先、
受付は個人じゃない。
国と、世界と、
そして――
隣に立つ彼女と共に、
判断を続けていく。
まだまだ、
続く。
婚約は、
恋の話では終わらない。
それは、
立場を生み、
責任を増やす。
国が動いたのは、
彼女のためじゃない。
受付が、
世界に影響を与える存在だと
認識されたからだ。
だからこそ、
支援は受ける。
だが、
判断は渡さない。
それが、
マスター受付への道だ。
彼女は、
隣に立つ。
守られる存在としてではなく、
選択を共有する存在として。
受付窓口16。
ここで広がったのは、
舞台だ。
物語は、
まだまだ続く。
窓口は、
閉じない。




