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受付窓口13

師の一言


――受付、マスターランクへ


 師は、相変わらずそこにいた。


 ギルドの奥。

 表には出ない資料室の片隅。

 誰も座らない古い机。


 俺が受付に戻されたことを、

 師はもう知っていた。


「顔が、変わったな」


 それが、最初の一言だった。


 慰めでも、同情でもない。

 事実確認。


「彼女は、もういない」


 俺は言った。

 受付として、正確に。


 師は、うなずいた。


「そうか」


 それだけ。


 怒りも、驚きもない。

 世界の一事象を受理しただけの反応。


 その態度に、

 胸の奥が少しだけ軽くなる。


「俺は……」


 言葉を探す。


「受付を、辞められなかった」


 師は、ゆっくりと茶を置いた。


「違う」


 短い否定。


「お前は、

 受付を選び直した」


 俺は、顔を上げた。


「強制的に戻されたんだ」


「最初はな」


 師は、視線をこちらに向ける。


「だが今は違う」


 古い水晶板を、師は机に置いた。


受付ランク

一般 → 上級 → 特級 → マスター


到達条件:

・世界干渉判断の実績

・ダンジョンとの完全同調

・英雄・災厄の両方を拒否した記録


 俺の喉が鳴る。


「……最後の条件」


「お前は、もう満たしている」


 師は、淡々と言った。


「英雄を拒み、

 災厄を裁かず、

 ただ“止めた”」


 影武者の彼女。

 泣き叫ぶS級。

 目を覚まさせた、あの瞬間。


 全部が、

 受付の判断だった。


「マスターランクってのは」


 師は、静かに続ける。


「最強の受付じゃない」


 拳を握る。


「世界にとって、

 一番邪魔な受付だ」


 心臓が、強く打った。


「通したくないものを、

 通さない」


「拒否された世界が、

 どうなろうと――」


 師の目が、細くなる。


「責任を、引き受ける」


 俺は、分かってしまった。


 彼女が、

 なぜ俺を“英雄”にしなかったのか。


 なぜ、

 受付のままでいさせたのか。


「……俺は」


 深く息を吸う。


「もう、誰の代わりにもならない」


 師は、初めて笑った。


「それでいい」


 机の引き出しから、

 小さなプレートを取り出す。


 銀でも金でもない。

 ただ、無色透明。


「マスター受付の証だ」


「まだ、仮登録だがな」


 それを、俺に差し出す。


「目指せ」


 師は言った。


「受付の頂点を」


 俺は、受け取った。


 軽い。

 驚くほど。


 だが、

 その重さを知っている。


 受付は、

 剣を振らない。


 魔法も撃たない。


 それでも――

 世界の進行を、止められる。


 彼女が残した選択を、

 無駄にしないために。


 俺は、

 受付窓口に立つ。


 もう、戻されたからじゃない。


 目指すと決めたからだ。


 受付窓口13。


 ここから先は、

 “受付という職業”の物語じゃない。


 受付という存在の物語になる。

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