怪談!?
「週末は面会日ということで、ヒューの駐在しているルシエンに行ってきたんだ」
はいこれお土産、とリディア様はカバンから取り出した小さな包みをマリナ様とわたくしにくださいます。
「ヒューバート様って、今月から南方警備でしたっけ?」
「ああ、中央南部。2週間前までは王都にいたんだけどな」
近衛師団は基本王都と王族の警護が任務ですが、部隊の一部が持ち回りで王都周辺の何か所かの拠点を巡回しています。なるほど、ヒューバート様の隊は今南方のルシエンに駐在しているのですね。リディア様がこの週末我が家にいらっしゃらなかったのはそのためでしたか。
「ヒューバート様、お元気でした?」
長くなると見たのか、お茶を淹れてくださったマリナ様からカップを受け取りつつ、リディア様は物憂げに頷きます。
「元気は……元気だった。相変わらずクッソ強くて、手合わせ5本のうち1本も取れなかったし、速駆けも勝てなかったし……」
……えーと……逢瀬ではありませんでしたの?あなたがた!?
あんまりな内容にがっくり脱力しそうになりながらも、まあリディア様らしいかと気を取り直し、わたくしも居住まいを正しました。
「それで、ルシエンでの話とか、学園の話とか……まあ、ヒューの職務にはあんまり外へ漏らせないものもあるから、もっぱら私の話が中心になったんだけど……」
ため息をついて、リディア様はお茶を一口飲みました。
「じつは、巫女様御一行が東のローシェンから王都に上がる時、護衛に就いたのがヒューの隊だったらしいんだ」
「あら!」
「そうなんですか!?」
確か、巫女様とドロレス様はラファティ領から一旦ローシェンの大聖堂に移り、そこで選別を受けられたのち王都へと上がったはず。その護衛をヒューバート様の隊が務められたなんて……奇遇ですわね!
「だから、ヒューの奴、巫女様やあの従者とも面識があるみたいでさ……。特に、あの従者!万事控え目な巫女様と違って、馴れ馴れしいというか……グイグイ来るだろ?その、とりわけ男前には!」
「「………」」
思わず、マリナ様とわたくしは顔を見合わせてしまいました。
ぽん、と頭の中にヒューバート様のお姿が浮かびます。
背の高いリディア様よりも、なお頭ひとつ飛び抜けた長身、がっしりした体つき。
豊かな栗色の髪と穏やかな深緑の瞳。
そうそう何度もお会いしたわけではありませんが、いつもリディア様を優しく見守っている印象がございます。額に大きな刀傷があり……正直に申し上げて、ドロレス様の好みからはちょっと外れているような気が……いえ!決して地味だと言ってるのでも、容姿が良くないと言っているわけではありませんのよ!?ただ、判りやすい煌びやかな美形ではないというだけで……ええ、お人となりも含め、確かに男前でいらっしゃいますとも!それに、リディア様が好ましく思われているのなら、それが一番ですわ!!
「……ドロレス様が……その、あー……付きまとったと?」
言葉を選ぶマリナ様。リディア様はむっつりした顔で茶菓子のクッキーを口に放り込みました。
「護送中はそうでもなかったって言ってた。だが、王都に帰ってからも、何度か警護で顔を合わせることがあったらしいんだ。そのうち、ヒューが私の婚約者だということを知って……そうしたら……」
「まさか、リディア様の婚約者だって判った途端に!?」
「いや、殿下やランス先輩にしたみたいに、ベタベタ触ったりはなかったらしい。ただ……アリア嬢や私のことで、あることないこと吹き込んだみたいで」
『リディ、あの子の味方になってやってくれないかい?』
『は?』
呆気にとられるリディアに、ヒューバートはそう言ったという。
『ドロレス嬢に聞いたよ。ランバウム嬢があの子につらく当たっているそうじゃないか。あの子は巫女様を護ろうと必死なんだ。きみまでランバウム嬢に肩入れするんじゃなく、公平に見てやってくれないかい?あの子はきみに憧れてて、もっとお近づきになりたいそうだ。だったら、あの子を護って、可愛がってあげるべきだ。判るだろう?私の可愛い小鹿ちゃん』
「「小鹿ちゃん!?」」
「な!?おかしいだろう!!?」
驚愕のあまり上げた声が見事に揃ったわたくしたちに、リディア様はばん!とテーブルを叩きます。
「あの!ヒューが!!だぞ!?知り合って12年、ほんのちびっこの頃にだって私をそんなふうに呼んだことはただの一度だってない男が!!小鹿ちゃん!?気色悪くて全身鳥肌立ったわ!」
ぜーはーと肩で息をして身震いするリディア様。確かにリディア様の守護精は鹿ですが……それにしたって……あの、武骨でどちらかと言えば寡黙なヒューバート様が……小鹿ちゃん!?
「小鹿ちゃん………あのヒューにそんな語彙があったとは……」
「………もはや、怪談ですよ、これ……」
窓際の執務机の傍では、会話を漏れ聞いていたらしいお兄様とオレイアス殿下が驚きのあまり取り落としてしまった書類や本を拾っていらっしゃいます。
「なあ!?おかしいよな!?」
盗み聞きを咎めるでもなく、肩越しにお兄様たちにそう言って、リディア様はカップのお茶を一息に飲み干しました。
「とにかく!私のヒューは絶対にそんなこと言う男じゃなかった!あれは絶対に変だった!!」
「そうですよね。ヒューバート様がそんな、リディア様が泣いて嫌がるようなこと言うはずないですよね」
その時のことを思い出したのか、涙目で訴えるリディア様をよしよしと宥めつつ、マリナ様は困ったようにわたくしたちを見ます。
「……それで、そのあとはどうだったんだ?リディア嬢。ヒューはそのあともそんな戯言を?」
オレイアス殿下の問いに、リディア様はしょんぼりと肩を落としてしまわれました。
「それが……一緒にお茶を飲んでたら突然そんな話をされて……あんまりにもヒューらしくなくて……気持ち悪いっていうより怖くなってしまって……そのまま逃げてきてしまったんです……」
「……まあ……」
「私は……騎士失格だ……敵前逃亡だなんて……」
「そんな!そんなことありませんわ!リディア様!」
「そうですよ!信頼してる人がいきなり豹変したんですもん!怖くなって当然ですよ!!」
なにゆえ敵前!?と思いはしたものの、涙ぐんでしまったリディア様をわたくしたちは一生懸命慰めようとしました。
「……いや。いいんだ。ありがとう、アリア嬢、マリナ嬢……こんな、みんなにまで迷惑をかけて……情けない……わたし……私、今後どんな顔してヒューに会えばいいんだろう……」
でもリディア様は頑なに首を振り、今にも泣き出してしまいそう。……中等部のころから親しくさせていただいておりますが、こんなリディア様を見るのは初めてで、わたくしは途方に暮れてしまいました。
「……今日はもう上がりにしようか。会長である殿下の裁決が必要な書類も多いし、アリアも本調子ではない。リディア嬢とてそんな調子では仕事が手につかないだろう?」
「……はい」
少し迷うそぶりを見せたものの、優しく気遣うようなお兄様の言葉にリディア様も頷いて、わたくしたちは普段よりもずいぶん早い時間に生徒会室を後にしたのです。
そうして、迎えの馬車に乗るべく校門へと向かったところ。
「……あら?」
ふと、校門のところで立ち話をするお姿に、わたくしは小さく声を上げました。
下校する生徒たちにちらちらと視線を送られながら、誰かとお話をしているらしき女生徒。お相手の姿は門柱で見えませんが……あれは巫女様ではないかしら?
「み……」
巫女様、とわたくしが声をかけようとするのと。
「アリアドネ様!」
こちらに気づいた巫女様が、ほっとしたような顔で声を上げたのと。
「は!?」
わたくしの隣を歩いていたマリナ様が驚いたような声を上げたのは、ほぼ同時でした。
「リディ!!」
そして、そのすべてをかき消すような大声。
その声に弾かれたように顔を上げたリディア様は、門柱の向こうから姿を現した男性を見て、悲鳴を上げました。
「ひいっ!?」
「リディ!すまなかった!!」
巫女様を押しのけ、ものすごい勢いで頭を下げたそのかたは、つい先ほどの怪談……いえ、話題の主、リディア様の婚約者・ヒューバート様だったのです!
「リディ!!すまない!本当に、すまなかった!!」
正門の真ん前で、ヒューバート様は人目も憚らずリディア様に頭を下げ続けます。
「本当に……詫びようがないのも判っている!だが……すまなかった!きみを泣かせてしまうなんて……」
「あっ……あの!ヒューバート様!?」
無粋なのは判っておりますが、わたくしはひっくり返ったような声でヒューバート様を遮りました。
だって、いきなりの出来事にみなさまは何事かと注目なさっていますし、その内容から『リディアお姉様を泣かせたですって!?』と一部の女生徒(1年生かしら)は親の仇を見るような目でヒューバート様を睨んでいますし、噂話が大好きな3年のお姉さま方は固唾を呑んでいらっしゃるし。
なにより、当のリディア様が完全に怯えきってわたくしの肩に顔を埋め、抱き着いて震えていらっしゃるんですもの!!
「今ここでこれ以上謝罪されるのは無理ですわ!それより……」
「なんと!謝罪すら許されないというのか……?」
何とか落ち着かせようとすれば、何を勘違いしたか、この世の終わりのような顔をなさる始末。
「いえ、そうではなくて、ですね?」
「ヒューバート」
その時、追いついてきたらしいオレイアス殿下が後ろから進み出ました。
「オ…オレイアス殿下……」
「少し落ち着きたまえ」
だいぶ動顛していたらしいヒューバート様も、さすがに王族を前にしたら少しは我を取り戻したようです。さっと騎士の礼をとるのに頷いて、オレイアス殿下はちらりとお兄様を見ました。
「こんな場所で騒ぎを起こしては、学園にも迷惑がかかろう。続きをしたいなら場所を移すべきだ。……どうだろう、場を貸してくれるかな?ジークハルト?」
「もちろんでございます」
当然、わたくしにも否やはございません。かくして、騒動は我が家に持ち越されることとなったのでございます。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
小半時後には、わたくしたちは無事我が家のサロンに場を移しておりました。
目の前のソファにはオレイアス殿下、ヒューバート様、お兄様。わたくしの隣にはまだ俯いて膝の上で固く両手を握り締めるリディア様。隣のソファにはマリナ様と、お気の毒にも巻き込まれた巫女様。そして。
「いや、俺関係ないだろ?なんでここにいるんだ?」
「まあまあ。万が一ヒューが乱心したら私たちだけじゃ心許ないだろう?」
オレイアス殿下の護衛のはずが無理矢理引っ張り込まれたランスロット様が複雑そうな顔で座っていらっしゃいます。
「……さ、リディア様?」
頑なに顔を上げないリディア様を促すと、彼女はおずおずと少しだけ顔を上げました。
「っ!!」
でも、斜め前に座るヒューバート様を認めると、またぱっと顔を逸らし俯いてしまいます。そしてそれを見てショックを受けるヒューバート様。ああ、埒が明きませんわ。
「……ヒューバート殿は、中央南部に駐留中と伺っていたが……」
ややあって、沈黙を破るようにお兄様が口を開きました。
「それがどうして王都に?しかも学園に押し掛けるなんて」
「それは……無理矢理休暇をもぎ取ったのです。南方司令に土下座して」
「土下座!?」
とんでもない所業に、思わず全員が息を飲みました。
「当然です。一歩間違えば私の生涯に関わる一大事。なりふりなどかまっていられましょうか」
「……っ……」
はっと顔を上げたリディア様は、その言葉に唇を噛み締めてまた俯いてしまいました。スカートを握り締める指が微かに震えていらっしゃいます。
ああ、リディア様。
帰りの馬車の中、リディア様はずっと涙を堪えていらっしゃいました。
『もう駄目だ……絶対、最後通告をしに来たんだ……ヒューは優しいから……潔いから……私がちゃんと理解できるように……直接……』
涙声で、そう呟いて。
生涯に関わる一大事。
そう聞いて、リディア様はいよいよ恐れていたことが現実になるのだと思ってしまったのでしょう。
ですが。
「リディ!」
思い詰めたような声でリディア様の名を呼び、だしぬけにヒューバート様は立ち上がりました。そのまま大股で隣のソファを回り込み、一番端に座っていた(いつでも逃げられるように、下座が良いと言ってリディア様が譲らなかったのです)リディア様の前に跪きます。
「………ヒュー……?」
「すまなかった。リディ。きみを泣かせるつもりも、傷つけるつもりもなかったんだ」
弱々しく呟くリディア様の手にそっと触れて。
「本当に悪かった。もうきみを悲しませるような真似はしないと誓おう。だからどうか、顔を見せてくれないか」
触れた手を大事に取って、真摯に真摯に訴えるヒューバート様。それはもう、まるで一幅の絵のよう。
「……怒って……ないのか……?」
「怒る?何をだ?きみは悪くないじゃないか」
「だって……だって……」
ぽろり、とリディア様の瞳から涙が零れます。
「わ……わたし……あんな……逃げ出したりして……そのうえ…わたしの…せい、で……ど……土下座……なん……て……」
「それだけ私が酷いことをしたということだろう?」
ぽろぽろと零れるリディア様の涙をそっと指で拭いながら、ヒューバート様は真顔で応えます。
「今最優先すべきは、きみへの謝罪だ。そのためなら、土下座くらい屁でもない!」
「ヒュー……!!」
くしゃりと顔を歪め、リディア様は初めてヒューバート様の顔をしっかりと見つめました。
「私は……敵前逃亡を図るような弱虫で……騎士失格で……それでも…まだ……見捨てないでくれる……のか?また手合わせや遠乗りしてくれるのか?」
「当り前だろう?第一、きみは弱虫なんかじゃない。いずれ、立派な騎士になれるだろう。いったい何故そんなことを?」
「だって……」
唇を噛み、ちょっと躊躇って、リディア様は意を決したように真剣な顔でヒューバート様の目を覗きこみます。
「だって……婚約破棄を伝えに来たんだろう?」
「「「婚約破棄ィ!?」」」
思わず、見守っていたわたくしたちの方が叫んでしまいました。
ああ!リディア様!あなたがあんなに怯えていた『最後通告』とは婚約破棄のことだったのですね!
どうして一足飛びにそんな結論に至ったかは判りませんが、そんなの、絶対にないと断言できますわ!!その証拠に、ヒューバート様は!
リディア様の爆弾発言に、ヒューバート様は完全に固まってしまわれました。目を見開き、かちんこちんに凍り付いておられます。
「……ヒュー……?」
「……リディ!!!」
全く動かないヒューバート様に、恐る恐るリディア様がかけた声がきっかけになったのでしょうか。
やにわにヒューバート様はがっしりとリディア様の手を握り締めました。
「ヒュー!?」
「なんだそれは!婚約破棄!?破棄したいのか!?きみは!」
「痛っ!ヒュー!痛い!!」
リディア様の悲鳴にはっと力を緩めるものの、掴みかからんばかりの勢いで訴えます。
「どうしてそんな!頼む!リディ!考え直してくれ!!」
「ちょっ……ヒュー!落ち着け!リディアが怯えてる!」
そのあまりの勢いに、ランスロット様が後ろからヒューバート様を羽交い絞めにしますが、ヒューバート様は止まりません。
「リディ!頼むから!婚約破棄なんて言わないでくれ!お願いだから!」
リディア様の膝に取り縋らんばかりに言い募ります。
「……では、ヒューには婚約破棄の意志はないんだね?」
「当り前でしょう!!」
のほほんと声をかけたオレイアス殿下に、ヒューバート様は食ってかかるように叫びました。
「初めて会ったときから!私は彼女ひと筋です!婚約破棄なんてとんでもない!!」
「では、生涯に関わる一大事というのは?」
「リディへの謝罪です!何をしでかしたかは判らないが、気丈な彼女を泣くほどに傷つけたんだ、何を置いても駆け付けるのは当然でしょう!!」
「……まあ……!!」
わたくし、ちょっと感動してしまいました!
なんという誠実さ、なんという愛情でしょう!武骨だと思い込んでてごめんなさい、ヒューバート様。あなたは下手なロマンス小説に出てくる殿方よりもずっとずっと格好良くて男前ですわ!!
「ヒュー……」
リディア様も、口許を押さえ、頬を染めて泣いていらっしゃいます。でもその涙は、きっと先ほどまでの者とは違うはず。
「……と、いうことだ。どうやらきみの不安は杞憂だったようだよ?リディア嬢」
ふう、と息をついてオレイアス殿下が肩を竦めました。
「諸君、我々は少し席を外そうじゃないか。どうやらこの二人には情報共有が必要のようだ」
「そうですね、では皆さま、隣の談話室へ」
ほっとしたように笑いながらお兄様も殿下に続き立ち上がります。それを皮切りに、わたくしたちも立ち上がり、ぞろぞろと扉へと向かいました。
「アリア嬢!」
「駄目ですわ、リディア様」
行かないで、と言わんばかりに袖に縋るリディア様の手を軽く叩いて、わたくしは囁きました。―――囁きというには少し大きく……耳をすませばヒューバート様にも聞こえるくらいの声で。
「……婚約破棄は嫌なのでしょう?だったらちゃんとお伝えしなくては。意思表示もせず諦めるなんて、淑女としてはありでもリディア様としては絶対になしですわよ」
「アリア嬢……」
はっと目を見開くリディア様とヒューバート様に目礼して、わたくしも扉を潜りました。
改めてリディア様の前に跪くヒューバート様を視界の隅にちらりと認めながら。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そうして、約15分後。
わたくしたちは改めてサロンに落ち着き直しました。
「オレイアス殿下、ジークハルト殿、ランバウム嬢……巫女様も他の方々も……大変ご迷惑をおかけしました」
すっかり落ち着きを取り戻したご様子のヒューバート様が、深々と頭を下げます。
「いやいや、無事収まるところに収まって何よりです」
「良かったですね、リディア様」
穏やかに微笑むお兄様と、笑顔を向けるマリナ様に、リディア様も照れたように微笑まれます。まだ目は赤いものの、先ほどまでの悲壮感は跡形もありません。本当に良かったと、わたくしも胸を撫で下ろしました。
確かに一時はどうなることかと思いましたが、これでお二人の絆もいっそう強まったのではないかしら。
「……それで……私はいったい何をしでかしたのでしょうか。お恥ずかしながら、私の何がこんなにリディを傷つけたのか、自分では見当もつかんのです」
「ええっ!」
「まあ!」
ぐいっとお茶を飲み、頭を掻くヒューバート様の言葉に、わたくしもマリナ様もびっくりして声を上げてしまいました。
「覚えてないのかい!?あの怪談を!?」
「怪談?」
オレイアス殿下も驚いてお茶を零しそうになっています。
そして、きょとんとするランスロット様と巫女様。そうですわね、お二人はあの時生徒会室にいらっしゃいませんでしたものね。
「………覚えてないのか?」
困ったような顔をしながら、リディア様がしぶしぶその時のことを説明します。……それを聞いたヒューバート様の顔といったら!!!
「小鹿ちゃん!?言ったのか!?私が!!?」
まさに『唖然』という顔で何度もリディア様に確認しています。……ランスロット様、お腹抱えて爆笑なさってますけど、笑い事じゃありませんのよ!?いえ、それよりも。
「覚えていないのですか?あんな……それこそ、生涯に関わるような重大発言を?」
お…お兄様……で、でも、ちょっと言い方はアレですが、お兄様のおっしゃる通りですわ!リディア様が裸足で逃げ出すほどの問題発言を覚えていないなんて!
「それが……あの時のことはよく思い出せないのです。なにやら靄がかかったように頭がぼんやりして……」
愕然とした表情で頭を抱えるヒューバート様に、わたくしたちは顔を見合わせてしまったのでした。
お読みいただきありがとうございます。
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