年賀状と郵便局の“意義“と今後について
◇「値上げ」を機に年賀状をやめる人が続出
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は年賀状と郵便局の意義と今後の在り方について考えていこうと思います。
質問者:
確かに、年賀状はまだ出しているものの、出す数が年々減っている感じはありますね。
筆者:
日本郵便によりますと、24年用の年賀はがきの発行枚数は14億4000万枚で、ピークだった04年用44億6000万枚の3分の1になりました。
25年用の発行枚数はさらに減ってピークの4分の1の10億7000万枚(当初発行枚数のために増える可能性はゼロではない)となっています。
郵便代が24年10月に値上がりをしてから初めての年賀状を出す機会となりますが、その影響で年賀状を減らす人が増えることが予測されていたためですね。
ちなみに、24年12月14、15日実施の毎日新聞の年賀状についての世論調査では、
「出していない」 41%
「もうやめたい」 26%
「枚数を減らしたい」 18%
「これまで通り出し続けたい」11%
と既に出していない方を含めずとも、顕著に減ることが見込まれています。
質問者:
値上がりもするようですし、メールやSNSで新年の挨拶を済ませようと言う方が増えるという事なんでしょうね……。
筆者:
サービス内容がそのままで値上げとなれば、検討し直すことは家計にとって非常に大事なことだと思います。
ただ、全く年賀状を出さなくしてしまうのはどうなのかな? というのが個人的な感覚としてあります。
◇上流層は平安時代、一般人も江戸時代からの歴史がある
質問者:
でも、筆者さんはよく「断捨離」ということをおっしゃるじゃないですか?
年賀状も完全に出すのをやめてしまって、考えないようにした方が良いのではありませんか?
筆者:
確かに「考えない」という事は最大の断捨離の一つであり、
「師走」と呼ばれる12月の大変な時期に「考えないことを増やす」ことは重要なことだと思います。
しかし、それを考慮しても僕は年賀状に存在意義があると思っています。
僕が「旧時代の人間」と言うのもあるのかもしれませんけどね(笑)。
それを前提としてお聞きいただければと思います。
そもそも「年賀状の歴史」と言うのは非常に長いのです。
平安時代の漢文学者藤原明衡著した、書簡の模範文例を集めた『明衡往来(雲州消息)』という中に新年の挨拶文があったようです。
新年になると、お世話になった方々や親族を訪ねて挨拶をする文化と言うのはあったようなのですが、
遠方の人々には直接会うことが難しいため、挨拶の言葉を書状にして送る習慣が生まれたようなのです。
※ちなみにこの藤原明衡と言う人は「奥州藤原氏」とは関係無いようです。
質問者:
新年の挨拶のお手紙と言うのはそんなところから始まったんですね。
筆者:
江戸時代になると、「寺子屋」によって識字率も上がり飛脚などの郵便制度も充実したことから庶民の間でも「年賀状」のような手紙のやり取りが一般的になりました。
そこから明治時代になって1871年に全国一律料金の郵便制度が確立されることになって現代の状況にかなり近づいてきています。
1950年から新年のお年玉くじの抽選会がスタートし、そこから一気に数が増え最盛期の2001年には44億枚になりました。
しかし、そこからインターネットやメールなどの「デジタル新年挨拶」が広がり減少していっているという形です。
◇年賀状のメリット
質問者:
確かに「事実上の年賀状」にそれだけの歴史があると言うのは驚きですね……。
でも、不必要なものであればいくら歴史があろうと無くした方が心が軽くなってし良いと思うんですよ。
筆者:
これから先は「年賀状を送る相手を厳選」する状況にはなると思います。
しかし、「減っている」という事は逆に存在意義が上がっていくと思うんですよ。
例えば、恋人から手編みのセーターを貰うのとユニクロのセーターを貰うのとではどっちが嬉しいか? となったら断然手編みのセーターですよね?
質問者:
なるほど……手間がかかっている分、年賀状には“気持ち“と言うのが籠っているということですか?
メールやSNSだと確かにそんなに印象には残りませんよね……。
筆者:
そういうことです。
メールだと無料で一斉送信とか造作も無く出来ますから郵送代の上昇と共に「年賀状の価値」と言うのは相対的に上がっていきます。
「それとなく関係を続けたい相手」に対しては非常に大事になります。例えば、僕の家族では年賀状のみの相手が「○○の事業始めました」と年賀状に書いたら顧客になったこともありました。
「独立自営」をしたい方であれば、人間関係のツールとして残しておくことも必要でしょう。
「見てもらえる確率が高い広告」と考えればかなり生産性が高いものと見ることも可能です。
質問者:
なるほど、人間関係を繋ぎ止めておくための「広告ツール」としては年賀状はそれなりの効果があるのかもしれませんね。
筆者:
ただ、流石に話すらもしたくない相手に対しては送る必要は無いと思いますからね(笑)。
送り続けている人との「格差」があることをバレない程度に上手い感じでフェードアウトした方が良いと思います(笑)。
毎年12月25日が確実に元日に届けるための期日ですから、
これまでの僕の意見に賛同していただける方は、それに向けて年賀状を出すことを検討していただければと思いますね。
突如として年賀状を送るということは中々無いと思うので地道に続けていくことが大事になると思いますからね。
◇郵便局の今後
質問者:
年賀状の意義については分かったのですが、
郵便局の事業の今後についてはどうなるのでしょうか?
筆者:
今回は郵便事業の業務改善、品質向上ではなく、郵便料の値上げに財政改善の活路を求めることになりました。
日本郵政は23年に民営化後に「郵便4事業」合わせて初の37億円の赤字となりました。
値上げによって25年度の収支を67億円の黒字に押し上げるという試算があるようです。
しかし、値上げをしても年賀状を「見限るペース」が上回れば結局のところ赤字になってしまいます。
26年度から郵便4事業合わせても赤字に再び転落するという試算もあるようですからね。
このように今後も「郵便料値上げ」と「国民の郵便離れ」というのが悪い連鎖として加速していくことが予想されます。
ただでさえ国民は今、エンゲル係数が上がって困窮化していますからね。
家計でカットできる費用はカットされてもおかしくは無いと思います。
※ただし、「郵便4事業」合わせて黒字になる程度で、郵便業務のみではずっと赤字でした。23年度は過去最悪の951億円の赤字でした。
質問者:
しかし、郵便局は郵便局株式会社法では「ユニバーサルサービス」として全国一律の料金、1日1回以上の回収を守らなくてはいけないんですよね……。
筆者:
国内郵便の量は2001年度に262億通だったのが23年度には136億通と、年賀状ほど減るペースは速くはないものの半分ほどになっています。
日本郵便によりますと23年6月時点で17万本のポストのうち4万3940本(25.1%)は1カ月当たりの投函量が30通以下、1日当たり1通も投函されないポストは、6793本(3.9%)に上るようです。
そうなると民営化しているために「赤字が問題だ」という話に必ずなってくると思うんです。
質問者:
現在どのような改革を行っているんですか?
筆者:
23年10月から日本郵便とヤマト運輸はメール便や小型・薄型荷物の領域で協業をスタートしましたが、協業の行方が見通せないことから関係が悪化しました。
ヤマト運輸側が2025年1月~26年3月の間の委託を中断したいと申し入れていることから同業他社と提携することは難しいようです。
配送量の少ない地方では低価格での農産物の配送なども行い始めているようですが、それだけでは抜本的な売り上げ減少には歯止めはかからないでしょう。
質問者:
そうなると、どうすればいいんでしょうか……。
筆者:
ここからは僕の経営コンサルタントとしての“荒療治”的なお話になりますが、
まずは地方の取扱数が少ない場所はコンビニなどに委託することです。
現状の「簡易郵便局」と呼ばれるものは郵便、貯金、為替、振替、保険の主業務を全てやらなくてはいけません。
貯金はATMに任せて郵便を委託、ポストを設置すれば負担も少ないでしょう。
為替や保険あたりは専門知識が必要な割には手紙より使う頻度が少ないでしょうしね……。
※ただし、離島などではコンビニすらない地域もありますからこの方法では解決できないこともあります。
質問者:
確かに、田舎だと広範な領域を巡りながらほとんど回収できないとか悲しすぎますよね……。その場の人が配送してくれればどんなに楽か分かりませんね。
筆者:
遠くが宛先の場合は指定された中継点まで運べばOKにすれば負担も少ないかなと思います。
これで長期契約の定額報酬を与えれば郵便局と郵便局員を両方削減することが可能だと思います。
同業他社に頼ることは「長年のライバル関係」を踏まえると厳しいと思いますので、
抜本的な費用削減方法を考える方が得策だと思います。
※現状簡易郵便局では毎月312,483円を「委託基本額」各局所の取扱規模に応じて1万円/月~20万円/月として支払っているようです。
質問者:
郵送料の問題についてはどうなんでしょうか?
筆者:
正直、これ以上値段を上げたら、さらに郵便を送る頻度が減ることが予想されるので、「ユニバーサルサービス」の運営としては成り立たなくなると思います。
そこで僕は「原則局留め郵便制度」を提案したいと思います。
現状の値段よりもむしろ値段を下げ、代わりに「局留め」を原則にします。
ただし、追加料金(今の値上げ額より合わせれば上回る)を支払う事でご自宅などに直接届けると言う「追加サービス」とするのです。
これで、配送料が減少するか追加料金で補うという事が可能になります。
質問者:
なるほど、配送頻度を下げるか追加料金を取るという事ですか……。
お金が無くて時間があるお年寄りの方は自分で取りに行けばいいですし……。
筆者:
そういう事です。
ただ、これに関する問題としては「○○からの郵便が局留めになっています」という通知がアプリなどで必要になりますし、
郵便局や保管場所で自動的に自分の郵便がピンポイントで出てくれるようなシステムが無ければコストがむしろ増えます。
「テクノロジーやツールの普及・充実」が絶対的な前提条件としてはあると思います。
ただ、デジタル化が進めば全く関係なくなる可能性もあるので、コストをかけてまで整備する必要性があるかは疑問です。
質問者:
ただ何かしら抜本的な改革をせずに値上げだけをしていたらジリ貧になるだけですよね……。
電子化やデジタル化の流れは進んでいくばかりですから……。
筆者:
ただ、太陽フレアの磁気嵐やEMP兵器が炸裂すれば、デジタルツールが全て壊滅する恐れもあります。
リスクを取るためにはあらゆることで少しでもいいので「アナログツール」を残していかなければ一瞬で何も出来なくなりますからね。
僕はアナログの郵便局やお手紙と言うのは、年賀状の意義の時にも触れましたが「気持ちを伝える」という意味での存在感は残り続けると思いますよ。
※EMP兵器とは、物理的な破壊を目的とせず電磁波の影響範囲内のすべての電子機器を無力化する兵器のこと。中国やロシアで開発されていると言われています。
質問者:
太陽の活動は2025年7月に活発になるそうですし、
中国やロシアは何をしてくるか分かりませんからね……。
筆者:
僕は人同士の殺し合いよりそういったことの方が「新しい戦争」として発生確率が高いのではないか? と密かに感じています。
デジタルは便利ですが、アナログも完全には棄ててはいけないと僕は思っていますね。
という事でここまでご覧いただきありがとうございました。
今回は、
・年賀状は上流階級では平安時代、一般市民には江戸時代から始まり、デジタルが発達した今も「気持を籠める」という意味やデジタルツールの壊滅リスク軽減のために必要であること。
・郵便局は値上げ以外の抜本的な改革が無ければ経営改善は不可能であること。
をお伝えしました。
今後もこのような社会的に起きていることについて個人的な解説をしていきますのでどうぞご覧ください。